EP31.夏祭りと賑やかな時間
俺と涼海と結衣乃はガキの頃から三人で夏祭りに来ていた。
だがまあ今年はリンに速野まで増え、ついでに姉貴…朝日春瑠乃もリンに会いたくて着いてくるそうで、合計六人の大所帯?となった。
去年までの二倍、騒がしくなるだろうな、とは思うけれど、それでも楽しそうだと思えるのはきっとこの面子だからだろう。
「なあ、親友よ、良いのか?俺まで浴衣借りちまって」
「誰が親友だ。…母さんが乗り気だったんだ。遠慮する必要はない」
母さんに、速野を連れて夏祭りに行くと話したら俺に珍しく新しい友達ができたって張り切ってたんだよな。
因みに涼海とリンは朝日家で浴衣を着て、そのまま結衣乃と姉貴も加わって四人で来るそうだ。
「お待たせー」
「ちょっと時間が掛かっちゃった」
「おお…!人がいっぱい居るな!」
「そうねぇ、今年も賑わって…ってえ!?」
少し待つと四人がやって来たのだが、そこで姉貴は速野を見るなり驚きの声を上げる。
「貴斗君!?」
「あれ!?春瑠乃先輩、どうしてここに…」
「え?知り合い?」
結衣乃が驚きを隠せずに尋ねる。…驚いてるのは俺達も一緒だが。
「えっと、貴斗君は私の部活の後輩なの」
「あー、あの人の居ない写真部?」
「失礼な!貴斗君と私で二人よ!」
「居ないじゃん」
姉貴は憮然とした態度を見せるが、やっぱり人がいないのだから仕方がない。
まあ、うちの高校は運動部に力を入れてるから人が少ないのは写真部に限った話ではないのだが。
「あー、そう言えば春瑠乃先輩の苗字って朝日でしたもんね。普段名前で呼ぶんであまり意識してなかったですけど」
「いやー、まさか剣義にできた珍しい男友達が貴斗君だったなんてね、世界って狭いわね」
「全くです」
実は初対面(だと思っていた)の姉貴と速野が上手くやれるか不安だったが、何なら速野との付き合いは俺達より長そうだし心配要らなさそうだな。
「な、何だこの球体は…!」
「ん?そりゃあたこ焼きだな。蛸っていう足が八本ある生き物がいるんだが、そいつの足を小さく切って小麦っていう植物の実を粉にした物をつけて焼いた物だ」
「なるほど。…良い匂いだな」
「よし、買ってやろう。おじさん、たこ焼き二つ」
「あいよ」
少し待つと焼き上がったたこ焼きが出てくる。
「ほれ、熱いから気を付けろよ」
「うん。…んー!美味しい!」
「そうか。良かった良かった」
「すずちゃーん、綿飴食べよーよ」
「うん。…でもリンゴ飴も捨て難いわ」
「そうだね。じゃ、どっちも食べちゃおーっと」
「え?ちょっ、待ってよ〜」
…あいつらもあいつらで楽しそうだな。そう思って今度は速野達の方を見る。
「ちょっ!春瑠乃先輩!そろそろ止めた方が…」
「あと一回、あと一回だけ!」
…どうやら射的で姉貴が外しまくったけど、諦められてないようだな。
狙った景品がよっぽど欲しいってよりは、単に負けず嫌いなだけだろうけど。
「なあ群星」
「何だ」
「焼きそば食いたくね?」
「あー、そうだな。買うか」
俺は結構楽しいと思っているし、祭りは好きなんだが、どうにも値段が高いんだよな。
速野と買った焼きそばを啜りながらそんな事を考える。
すると、涼海が金魚掬いに挑戦していた。
「あれ?上手くいかないなー」
「涼海、大丈夫か?」
「おっ、なんだ出来んのか?群星」
「いや、出来ないけど。コツは知ってるぜ。…出来ないけど」
「何じゃそりゃ」
兎に角、と話を続ける。
「あんまし水に漬けない方が良いらしいぜ?後は縁に乗せるようにするとか」
「いやいや、それくらい俺だって知って…」
「えっ?そうなの?」
「マジかよ…」
「すずちゃんはあまりこう言うのやる方じゃないからね」
すると流石は涼海と言うべきか、俺のアドバイスもどきを聞いてすぐさま飲み込み、上達していった。
そんな様子を見ていると、なんだか俺もやりたくなって来たので挑戦してみる事にする。
「俺もやるわ」
おじさんに代金を渡してポイを受け取る。
すいすいと泳いでいる金魚に狙いをつけ、さっとポイを出す。
…上手くいかなかった。その後何度か挑戦するも、結局ポイが破れてしまい、終了。分かってはいたけどな。…うん。
「そう落ち込むなって…。てか、なんか人多くね?」
「ん?ああ、そろそろ花火の時間だしな。…ってうわっ!」
「ちょっ!群星君!?」
急に人の波が押し寄せ、皆とはぐれてしまう。そして気付くと、そこには涼海しか居なかった。
「む、群星君…他の皆は?」
「…居ないな。マジかー」
まさか今更こんなベッタベタなイベントに遭遇するとはな。




