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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第一章:始動の春
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EP16.デートと群星君


 期末試験が終わり、幼馴染の結衣乃と群星君と一緒に遊園地に行く、その予定だったのだけれど、結衣乃が風邪をひいてしまい、群星君と2人で遊園地を巡ることになってしまった。


 突然だけれど月見涼海は、幼馴染の群星剣義が好きだ。…勿論、異性として。

 そして、それは私のもう一人の幼馴染で親友の朝日結衣乃も同じ。

 私達二人が同じ人を好きになったのなら、きっと私は敵わない。…そう思って身を引こうとしていた。

 けれど、初めて三人で異世界に行ったあの日、結衣乃と約束したのだ、お互い全力で群星君の一番を目指すと。

 だから私はこのチャンスに頑張らないといけないのだ。

 群星君とのデートをまずは成功させる!という目標を立てた。

 …のは良いものの、今のところジェットコースターに行ったのもほぼ惰性のようなものだし、ついメリーゴーランドに目線がいってしまったのを目敏く群星君が見つけて気を遣ってくれたのだ。

 まあ、凄く恥ずかしそうにしている群星君には悪いけれど、群星君と一緒に乗れたのは嬉しい。

 私はメリーゴーランドが好きだ。だって、昔三人でこの遊園地に来た時に初めて見たここのメリーゴーランドは凄く煌びやかで、綺麗だったから。

 メリーゴーランドから降りた後、群星君は少し難しい顔をして考え込んでいたので、何事だろうと思って見ていると、突然私の方を向く。


「よし!涼海、今日は楽しむぞ!」


「え、ええ。どうしたの?急に」


「いや、別に?折角来たんだし、楽しまなきゃな!と思って」


「?まあ、確かにそうね。うん、楽しみましょ?」


「ああ、取り敢えず腹減ってきたし、フードコート行こうぜ?」


「そうね」


 フードコートへ行き、食事をした後、私は群星君に訊ねる。


「で、次は何処へ行くの?」


 すると、群星君は自信ありげにニヤリと笑うと、ゴーカート乗り場を指さす。


「ゴーカート?」


「あぁ、でも折角やるんだからどっちが先に一周できるか競って、勝った方が次のアトラクションを好きに決められるってのはどうだ?」


「ふーん。まあ、良いけど。乗ってあげる」


 どういうつもりかは分からないけれど、楽しませようとしているのは分かるし、話に乗ってみよう。

 すると、群星君がキョトンとした顔で言う。


「今のって車に乗ると話に乗るの二つの意味をかけたギャグか?」


「違うわよ。おじさんじゃあるまいし、そんなしょうもないギャグ言わないわ」


「しょうもないギャグは言わないって事は面白いギャグなら言ってくれんの?涼海が爆笑ギャグ言ってるのも想像つかないけどなー」


「い、言う訳無いでしょ!ほら、ふざけてないでさっさとゴーカート乗りましょっ」


「だな」


 ニヤニヤしながら揶揄ってくる群星君をあしらいつつ、ゴーカート乗り場に向かう。

 係員さんの説明を聞き、レースを開始した…のだけれど…私は知らなかった。

 私が、こういう操縦系アトラクションの腕が壊滅的に下手という事を。


 結果から言ってしまえば勝負にもならず、壁にぶつかって抜け出せなくなったところで、群星君は一周して戻ってきていた。


「よっし、俺の勝…ち……って涼海!?まだいたのか!?」


「う…実は、何故か抜け出せなくて…」


「えー…マジか…。ちょいといいか?」


 近くまで群星君が近付いてきて軌道修正してくれる。…っていうか係員さんに心配されて声掛けられた時も意地張って大丈夫だって言ったのに、結局群星君に助けられてたら意味無いじゃない。

 …そんな訳で次を群星君が決めようとしたのだけれど、苦手なのに無理に勝負にしちゃってごめんと言って、私に選ばせてくれる事になった。


「そしたら、何処にしようかな…」


 マップを見ながら考えていると、一つの施設が目に留まる。


 …うーん、気が進まないけど、デートの定番だよね…よし!


「き、決めたよ!」


「おう、何処にすんだ?」


「着いてからのお楽しみ。さ、行こ?」


「え?あ、あぁ」


 二人で園内を歩く事数分、目的地の前に着く。

 すると、その建物が何なのか分かった群星君は意外そうにしながら言う。


「ここって…お化け屋敷?でもお前…あんまり好きじゃないよな?」


「うん、でもまぁ…たまには良いかなって」


「ふーん、そっか。んじゃ、行くか」


「うん」


 自分で選んでおきながら少し緊張しつつも、お化け屋敷に並び、入っていく。

 中には薄暗く、次々と幽霊やら河童やら色々出てくる。

 …怖すぎ……もう無理。何でこんなとこ選んだんだろ…とか後悔しつつも群星君と歩みを進める。

 すると、突然目の前に顔の付いた提灯が降ってくる。


「ふにゃっ!?」


「うわっ!びっくりしたぁ……今の『ふにゃっ』ってまさか…涼海か?…ってか近い近い!」


「あ…ご、ごめん!」


 うぅ…恥ずかしい…何よ「ふにゃっ」って…。しかも群星君に抱き着いちゃったし。


「ったく、こないだの悪魔の方がよっぽど怖いだろ」


「あ…れは、また別よ!」


「そういうもんかねぇ…。ん?そろそろゴールだな」


「あ、ホントだ」


 少し足早にお化け屋敷を出ると、深く溜息を吐く。


「…怖かったぁ」


「ははは、次はのんびり出来そうなやつがいいかもな」


「うん。…もう時間的にも次で最後かな」


「だな」


 もう日は傾いて夕暮れ時だ。…この楽しい時間が終わってしまうのは寂しいけど、仕方のない事だ。


「最後だし、観覧車乗るか!」


「…そうね」


 二人で観覧車乗り場へ行き、観覧車に乗り込む。

 その際、係員さんから生温かい目で見られた。…きっと、恋人同士だと思われてるのだろう。

 それが事実ならどんなに嬉しいか。窓から景色を眺める群星君の横顔につい見入ってしまう。

 すると、その視線に気付いた群星君がこちらを向く。


「ん?どうした?」


「いや、別に…」


 流石に恥ずかしくて誤魔化したが、もしかすると、今かもしれない。今、告白すれば…。


「群星君」


「私……ううん、何でもない」


「?そっか」


 …やっぱり、まだだ。今じゃない。

 結衣乃が動けない時にやるのは、フェアじゃない。私はもう、今日一日充分なチャンスを貰えたから。

 観覧車が一周し、戻って来る。もう日も暮れた。

 遊園地の閉園時間も迫っていて、アナウンスで帰宅を促している。 二人で並んで出口へ向かう。

 今はまだ、一歩半の距離が、いつか縮まる事を祈りながら。


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