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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第四章:決意の冬
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EP58.交渉と実力テスト


 俺達はグンジさんに案内してもらい、この国…イストー王国の国王の元まで案内してもらう。


 少し長い渡り廊下を歩くと、一際豪華な彫刻の入った扉の前に立つ。


「ここ?」


「ここだ。…失礼します、アズマ様。グンジです」


「グンジか。…その二人は?」


 グンジさんに尋ねるのは青い服に身を包んだ初老の男性、この人がこの国の王ってわけか。


「俺は群星剣義」


「アタシはリン・ファジー=プラネイト」


「この二人は異界よりやって来た救世主にござります」


「ほう」


 "異界"という単語を聞いた途端、アズマと呼ばれた王様は目を鋭く光らせる。


「君達がか。…よくやったぞグンジ、これでニシキの奴に一泡吹かせられる…!」


「そのことなんだが王様、一つ良いか?」


「なんだ?」


「戦っても良いけど条件がある。向こうの助っ人と俺がそれぞれ一騎討ちで戦い、勝敗を決める」


「何?」


「…つまり、戦争はもう止めろ、無駄だから。そういう意味だ」


「この私に指図するか?若造めが」


「でもあんたは俺の力が必要なはずだ。それ抜きにお隣…ウェストー王国の助っ人には勝てないと思うけどな」


「ぐ…それは…」


「貴様、口を慎め!」


 俺の指摘が図星だったのか、悔しそうにしながらも押し黙るアズマさん。そして俺を咎める側近のような眼鏡を掛けた男。

 しかし、俺はそれを契機と見て臆せずさらに畳み掛ける。


「ま、落ち着いて冷静に考えてくれよ。このままやたら強い助っ人にやられまくって被害を拡大させて戦争を長引かせて国民の不満を溜めさせるより、俺と助っ人の一対一で決着を付けるの、どっちが良い?」


「…まあ、お前の言うことも一理ある。しかし、お前の実力も分からずに頷く訳にもゆかぬよ」


「アズマ様…良いのですか?」


「良いのだよ、サボウ」


 眼鏡男…サボウとやらは不服のようだったが、アズマさんに諫められ、黙る。


「ま、それはそうだな。良いぜ、テストでも何でもしてくれちゃって」


「ふむ、良かろう。グンジ!聞いておったな!今からこやつの力を測る!お前が挑んで見せよ!」


「え、俺ですか!?」


「そうだ。お前はこの国トップクラスの実力者、力を測るのに申し分ない!」


「つー訳だからグンジさん。思い切りきてよ」


「…分かった。その思いに応えて、このグンジ、全力で挑ませてもらう!!」


 そう言うなりグンジさんは腰からレイピアを抜き、突きを放ってくるが、俺は念動力で障壁を張って防ぎ、聖剣を取り出す。


「突きが…空中で…?しかも剣を虚空から取り出したか…こんな術、見たことがないぞ!」


「そーだろうね。ボーッとしてて良いの?」


「くっ…!ならば!はあッ!!」


 俺の言葉にハッとしたグンジさんは素早く突きを放つが、俺はそれを聖剣で受け流し、魔力を少しだけ込めて振り下ろし、レイピアを根本から切り落とす。


「何!?」


「…ま、これなら十分だろ」


 レイピアを斬られたことで愕然とするグンジさんに、俺はすかさず聖剣の切っ先を突きつける。


「…そうだな。俺の負けだ。アズマ様、これで納得なされたでしょうか?」


「…うむ、この者の実力は流石だ。良いだろう、その提案、乗ろう!…が、ニシキの方が一対一の条件に乗らなければ実現不可だぞ?どうするつもりだ」


 アズマさんの言葉に、俺は口の端を吊り上げ、自分の考えていたプランを話す。


「そこでなんですが、アズマ様には悪いんですけど、相手の国の王様に対して下手に出てもらって良いですか?そうすることで再起をかけての一か八かの苦し紛れの策という感じを演出し、更にはあなたが下手に出ることで個人的な感情で戦っている向こう側の王様の気分を良くさせて判断力を低下させます。

そうすることで、自分達が圧倒的に優位に立っていると向こうに()()させられるかと」


「成る程…話を続けてくれ」


「はい。で、そういう風にすれば、相手からしても自分達の方が絶対的に有利である状況下で結局自分達の方が有利な勝負を出してくれば、乗っかるはずです」


「…流石に気付くのではないか?奴等もそこまで馬鹿じゃない」


「だからこそ、アズマ様の演技力が試されるんです。

それと、俺についての情報は極力流さない。流れたとしても俺の方を圧倒的に過小評価したものを流します。…リン」


「分かった!」


「…?彼女は何を?」


「差し当たり、グンジさんとアズマ様の二人を除くこの場にいる全員の俺の実力についての記憶を改竄しています。彼女は記憶操作術を使えるので」


「…そんなこともできるのか」


「ふ〜む、良いだろう。面白い!…だが、私にここまでさせるんだ。負けは許されんぞ」


「分かってますよ」


 俺は交渉を終え、一通りの記憶を操作し終えたリンと共にアズマさんが用意した宿泊用の部屋に向かう。

 そして俺の部屋にやって来ると、リンは口を開く。


「…そーいえばさ、あんな大口叩いて大丈夫なの?ツル」


「大口?」


「王様言ってたじゃん。負けは許されないって。それにツル、分かってるって返したでしょ?」


「あぁ、そうだな」


「勝てんの?」


「さあ?分からん」


「え。ちょっと、それは…大丈夫なの!?」


「んー、仮に俺より強いのなら、それはそれで別に良い。良い経験になりそうだ。俺の狙いは正直な所、俺自身が強くなることと、その異世界から来た助っ人の奴と話をしてみたいってだけ」


「は、はあ…?」


「…ま、どう転ぶかは後のお楽しみってことだ」


──その頃


「…まさか、異世界の助っ人がこっちにも現れるとは…。こうなったら計画を早める必要があるな。幸い、そこまで実力があるわけでもないようだし、丁度いい」


 男は暗い廊下の中、眼鏡を直すと、どこかへと歩き始める。


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