EP21.剣
嫌な予感は、していた。最上階に降り立った瞬間、私は群星君とも、結衣乃とも引き離されて全く異なる場所に移動していた。
なんとか合流しようと走り回っても少しするとすぐに別の場所に移動させられる。
…これが敵の能力だ。そう気付いたところで、どうにもし難いが為に何か良い方法は無いかと考え込んでいた。
「すずちゃーん!」
「!結衣乃、無事だったのね」
「うん、どうやらこれ、宙に浮いてる分には移動を邪魔されないみたいだから箒に乗って移動してたの」
成る程、そういう仕組みだったのね。何にせよ結衣乃と合流できて良かった。
「後は剣義だけど…。とりあえずすずちゃんも乗って」
「うん。!…結衣乃、今のって…」
「何だろうね?兎に角向かってみよう!」
私が箒に乗った瞬間、何か異様な気配を感じる。
急いで向かうと、そこには剣を構えた群星君と、謎の男(恐らく、新魔王だろう)が睨み合っていた。
…まさか、あの気配は群星君から…?
私達が立ち尽くしていると、突然群星君が新魔王(仮)に飛び掛かる。
「………」
「ぐっ!何故だ!何故私の術が使えないんだ!?」
新魔王が何とか近くにある瓦礫を盾にしようとするも、あっさりと斬り伏せられて吹き飛び、床を転がっていく。
戦いの様子を観察していた結衣乃が呟く。
「…あれ、封印術?」
「封印術?」
「私も理論を知ってるだけなんだけど、対象を封印するっていう、名の通りの技。
ただ、まさか特定の能力だけを封印する程の高度な封印術を剣義が使えるなんて」
そんな風に結衣乃が解説している間にも、群星君は何度も攻撃し、新魔王(仮)を追い詰める。
「……」
剣の先から、青白い炎を纏った揺らめく手のような物が伸びて、新魔王(仮)を天井に叩きつける。
「ぐあっ!……!!」
「…」
更に、天井から落ちて来た新魔王(仮)に、青白い炎を刀身に纏わせた剣を振るい、切り裂く。
その一撃は新魔王(仮)の体を燃やし、灰へと変えていく。
新魔王(仮)が声にならない呻き声を上げながら灰へと変わっていくのを見ると、群星君は突如こちらへ振り向き、飛び掛かって来る。
「!?…危ない!どうしたのよ、群星君!」
咄嗟に前に出て無敵の加護を発動し、腕で剣を受け止める。
高い金属音が鳴り、群星君は一瞬動きを止めるが、すぐに距離を取る。
「…すずちゃん。今気付いたんだけど、剣義は何かに憑依されてるかも。
かなり気配を隠すのが上手いのね。分からなかった」
「…成る程ね」
状況を分かっても群星君を傷つける訳にもいかないし、厄介な相手である。
さて、どうするべきか…。と、少しの間逡巡していると、群星君は剣の先から新魔王(仮)相手にも使った青白い手を伸ばしてくる。
「すずちゃん!それ思いっきり引っ張って!」
「?分かった。任せて」
こちらに飛んできた青白い手を掴み、そのまま一気に力尽くで引っ張る。
すると、青白い何かが群星君から出てきて、群星君はその場に倒れる。
私は急いで群星君に駆け寄る。…どうやら命に別状はないようだ。
「…へぇー強いじゃん。君達」
そんな声が聞こえたと思ったら青白い炎の中から長い白髪に白と黒を基調としたドレスに身を包んだ赤い瞳の少女が出て来る。
と同時に私の足元に帰還用魔法陣が出現する。
新魔王(仮)がいた辺りを見ると、そこには幾らかの灰があるばかりだった。
…やっぱりあいつが新魔王だったのね。
そんなことよりも目の前の少女を何とかしなければ。後1分と43秒、何とか群星君を守らないと。
「すずちゃんは剣義をお願い。…私が何とかする」
「分かった。…任せるわ」
帰還用魔法陣の元へとやってきた結衣乃はいつになく真剣な顔つきで言う。
「ドロップコンボ・インパクト」
「魂炎鬼弾」
謎の少女が青白い炎を飛ばして攻撃を仕掛けるが、結衣乃が翳した杖から放たれた雷を纏った炎が青白い炎を一瞬で打ち消し、少女をも消し飛ばす。
「…ふう」
結衣乃が一息吐くのとほぼ同時に、私達の意識は失われる。…群星君は既に気絶してるけど。
目を覚ますと、二人はまだ気を失ったままだった。
群星君の方を見ると、剣があることに気付く。
そうか、剣を持ったまま気絶した群星君の所へ私が駆け付けたから、そこで帰還用魔法陣が出現してしまったのね。
「よーやく目を覚ましたか。待ってたぞ」
「!」
帰ってきたことで緩んでいた気が引き締まるのを感じた。
顔を上げると、そこには結衣乃に倒された筈の謎の少女がいた。




