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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第三章:波乱の秋
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EP43.その気持ちが嬉しい


「危ない!」


「!」


 演劇のクライマックス、鬼退治に成功して姫花を桃太郎が助け出すシーンで背景の板が私こと月見涼海の方へと倒れ込んで来る。

 無敵の加護で防ごうとすると、倒れてぶつかる前に群星君が板を受け止める。


「…大丈夫か?」


「う、うん…」


 ちらりと横目で客席を見ると、皆事故が起こると思っていたようで、群星君の行動を見てホッと胸を撫で下ろしていた。

 群星君は板を元に戻すと、何事もなかったかのように劇を続ける。


「姫花様。助けに参りました。…怪我などないですか?」


「…!ええ、ありがとう。大丈夫よ」


 怪我の下りは本来なかったはずなので、きっと群星君のアドリブだろう。

 それに答えつつ、私は自分の台詞を言う。


「…あなた、桃太郎でしょ?」


「覚えてて、くれたんですか?」


「勿論。まさか助けに来てくれるだなんて思っていなかったけれどね。

本当に、助けてくれてありがとう!…格好良かったよ」


 最後にアドリブを入れた私の台詞が終わると、舞台が暗転して速野君にスポットライトが当たる。


「こうして桃太郎の鬼退治は終わった。桃太郎と姫花はその後紆余曲折を経て結婚し、幸せに生きていったとか。めでたしめでたし」


 速野君がナレーションを終えると幕が閉じる。

 すると、観客席の方からは拍手が聞こえてきて、それを聞いた私達は安堵していた。


「いや〜危なかったな。…大丈夫か?」


「うん、何ともないよ。…大体、私は当たってても効かないよ?忘れたの?」


「そうだったな。…体が咄嗟に動いたんだよ。

ってかもしかして俺、必要なかった?」


「ううん、その気持ちが嬉しかったよ。ありがとう、群星君」


「…おう」


「ま、劇を続けられなくなる可能性もあったから群星、ナイスだけどな」


「そうかい。しっかしまぁー、疲れたー」


「お疲れさん。明日も頑張ってくれ」


「あ、そうだ速野、後で姉貴と回ってきたらどうだ?」


「は?何で俺が…ってか昨日も似たようなメッセージ送ってきたよな」


「まあ良いだろ。ほら、脚本家様の話も聞きたいだろうしさ」


「…そういうことなら仕方ないか」


 そう言いつつも速野君がどこか嬉しそうなのは、きっと気の所為では無いのだろう。

 そんな事を思っていると、裏方の山本さんがやって来る。


「ごめんなさい、月見さん。私がぶつかったから」


「大丈夫だから安心して。群星君のお陰で怪我もしてないし、明日は気を付けてくれれば良いよ」


「怪我無いんだね…良かったぁ。本当にごめんね」


「うん」


 その後、私達も衣装から普段着に着替えて外へ出ると、結衣乃とリンさんの二人が待っていた。


「お疲れ〜三人とも!」


「おう、見てたか?」


「見た見た。かっこよかったねー、特にあのすずちゃんを助けたシーン」


「そうだろうそうだろう…ってできれば普通の演技シーンを評価して欲しかったわ」


「でも、本当にかっこよかったよ、群星君」


「そう?…まあ、ならいっか」


 そんな事を話していると、群星君の姿を道行く女子の一部が見ている事に気付く。

 …恐らくさっきの演劇を見ていた人達だろう。

 群星君の良さが伝わるのは嬉しいけど、それでライバルが増えるのは嫌だなぁ、なんて思う自分の我儘に内心苦笑いしてしまう。


────


「春瑠乃先輩」


「あっ、貴斗君じゃ〜ん、どうしたの?態々こっちまで来て。…私に会いたくなっちゃった?」


「まあ、そんなとこですね」


「えっ!?」


「…ま、群星に行けって言われたのもありますけど。親友にそう言われちゃあ、断れないっす」


「ふーん、じゃあ貴斗君は剣義に言われて()()()()私のとこに来たんだ」


 春瑠乃先輩のどこか拗ねたような物言いに、俺は「しまった」と思った。

 照れ臭くてこう言ってしまったのだ。なので慌ててフォローに回る。


「い、いやー、でもまあ…やっぱり俺自身、春瑠乃先輩に会いたかったんで!」


「!!…そ、そう?ならまあ…良いけどさ」


 あークソ恥ずかしいなこれ!そう思ってると春瑠乃先輩がふと思い出したように話を振ってくる。


「そうだ、さっきの演劇良かったよ。貴斗君が脚本書いてるんでしょ?…凄いなあ」


「いやいや、俺はただ面白そうだったからやっただけですよ。正直、反省点ばっかりです。もっと拘りようもありましたしね」


「そっか。…でも、やっぱり凄いよ。私はあれ、好きかな」


「っ!…あ、りがとう、ございます…」


 不覚にもドキッとしちまった。お陰様で無様にも噛みまくっちまった。

 別に、俺と言う人間に恋愛感情を伝える為の「好き」じゃないのは分かってたけど…やっぱり動揺しちまう。

 単純な自分の脳や心臓が、今は少しだけ恨めしかった。

 ……いや、単純なのは、そんな言葉一つで嬉しくなっちまえて、胸を高鳴らせられちまう、俺の心そのものかもな。


 そんなこともありつつ、俺は春瑠乃先輩と文化祭を楽しんだ。群星には感謝しねえとな。


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