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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第三章:波乱の秋
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EP51.失ったものと新たな決意


「聖天星覇斬!」


 リンの作り出した炎の幕を突き破り超高速の一撃を放つ。


「くっ!!…やるじゃないか」


「分かっちゃいたが、矢張り厄介だな。避けられるとは」


「ふふふ、避けたにも関わらず僕の片腕を使えなくする程の傷を与えるとは…凄まじい威力だ。

…まあ良い。どうやら僕達は互いに互いを必要としているようだしね、いずれまた会おう」


「…ふん」


「群星君!戻るよ!」


「ああ」


 踵を返してその場を立ち去っていくメテスの後ろ姿を睨んだ後、俺は涼海の生成した帰還用魔法陣に乗る。

 そして俺達は光に包まれ、その光が消えると元の場所へと戻って来る。何もかも出発した時のまま…ただ一つ、ここに結衣乃が居ないことを除けば。


 ……そこから先は、色々なことがあった。

 帰った来た俺達は、まず全員が黙り込んだ。…当然だ。結衣乃が無限回廊に取り残されたのだから。

 暫く三人で黙り込んで、そして気付く。この先結衣乃が居ないとなると問題があり過ぎるのだ。

 何せリンを増やす時とは訳が違う。俺達の世界に無理矢理リンを捻じ込めば良かったあの時と違い、結衣乃の存在は既にこの世界に刻まれている。

 つまり、リンの記憶操作魔法でどうにかしようにもとても手に負いきれやしない。


「…なあ、良いか?」


「……どうしたの、群星君」


「勿論、これからのことについてだ」


「…これから、ね。ツルは何か考えてるの?」


「ああ。…まずは結衣乃が居なくなった以上、俺達は話さないといけない相手がいる」


「…結衣乃のお母さんやお父さん、それに春瑠乃のさんのこと?」


「そうだ。それに加えて俺達の親にも、説明する必要があるだろう」


「…そうだね」


 俺達はすぐに朝日家に向かう。

 そしてインターフォンを押そうとするが、緊張と恐怖と罪悪感、色々な感情が心の中で渦巻き、俺の手はそれを移しとったかのように震えてしまう。


「群星君…」


「分かってる。…大丈夫さ」


 涼海の心配そうな声を聞いた俺は無理矢理震えを抑え込むと、インターフォンをしっかりと押す。


『はーい、って剣義。どうかしたの?』


「姉貴…少し用があって。陽奈乃さんと晴輝さん、いる?」


『うん…居るけど。何かあったの?結衣乃は居ないみたいだけど…』


「うん、まあちょっとね」


『?……分かった』


 俺の様子に、何かを感じ取ったらしい姉貴がオートロックを開けてくれたので、俺達はそのままマンションの五階へと上がり、そして姉貴の案内で朝日家に足を踏み入れる。


「突然すみません」


「良いよ。…あれ?結衣乃は一緒じゃないんだね」


「…そのことなんですが晴輝さん、陽奈乃さん、姉貴。結衣乃は…暫く帰って来れません」


「え?」


「ど、どう言う意味?」


「…」


 俺の言葉に三人とも困惑するような素振りを見せる。…当たり前だな。


「信じてはもらえないかも知れませんが…俺達は異世界に行けるんです」


 俺達の真剣な表情に嘘ではないと読み取ったのか、三人とも真剣に聞こうとしてくれる。


「──と言うことがあって、結衣乃は無限回廊の中に…取り残されたままです」


「そんなことが…あったんだね…」


 これまで起こったことなどを掻い摘みながら一通り話すと、三人は俯きつつも否定はしない。姉貴の問いに、俺は答える。


「…だから絶対に、俺達が助け出します。あいつを…取り戻して見せます。だから…あいつの居場所を、残してやっといて下さい!」


「お願いします!」


「お願いです!」


 俺達が頭を下げると、晴輝さんは悲しみを堪えたような微笑みを浮かべて言う。


「分かった。なら、君達を信じて娘のことは託すよ。だけど、君達も無茶はしすぎないように。自分のために君達が傷付くことは、きっと望んでいないから」


「はい…!」


 それから数日が経ち、俺達はあの日の晩の内に自分達の事情を説明すると、驚きながらも受け入れてくれた。結果としてリンのことについても説明したが、今はもうかけがえのない家族に違いないと、変わらず受け入れてくれたその姿勢に、俺達の心は幾らか救われた。

 そして結衣乃は暫く家庭の事情による休学という扱いとなった。周りも驚いたものの、少ししてくるとそれを受け入れ始め、新たな日常が始まった。

 …その中で俺達は決意する。もう一度無限回廊にアクセスし、結衣乃を取り戻す。そしてその道はきっとメテスが立ち塞がる。それに負けないためにも、二度と同じことを繰り返さないためにも俺達はもっと強くなろう、と。


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