EP59.剣義対助っ人
俺の立てた作戦の第一段階は成功し、俺と敵方の助っ人の一騎討ちによる決着を付けることが決まった。
そして一週間後、決戦の日が来た。
イストー王国とウェストー王国の国境に試合場が用意される。
そしてイストー王国側にはアズマさんとグンジさん、サボウさんを始めとしたイストー王国の人々。
ウェストー王国側にはそっちの王だというニシキさんを始めとしたウェストー王国の人々がそれぞれ見守っている。
「けっこー人来てるね、ツル」
「だな」
「…大丈夫なの?」
「ん、まあ何とかなるよ、多分」
「多分って…。ま、頑張ってよ!」
「おう、任せとけ。…そろそろだな」
「うん。行ったらー」
「ああ」
リンに見送られ、俺はフィールドに出る。すると、対戦相手も出て来る。
年の程は俺と同じくらいに見える。黒い髪を無造作に切った少年で、目付きはやたら鋭い。少年は、俺の姿を認めると、大きく声を上げる。
「俺は流シュウト!今日はテメーを倒すために来た」
「…俺は群星剣義。それと、倒されんのはお前な」
「言うじゃねーか。どれほどのもんか楽しみだぜ」
「そうかよ」
互いに短く会話を交わすと、俺と流は戦闘態勢に入る。
「では…始め!」
「武装!おらっ!」
そう言うなり、流は手で鉄砲の形を作ると、手がそのまま拳銃に変化し発砲される。俺は咄嗟に障壁を張って銃撃を防ぐと、何らかのエネルギーで出来ていたらしい弾丸は、そのまま消える。
「やるな…!なら、こっちも!爆炎魔撃砲!氷結魔撃砲!」
俺は右手と左手からそれぞれ火炎弾と冷気弾を放ち、同時に着弾させると、温度差で霧が発生する。
そしてその中に向かって俺は念動力で生成した空気弾を放つ。
少し経つと、盾を構えた流が無傷で立っていた。
「…やるじゃねーか。でも効いてねーぞ」
「お前、何でもありかよ」
「さあな。…おらっ!」
「激流舞突!」
流は盾から更に両腕を鉄砲に変えて放つが、俺は聖剣に水を纏わせて受け流していき、ある程度勢いが高まると、その場で突きを放つ。
そうすることでエネルギーの弾丸を含んだ水流がそのまま流に向かっていく。
「…あぶねっ。…へっ、簡単にはいかねーか」
流が咄嗟に横に転がって躱すと、そのまま水流は会場の壁に当たり、壁を砕く。
「…ここからの俺は、一味違うぞ?祝福の翼!」
「…飛んだ!?」
「お前に着いてこれるかな?」
俺は背中に翼を展開し、飛び上がる。
「…へっ、ならこっちも出し惜しみは無しだ!半身全武装!」
流がそう言うと、彼の上半身は次々と硬化していき、腕は一つの大きな大砲へ、肩や体からも何本かの砲身が出現し、一斉に砲撃を開始する。
「うわっ、何だあの殺意全開の姿」
剣義は高速で飛行し、障壁も活用していくことで何とか攻撃をやり過ごしながら反撃に転ずる機会を探る。
「なら・・・!吹雪氷聖斬!」
剣義は空中に障壁を展開して攻撃を防ぎつつ、冷気を纏わた聖剣を振るい、氷の礫を幾らか飛ばす。
「無駄だ!」
「うげっ!撃ち落としやがった…!」
「…仕方ねえ。これでどうだ!聖天銀河斬!」
「!!何!?」
剣義が魔力を込めた聖剣を空中で振るうと、魔力が斬撃の形のまま三つに分裂していき、流に襲い掛かる。
流はレーザービームを放って何とか軌道を変えるが、青い三つの斬撃は流の周囲に着弾し、土煙を立てる。
その様子を眺めながら、グンジは呟く。
「…互角か。流石にどちらも強いな。…ん?サボウさん、どこへ?」
「ちょっと、お手洗いに」
「はあ」
隣に座っていたサボウが何処かへ向かっていることに気付いたグンジが声を掛けると、サボウは短く答えて去っていく。
しかし、彼はトイレには向かう素振りを見せず、真っ直ぐに出口を目指し、会場を離れると、そしてそのまま国境沿いの近くの森へと足を踏み入れる。
「…いよいよ、時は来た」
「僕達の“女神”の降臨だな…」
サボウは森の中で男と合流すると、更に奥へと歩みを進め、姿を消す。
「はあ…くそっ、全然決着がつかねーな」
「…やるじゃねーか、お前」
その頃、剣義と流は一歩も譲らぬ攻防を演じてみせたものの、結局決着は未だに付いていなかった。
「…そろそろ終わらせてやるよ!」
「ふん、勝つのは俺だけどな!!」
「聖天星覇──」
「シューティング──」
剣義は聖剣に白い光を収束させて剣を構え、流は両腕を変質させた巨大砲にエネルギーを集め互いに全力の一撃を放とうとする。まさにその瞬間だった。
ドゴォォォン!!と轟音が鳴り響き、会場が大きく揺れる。
「「!?」」
「な、何事だ!?」
「えっ、ちょ、なに!?」
…これが、この世界での「本当のクエスト」の幕開けだとは、俺は今はまだ、つゆも知らなかった。




