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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第四章:決意の冬
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EP54.空の王者


「うわあああっ!落ちる!!」


「群星君!!」


「ツル!?」


 グルーイが現れ、群星君はあっという間に空中都市から落とされてしまう。


 それを見た私は自分が今無敵の加護を発動できなくなっていることすら忘れて、群星君の元へ向かい、後を追って飛び降りる。


「どいて!……群星君!!」


「…!涼海!?馬鹿!!何でこっちに…お前だって飛べねーし、大体お前今無敵の加護使えねーだろ!」


「それは…そうだけど…!!それでも、群星君をほっとくわけにはいかない!!」


「!!」


 そう言って必死に俺の方へと手を伸ばす涼海。

 俺は、結衣乃も、涼海も、リンも、誰一人護れずに死ぬのか…?…まだだ、まだ何か策が……ダメだ。全然何も思い付かねえ!

 段々と迫ってくる地面に焦りを覚えながら、俺は思考を巡らせるが、この状況を打開できるような妙案は思い浮かばなかった。

 リンが現状唯一飛行手段を持ってるものの、奴等を振り切って救出に向かうのは難しいだろう。飛行戦は奴等の方が遥かに有利だ。


「…せめて、俺に翼でもあって飛べればな」


 小さく漏れ出た呟き。そうだ、俺が飛べさえできれば、どうにかなったかもしれない。……あの時も、そして今も…翼さえ、あれば…。

 俺が、そんな現実逃避みたいなことを、しかし切に、強く願うと、突如として左手に持っていた聖剣が輝き出す。


「え!?」


「な、何…これ…?」


────


「くっ!!…二人を助けに行きたいのに…!キャッ!」


「どうした?そんなもんかよ?」


「ふん、空で俺達に敵うと思うなよ」


「トトメだ!!」


「…!」


 鳥人達に追い詰められ、アタシは箒もろとも空中都市の路面に叩き付けられてしまう。

 そして鳥人の一人が振るう槍の穂先が眼前に迫る。

 …いつからだろう。アタシが痛みを、死を恐れるようになったのは。アタシは何度でも、生命力さえ残っていれば文字通り何度でも蘇れる。だから、命というものをそこまで重く見たことはなかった。


 けど、ツルや、ユイや、スズや、タカ、ハル姉、皆と出会って変わった。それは、もしかしたら弱くなったということなのかもしれない。…それでも、アタシはこの変化を嬉しくさえ思う。だってそれは、アタシが皆と過ごした証だから。

 …だからこそ、覚悟を決める。私の一度分の生命力を犠牲にし、隙を突いてなんとか二人を助けに行こう、と。アタシは目を瞑る。


 だけど、アタシの元には衝撃も、痛みも来ず、代わりにすぐ近くから「ガキン」という金属と金属がぶつかり合ったような音が鳴る。

 恐る恐る目を開くと、そこには──純白の翼を背中に生やしたツルが、聖剣で槍を受け止めていた。

 ツルは振り返ると、翼は白い羽毛へと変わり、宙に溶けていく。


「…前に言ったろ。命は大事にしろって」


「ツ、ツル〜!!それにスズも!!」


「悪いな、心配かけちまってよ」


「それは良いから私を降ろしてよ、群星君」


「え?あぁ、悪い」


 俺は、どうやら土壇場で聖剣の進化能力を発動させ、その結果強く望んでいた翼を得たらしい。

 そしてその力で飛翔し涼海を助け出して、空中都市まで戻って来たのだ。…が、その際に涼海をお姫様抱っこしてたため、涼海は顔を真っ赤にしながら降りる。


「…よし、後は俺に任せとけ」


「え、でも…」


「二人には心配かけちまったし、頑張らせちまったからな。無理すんな。

大丈夫だ。俺は……負けない」


「なら、頼んだよ、群星君」


「任せた!ツル!」


「おう!…さーて、こっから第二ラウンドといこうぜ?祝福(ウイング・ザ)の翼(・ブレッシング)!」


 俺がそう唱えると、聖剣が輝き、俺の背中には純白の翼が出現する。

 …そう、これは祝福だ。空に届かなかった無力な俺が、空に手を届かせる、その第一歩を踏み出したことへの。

 俺は大きく羽撃くと、強く他を蹴って空へ舞う。


「いくぞ!」


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