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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第二章:騒動の夏
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EP24.記憶書き換え大作戦


 さて、我が群星家は共働きである。なので作戦決行は夜、母さんが家に帰ってくるところから始まる。

 幸いウチは、そこまで近所付き合いを大切にしている家庭ではないので、周辺の記憶と噛み合わせるのも楽だった。ひとまず月見家と朝日家は後回しにする事にした。


「ただいまー」


「おかえり」


「あら、アンタが出迎えなんて珍しい。…ってその子は?」


 知らない女の子の姿に違和感を覚えている母さん。そんな様子を横目に、リンに耳打ちして指示を出す。


「リン、今だ」


 俺の指示を聞いたリンは人当たりの良い笑顔を浮かべて、母さんの手を握って目を合わせると、「初めまして!」と挨拶する。

 少しの間見つめ合った後、俺がすかさず口を開く。


「いやだなー。今日から我が家にホームステイする枠生わくせいリンちゃんだよ」


「あ、そうだった、ごめんごめん!…あらいけない、準備しなくちゃ!ごゆっくりね」


 どうやらしっかりと筋書き通りの記憶を植え付けてくれたようだ。助かるな。

 何故わざわざ母さんの前に出したかというと、理由は簡単。リンの記憶操作魔術は相手に触れていて、かつ相手と目を合わせている状態を10秒間保つ必要があるからだ。

 こんな面倒な条件じゃ、命を狙われることも多かったらしい元の世界じゃあまり使わなかったのも頷けるな。


 因みに筋書きはこう。「元々はイギリスで暮らしていたが日本人の祖父から話を聞いて日本語を習得していて、より日本の事を知りたいから日本へと留学してきた」というもの。

 母さんにはそれに加えて「歓迎会を開く予定だったのに忘れていた」という記憶も植え付けている。

 感謝すべきはリンが鍵の影響を受けて英語も喋れるようになっていた点だな。

 何故イギリスかというと速野が前にゲームの舞台にしようと思って色々調べてたことがあり、それ故に詳しいからだそうだ。


 作戦名・記憶書き換え大作戦だ。……名付けたのは俺じゃない、結衣乃だ。ま、何はともあれ後は父さんが帰ってくるのを待っておくってとこだな。


 一先ず昼間に用意したリンの部屋へ向かう。元は物置部屋になっていた部屋で五人でなんとか片付けた。一軒家で良かったと心から思う。


「よう、上手くいったぞ」


『あっ、なら良かった。記憶書き換え大作戦、順調そうだね』


 部屋に着き、グループ通話をかけると、結衣乃が最初に応答する。


「まあ、今のところな」


『そういえば、私のお父さんやお母さんもいるし、結衣乃の家には春瑠乃さんだっているし、その辺の人の記憶調整はいつにするの?』


『そうだな。なるべく早くしないと会話にズレが生じる危険もあるし』


 涼海や速野の言う通り、早くしなくちゃいけないな。


「ああ、分かってる。ひとまず明日どうにかできるんならどうにかしたいんだが、構わないか?」


『多分大丈夫だと思うけど。明日は土曜日だからお父さんもお母さんも家にいるだろうし』


『うーん、多分大丈夫だけど、一応、お姉ちゃんに聞いてみるね』


「おう、頼んだ。んじゃ今日はお開きかね」


『だな、またな』


『うん、また明日』


『後で連絡しとくねー』


 通話が切れると同時に下の方で父さんの声がする。帰って来たか。隣でうたた寝しているリンを起こす。


「ん?どうしたツル」


「父さんが帰って来た。もういっちょ頼めるか?」


「うん、任せなさい!」


 元気よく頷くリン。頼もしい限りだ。そして一階に降りて行くと、そこには人の良さそうな中年男性。俺の父親の群星翔矢しょうやだ。


「父さんお帰り」


「剣義が出迎えなんて珍しいな…ってその子は?」


 夫婦揃って同じこと言ってんな。リンに目配せすると、リンは父さんと握手し、目を合わせる。


「初めまして!アタシ、リンって言います!これからよろしくお願いします!」


「ああ、君がリンちゃんか!いらっしゃい!自分の家だと思って寛いでね」


「はい!」


 よし、父さんの方も上手くいったな。その後はつつがなく歓迎会が行われ、一日が終わった。まだまだ課題は多いけれど、色々ありすぎて疲れたのか、考える間も無く眠りに落ちた。


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