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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第三章:波乱の秋
44/111

EP44.異世界の冒険者


 さて、文化祭から早くも二週間が経ち、11月も半ばとなった。

 あの後二日目も大きなトラブルなく無事に終えることができた。

 演劇も割と好評のようだったし、良かった良かった。


 ──そして、そんなある日の事だった。


「剣義、クエスト来たから行くよ?」


「おう、分かった。今日はどんなのだろうな」


「さあ?でもアタシが大活躍するから大丈夫!!」


「リンさん、油断しないの。…じゃあ鍵開けるよ」


「ああ」


 そう言って涼海が扉を開くと、俺達はそこに入る。

 このクエストが、俺達の運命を大きく動かすことになるのを、俺達はまだ知らない。


 不思議な空間を抜けると、目の前には草原が。…草原?


「ん?なんかこれまた珍しい場所にきたな。草原か?」


「そうね」


「あなたが私達を呼んだんですか?それで、依頼は何ですか?」


 結衣乃が呼び出した人と思わしき人物に話しかける。


「依頼は…まずは僕の話を聞いて貰おうかな。僕も異界へと渡っている」


「え?つまり、どういう事だ?」


「フフッ、時間はある。ちゃんと説明するさ。

僕はメテス・クロノオ。君達と同じく異界へ渡ってその異界を救っている」


「!!鍵を持ってるってことか!」


「私達と同様の存在…初めて会ったわ…」


「アタシ達以外にも居たんだな!」


 メテス、と名乗った黒髪を少し長めに切り揃え、翠の瞳を持つ穏やかそうな青年は語り出す。


「僕がこの力に目覚めたのは、十年前…まだ十三の頃。十年前のあの日…僕は突然誰かに呼ばれた気がしたんだ。そして気づくと不思議な球体…君達が鍵と呼んでいる物だ。それが現れ、形を変えて僕を吸い込んだんだ。そして初めて異界にやって来た」


「…!成る程ね。それで?」


「僕は困惑したよ。何も分からない状態で救世主と言われ、戦いに駆り出されたからな。

そして何とか解決し、この世界へと戻ってこれた。

…その時は長い夢だとでも思ってんだが、それから何日かが経ったある日、再び僕を呼ぶ声がして、あれは夢なんかではなかったと実感した。そして僕は怖くなって幼い頃からの友にその事を話した。

…彼女は優しい子でね、僕を心配して共に異界へとやって来たんだ。そして彼女と共に沢山の世界を巡った…三年前まではね」


 メテスは懐かしむように語っていたが、突然低く重々しい声で話し始める。


「…三年前、僕と彼女はある世界へと行った。そしてその先で…僕は彼女を失ったんだ。その世界の敵は余りに手強く、僕達はその敵に追い詰められてしまった。そして戦いの末に彼女はその命を落としてしまった…。

一瞬だったよ、一瞬で彼女は僕の目の前から消えたんだ。やられそうになった僕を見た彼女は、僕を庇ってその命を落としてしまった…という訳さ」


「そんな事が…」


「ところで君達、君達は幾つの世界を救ってきたんだい?」


「私達が行ったクエスト…依頼を達成した数は、確かここを除けば276回だった筈よ」


「え、涼海、お前一々数えてたの?」


「違うわよ。鍵に問いかけると分かるの」


「へー」


「ふむ、思った通りだ」


「思った通り…?どういう意味だ?」


「僕の目的、話して無かったね。僕の目的は無限回廊にアクセスする事だ」


「無限回廊?何だそれ」


「君達や僕が異界に行くために使っているシステムの事さ」


 そしてメテスは、自身の知っている事と、その目的を語り出す。


「無限回廊は数多もの世界を繋げる大いなる力であり装置。そして僕は、そこにアクセスして、全ての異界へ渡るシステムを止める。

そうする事で、全てを()()()()()()に出来る」


()()()()()()に…!?」


「どういう事だ?」


「世界を繋ぐ無限回廊は時空を超越する。故に、その機能が停止すれば、そもそも世界間の繋がりは無くなる。…つまり、そもそも誰も世界を越えなかった事になる」


 メテスの言っている意味が、漸く分かる。


 メテスは失った幼馴染を取り戻す為に、無限回廊を停止させ、そもそも人々が異界に出入りしなかったように全ての世界の歴史を修正しようとしてるって事か。


「…そして、それを達成するには君達の力が必要不可欠だ。…どうかな?」


「私達の力が必要?どういう意味?」


「異界を繋ぐこの球体…これに250回以上世界を救い、帰還したという条件を加える事で持ち主は無限回廊へのアクセス権の半分を得る」


「半分…?なら、もう半分は?」


「同じ条件を揃えたもう一人の球体の持ち主と出会い、その力を合わせる。…それによって無限回廊への道が開けるんだ。

今まで幾人もの人々を呼んできたけど、250回を超えた者は居なくてね」


「成る程、そういう事か」


 メテスの話を聞き、その目的も知った今、俺達は一つ悩みがあった。


 確かにメテスの境遇は可哀想だし、協力してやりたいって気持ちもある。

 そもそもその世界の問題はその世界の人間で解決するというのが本来の形で、そうあるべきなのかもしれないとは思った。


 しかし、異界との繋がりが無かった事になれば…速野と仲良くなった事も無くなるし、そもそもリンとの出会いに至っては完全に消えるという事を表していた。

 そして俺達が干渉した事で救われてきた世界だって少なくない。その世界も、元通り危険な状態、危機が迫った状態に戻るという事。

 それが分かっているから、俺達は何も言えなかった。

 メテスはそんな俺達の様子から察したのか、眉尻を下げて言う。


「…君達にも色々事情はあるだろうし、急な事で驚かせてしまって申し訳ない。時は寛容だ。ゆっくり考えてくれて良いから」


「…分かった」


 こうして、俺達の前に一つの決断が突き付けられた。


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