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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第二章:騒動の夏
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EP32.夏祭りとそれぞれの時間


 私、こと朝日結衣乃は焦っていた。さっき人波に呑まれて皆と逸れた結果、近くにはリンしかいないと言う状況に陥っていた。


 何とか人混みを抜けて考える。お姉ちゃんや剣義、すずちゃんと速野君は一緒なのだろうか。

 合流しようと探し始めるが、見つからない。うっかりスマホを家に置いて来たのが良くなかった。

 一方リンは呑気にかき氷を食べている。


「大丈夫?ユイ」


「大丈夫、合流できるよ。さ、行くよ」


 そう言ってリンと共に歩き出そうとすると、見知らぬ男性二人組に声を掛けられる。


「君達、めっちゃ可愛いね、俺達と回らね?」


「楽しいよ〜」


「…間に合ってます」


 面倒臭そうな人達に絡まれたのでさっさと逃げようとすると、男は手を掴んでくる。


「まあ、そう言わさずにさぁ」


「ちょ、止めて下さい。警察呼びますよ」


「そんな連れないこと言わないでよー」


 前にも言ったけど、私は確かに常人よりは強い、けど魔法をメインで使う関係上、身体スキルを鍛えたり、強化することもない。

 なので、手加減もできないのだ。フルパワーでやれば、振り払えはするだろうけど余計な二次被害を呼んだりしかねない。

 かと言って素の力では成人男性には勝てないと言うジレンマに襲われていた。

 どうするか…そう考えていると、片方の男の手をリンが捻り上げる。


「痛でででで!」


「何すんだ!」


「それはこっちの台詞。アタシやアタシの友に不愉快な想いさせたんだから、覚悟、出来てるよね?」


 そう言って私ですらゾッとする程のプレッシャーを放つリン。

 男達はすごすごと退散していった。流石は魔王。


「…良いとこあるじゃん」


「当然!友達だもん!」


 リンと共に改めて皆を探しに行くと、大きな音と光が。

 空を見上げると、花火が打ち上がり始めていた。


「…始まっちゃった」


「キレーだなー」


「呑気だなぁ。…って、あっ!」


 そこで思い出す、綺麗に見える穴場スポットがあった事を。

 リンを連れてその場所へ向かう。


(もしかしたら皆、あそこに居るかも…!)


────


「マジっすか春瑠乃先輩」


「マジっすよ貴斗君」


「居ないですね、皆」


「だから、逸れたんだって」


 そう逸れたのだ、俺達は。人波によって分断された結果、俺は春瑠乃先輩と二人になってしまったのだった。

 春瑠乃先輩と二人きりなのは別もいつも部室でそうだから気にはしてないが、どうもいつもと環境が違って落ち着かない。


 取り敢えず合流しようと探し回るが、見つからない。電話を掛けたんだが、折悪くバッテリーが切れてしまった。

 春瑠乃先輩に関しては家に忘れて来たとか。さっき朝日さんも似たようなこと言ってた気がするが、姉妹だなぁ。…などと感心してる場合でも無い。


 暫くウロウロしていると、春瑠乃先輩は「あっ」と声を上げる。


「そう言えば私達には秘密の穴場があるの」


「穴場?」


「そ、花火が良く見えるとこ。結衣乃達もそこに向かってるかもしれない」


「成る程、じゃあ行きますか」


 近くにあった自販機でコーヒーを買って飲みながら春瑠乃先輩に着いていくと、春瑠乃先輩は空を指差す。


「ねえ見て見て、貴斗君。月が綺麗だよ」


「ぶふぉっ!」


 あんまりに唐突だった為、飲んでいたコーヒーを噴き出してしまう。

 ま、ちょっ、今のって、まさか…。

 そして春瑠乃先輩の顔を見上げると、ニヤニヤとした。


「あれえ?汚いなー。どうしたの、貴斗君、もしかして、()()()()意味だと思った?」


「…違いますよ。どう言う意味だと思ってるのかは分かりませんが、ただ飲んでる時に咽せてしまっただけです」


「へぇ〜。……ま、別に良かったんだけど」


「え?」


「何でもなーい。ほら、もう着くよ」


 最後に何か小声で呟いていた様な気がするが、はぐらかされてしまった。

 そして到着したのでその景色を見ると、うん、確かに良い眺めだ。


 しかし、誰も居なかった。まだ来てなかったかな、と先輩が言うと同時に花火が打ち上げられ、空が照らされる。


「おー、始まったねえ」


「…確かに綺麗っすね」


 嬉しそうな顔で花火を見ている春瑠乃先輩の顔は、不本意ながら綺麗だった。…本人には言わねーけど。


────


「うーん、居ないな。仕方ねえ、花火始まっちまったし、もしかしたらあの場所にいるかもしれないから行ってみるか」


「…そうだね。結衣乃や春瑠乃さんも居るし、行こっか、群星君」


「おう、そうだな。あ、これやるよ」


 皆と逸れてしまった私、月見涼海と群星君は皆を探していたものの、見付けられないでいるうちに花火が打ち上がり始めてしまった為、私達にとっての秘密の穴場に向かおうとしていた。

 そんな状況で感じていた私の不安を察してくれたのか、屋台でラムネを買って来ていてくれたらしい。

 こう言う時折見せる優しさも、私の好きな群星君の良い所だ。


 そして、私達は秘密の穴場──神社の裏にある空き地に行くと…


「おっ、二人も来たか」


「良し、これで全員揃ったね」


「皆ここにいたんだな。良かった」


 合流して最初の方こそ会話はあったものの、その後は皆それぞれ後半に入ってより盛り上がっている花火をじっと見つめていた。

 そして気付く、春瑠乃さんはチラチラと速野君を見ている事に、速野君もまた、チラチラと春瑠乃さんを見ている事に。


「…成る程」


「ん?どうした、なんか言ったか、涼海」


「どしたのー」


「ううん、何でも」


 その意味は、行動はきっと今の私だから気付けた。

…だって、私も結衣乃もチラチラ群星君を見ているのだから。


 因みに、リンさんと群星君はその間ずっと花火に夢中な様子だった。…何だか、あの二人は兄妹みたいで少し微笑ましかった。


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