EP22.魔王少女
変な物体に触れ、意識を失っていた俺だが、今しがた起きると、俺の部屋で涼海と結衣乃が知らない女の子と睨み合っている。
そして俺の手には何故か剣が。…どうなってんの?
「ちょっ、どんな状況だよこれ!」
「こっちが聞きたいよ!起きたら倒したはずの敵が、何故かすずちゃんと睨み合ってるし!」
「敵?てかいつの間に帰ってきたんだ?というかそもそも君誰!?」
「アタシ?アタシはリン・ファジー=プラネイト。元の世界では魔王と呼ばれていたぞ」
「魔王!?…でも帰ってきてるってことは新魔王は倒されてるはず…。そもそもこんな美少女じゃねえし。
ってことは旧魔王の方か?いや待てよ、旧魔王って確か千年前の人?…え?約1000歳!?」
衝撃的な年齢に驚いていると、リンさん?はさらりと訂正する。
「うーん、正確には1064歳だな。ま、封印されてたからそんな年齢だが、実際は17歳と言ったところだし、精々寿命も90歳位だが。
…というかそもそもアタシは敵じゃないぞ」
「何言ってんのよ!さっき私に攻撃してきたじゃない!大体どうやって攻撃を避けたわけ!?」
「あれはただのお遊びだよ。それに、攻撃は避けたわけじゃないさ。確かに喰らったし、確かに死んだ」
「死んだならどうして今ここにいるのよ」
確かに。何言ってんのかさっぱり分からん。
すると、リンさんは自分を指差してあっけからんと言いのける。
「アタシの体の中には賢者の石ってのが埋まっててさ。他者の生命力を奪っておくことでその残量分は死んでも復活できるのさ」
「…つまり残機ってことか?」
そう結衣乃に尋ねると、「多分」と言いながら頷く。
禁断の果実の時にも思ったが、どこの世界にも似たようなもの、伝承はあるんだな。
「で、目的は?」
「簡単だよ!なんせアタシは千年以上も封印されていたからね。その封印を君に解いてもらったし、恩返しだよ恩返し。
こう見えてもアタシ、義理堅い性格なので」
そう言いながら俺を指差すリンさん。…封印を解いた?俺が?いつ?
「…封印?」
「あー、それだよそれ。その剣」
「剣ってこれのことか?」
「そう、それ」
俺の手にあった謎の剣が関係してるのか?
「それさ、アタシの世界では勇者の証となる伝説の聖剣なんだよ。
で、かつて私が勇者によってその剣の中に封印されて、それをあの隠し部屋に置かれてたんだけど、偶々君が来て剣に触れて、君を剣の持ち主だと剣が認めたから封印が解けたのね」
「お、おう。なんか知らないところで凄いことになってんな」
「まあ、それで意図したわけじゃないにしろ、助かったからね。お礼に君を守ってやったのさ」
「守った…?どういうことだ?」
全く状況が掴めず困惑していると、リンさんはあちゃー、とでも言いたげに頭を押さえた後、その言葉の真意を語り出す。
「あー、そうだった。覚えてないんだった。
えーと、君さ、あのアタシの名前を騙ってた奴と戦ってたじゃん?で、追い詰められたところでアタシの封印を偶然解いてくれたからさ、私の名前を勝手に名乗ってるあいつも気に入らなかったから君の体借りて倒させてもらったってわけ」
「…倒した?俺が、新魔王を?」
「そ!正確には君の体を借りた私が、だけどね。君達はその後に気付いたから警戒して攻撃を仕掛けてみたんだけど、戦ってみたら面白そうだったからね」
「つまり、私達と戦ったのは、遊び半分ってこと?」
怪訝そうに尋ねる結衣乃に、全く反省もしてなさそうな態度で肯定するリンさん。
「そーゆーこと!ところで、君達の名前は?」
「え?あー、俺は群星剣義」
「朝日結衣乃よ」
「……月見涼海」
三人とも名乗ると、リンさんはうんうんと頷く。
「成る程ーツルにユイにスズね!よっろしく!あ、アタシは気軽にリンで良いから!」
「ツ、ツル!?」
ツルって…鳥じゃねーんだから。そんな呼ばれ方したことない無い俺は動揺したが、女子二人は慣れてるのか、特に動揺はしていなかった。
ただ、想像以上にフレンドリーだったためか二人とも困惑しているらしく、この後どうするべきか相談してくる。
「どうすんのよ」
「うーん、他の世界に置いてくるわけにもいかないしなぁ」
「…そうだ!速野君に相談してみたら?こういう時は第三者目線で何か良いアドバイス貰えるかもしれないし!」
「速野に?まあ、あいつ以外に事情知ってるやついないしな…」
ま、人が増えればその分考えも増える。
予想外過ぎる状況から逃げるように、助けを求めて俺は速野への連絡を取るのだった…。




