EP38.転校生リン
なんやかんや夏休みも終わり、いよいよ二学期。
漫画とかなら転校生が来たりするんだろうが、我が校にもいる。転校生が。
…まぁ、俺達の良く知るリンだけどな。更に言えば転校生と言うか留学生だけど。
この世界に来て、取り敢えず留学生という設定にしたものだから、学校に通わせなきゃならない。
取り敢えず諸々の事情やら準備やらを何とか乗り越えて苦労しつつもリンを学校に通わせられるようにしたのだ。
…因みに、どうやって突破したのかは企業秘密って事で内緒だ。
で、肝心のクラスはどこかと言うと、俺達と同じクラス…ではなく結衣乃のクラスである。
ちょっと焦ったけど、結衣乃と一緒なら心配ないだろう。
そして少し気になって翌日の休み時間に涼海と速野の二人の様子を見に行くと、友達?に囲まれて和気藹々としている結衣乃とリンの姿が。
「ん?あ、すずちゃんに剣義!それに速野君まで、どうしたの?三人とも」
「いや、リンが心配で」
「大丈夫!任せといて!…まあ、昨日は大変だったけど」
遠い目をしている結衣乃に、何があったのか聞いてみる。
「あぁ、昨日の事なんだけど…」
──回想
さて、今日は9月1日。皆さんご存知二学期の幕開けとなる。
そして今日からリンがこの学校へと留学(偽)してくるのだ。しかも私のいるクラス。
一応、剣義が事前に学校でどう過ごすか教えてるはずだけど…。
「ほらー、席につけー。今日から留学生が来たぞー」
「留学生?」
「どんな子だろー」
「可愛いといーなー!」
留学生という単語に、ざわつき出すクラスメイト達。
そして教室に入ってくるリンを見ると、それはより顕著になる。
「すげー!めっちゃ可愛い!」
「初めまして。イギリスから来ました枠生リンと言います。祖父が日本人で、日本語は祖父から教わりました」
「日本語めっちゃ上手い!」
リンを前にクラスメイト達は興奮を隠しきれなさそうな様子を見せる。
よし、取り敢えず問題無さそう…だったんだけど…。
「あ、ユイだ!おーい!」
「え」
「ねぇねぇ、私ちゃんと挨拶できたよー!偉いでしょー」
「いや、ちょっ、ストップ!」
私を見るなりリンが駆け寄って話してきたものだから、美少女留学生と何か関係があるのかとクラスの全員から視線を寄せられる。
一応その場はホームルームが始まったので何とか視線だけで済んだけれど、終わった途端沢山のクラスメイト達が群がってくる。
「朝日さんと枠生さん、知り合いみたいだけどどういう関係なの?」
「あ、いやーははは…」(どう説明するのよ、これ)
そこで上手く誤魔化そうとしたものの、リンがそれを許さなかった。
「アタシは今ユイの幼馴染のツルの家にホームステイ?してるんだ!」
「え?ツル…ってあ!B組の群星君のことね!」
「え?マジ?確かB組の月見さんも朝日さんの幼馴染で、群星っていつも朝日さん達と一緒にいるやつだろ?美少女三人に囲まれた生活してんの?良いなぁ…」
「え?いや…、そう言うつもりではないと思うけどね、剣義はー」
そんなこんなでその日、日中は質問攻めにあい、何とかボロを出させないように気を張り続けて粗方の質問を出し尽くさせたのだ。
そのお陰で今日はある程度落ち着いて今に至るのだ。
「…とまあ、こんな感じかな」
「そうか。大変だったな…。ところで一つ良いか?
なんか俺、流れ弾当たってね?」
「あー、ごめんね!」
そう言って手を合わせる結衣乃。道理で今日は矢鱈と視線を感じた訳だ。
別に特別存在感があるわけではないが、涼海や結衣乃と居るとどうしても目立つので、校内での知名度はそこそこ。
そんなポジションなだけに普段一人でいてあんなに視線を感じる事なんて向けられることなんてないし、気のせいだと思っていた。というか思いたかった。
すると、結衣乃のクラス…E組から何人かの女子が出て来る。
それも、何故か全員好奇心をその瞳に満ち溢れさせて。
「群星君だよねー!リンちゃんって家ではどんな感じなの?」
「え?」
「枠生さんとはどんな感じの関係なの?」
「いや…」
「朝日さんと月見さんと枠生さんの中から選ぶとしたら?」
「は?いや…」
そうか、昨日の時点で結衣乃とリンから引き出せる情報は出し尽くした。だが、もう一人の当事者たる俺から出た情報はここまで無いから好奇心旺盛な結衣乃のクラスメイト達に標的として目を付けられてしまったという事か。
これマジでどうしよう。…ってか一人だけ質問のベクトル違くね?
助けを求める視線を送ると、涼海は申し訳なさそうに目を逸らし、結衣乃は「てへっ」とでも言いたげな顔で見てくる。
ならばとリンを見ても手を振ってくる。あいつ意味理解できてないな…。
そして少しの希望を込めて速野を見遣ると、ニヤニヤしながらこっちを見ていた。助けてくれる気は無さそうだな。…あいつ絶対許さん。覚えてろよ速野めえ…!人のピンチで楽しみやがって…!
そして俺は、昼休みの時間いっぱいまでひたすら質問を喰らわされ続けたとさ。
因みに、なんやかんや速野が裏で火消ししてくれた思った程長くは続かなかった。
…やっぱ許しといてやるか。




