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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第四章:決意の冬
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EP52.日常の再スタート


 結衣乃が居なくなって一週間が経った。季節はどんどん冬へと向かっていき、冷え込みが強くなっていく。


 結衣乃の突然な休学に学校の皆も驚いていたものの、少しずつ慣れ始めていた。それが俺には、無性に苛立たしかった。そうすることしかできなかった自分に対してか、結衣乃が居なくても特に変わらずに生活できるような、この世界へのある種の無情さに対してか、はたまたその両方なのか。それはもう俺自身にも分からなかった。

 あの後、俺達は速野にも事情を説明していた。


「…しっかし、朝日さんが無限回廊の中か。今でも信じられねえな」


「俺だって、まだ完全に受け入れられた訳じゃないし、心のどこかで信じたくないって思ってる。

…でも、そんな風に考えたって、あいつが帰って来る訳じゃないもんな。だから、今はあいつを助けることだけを考える」


「私も、もっと強くなってあいつを倒せるだけの力を手に入れないと…」


 そう、俺達も無限回廊を求める以上、目的が同じである()()()──メテス・クロノオとも再び会い、戦うことになる可能性は大いにある。


 特にあいつは何をしでかすか分からないからな。そんな不気味さもあって、俺達は確証こそなくとも、もう一度どこかで奴と出会い、そしてその時こそが結衣乃を救うタイミングとなるだろうとある種の確信を抱いていた。


「ま、無理はすんなよ。…俺が手伝えることなら何でも協力するからよ」


「…ありがとな。速野」


「おう!親友として当たり前だろ?」


「…そうか」


(あの群星が俺を親友否定しないとは…月見さんとリンの手前、平静を何とか保ってはいるが、相当参ってるみたいだな)


 この日の夕方、俺達の元に新たなクエストが来ていた。


「…行くぞ」


「うん」


「気を引き締めてくよ」


「おう」


 二度とあんな悲劇を起こさないためにも、俺達は気を引き締めてクエストに挑む。

 扉の光を抜けると、そこは教会だった。


「教会、か」


「…あ、話聞かなきゃ」


「そうだな」


 いつも結衣乃がしていることだったため、つい俺達は動くのが遅れてしまう。


「俺が行くよ」


「分かった」


「任せたよ」


 結衣乃の存在の大きさを改めて考えながら、俺は近くにいたおじさんへ話しかける。


「えーっと、あなた達が俺達を呼んだんですか?」


「はい。…あなた方をお呼びしたのは他でもない、この国を空中都市から守ってほしいんです!」


「空中都市…?」


 聞き慣れない単語に俺が首を傾げると、おじさんは続ける。


「…空中都市というのはグルーイという奴が率いている鳥人族が形成した、文字通り空に浮かんだ都市なんです」


「ま、街が空に浮いてる!?」


「それはまた奇怪な…」


「そして鳥人の奴等はこのチージョウ王国を襲い、侵略して来ています。

…しかし私達は奴等に碌に抵抗出来るだけの手段がなく、防戦一方となってしまっているのです」


「成る程な、飛行機とかはない訳だ」


「みたいだね…って、私達も飛行手段なくない?」


「ユイが残してくれた箒なら…」


「これで三人はキツいわよ。精々二人ってとこね」


「確かに」


「…そうだ、俺に考えがある。実は俺、瞬間移動の魔法を習得したんだ」


「瞬間移動…結衣乃の転移魔法(テレポート)みたいな?」


「アレと比べると大分格は下がるがな。ある程度の範囲で、人一人までならいける」


「そしたら私達二人は箒で」


「俺は瞬間移動で、それぞれ行くべきだろうな」


「…にしても瞬間移動なんていつの間にそんな技習得してたの?」


「あった方が便利だし、戦闘にも使えるかと思って大分前から練習してたんだ。

俺の持ってる魔導書にそういう系列の魔法があったからな。お陰で念動力も使えるようになった」


「おお!!凄いなツル!」


 感心するようなリンの態度とは裏腹に、俺の表情は曇る。


 …当然、この能力は一週間前のあの日には既に使えた…が、結局結衣乃のいる所までは届かず、使用を断念せざるを得なかった。

 俺があの時もっと高度な瞬間移動を使えれば…という風にどうしても考えてしまう。

 そんな俺の心に気付いたのか、涼海とリンは優しい表情で俺に声を掛ける。


「…群星君が言ったんだよ、絶対に助け出すって。そのためには、凹んでる場合じゃないでしょ」


「そーそー、私達が落ち込んでたら、きっと辿り着けないよ」


「そう…だな。うん、ありがとよ」


 俺が礼を言うと、二人ははにかむ。

 そして俺は自分の心を何とか奮い立たせると、おじさんに話しかける。


「…分かりました。その空中都市とやら、俺達が倒します。そこでひとつ聞きたいのですが、この街で最も高い建物で待機できるようにしてもらえませんか?」


「はい。それでしたら、空貫くうかんの塔という塔が有ります」


「その塔と空中都市の高さの差は?」


「大凡100メートル程かと…」


「成る程…となると塔のギリギリでも難しいな。更に高い足場を用意出来れば…」


「それなら、私達が乗る箒を中継点にするのは?私達がある程度の高さまで行ったらそこに瞬間移動して、そこから更に空中都市まで瞬間移動すれば?」


「…それなら行けるかもしれんな。よし、それで行こう!」


 俺達は作戦を立て、そして空中都市へと挑む。

 結衣乃が居なくなって初のクエスト。あいつを取り戻すための第一歩でもある。

 俺達の新たな戦いの始まりだった。


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