EP15.デートと涼海
なんだかんだ魔法を習得したものの、結局コントロールは出来ずじまいだった今回のクエスト。
…まあ、割とあっさり涼海が敵の悪魔王を倒して帰ってきたのだが、そもそもあと少しで期末試験があると言う事で速野のインタビューについては後にしようと言う事に決めた。
尤も、あいつ自身もテスト期間中は必死こいて試験勉強してたからそんな余裕は無かったのだが。
今回のクエストだって結衣乃の家で三人で勉強会してる時にクエストが入ったから行ってきたのだ。
ま、やんないと忘れそうだったからとりあえず結衣乃に向こうでも教えてもらってたけどな。
その甲斐あってか今回の一学期末テストは中々の好成績を残せそうだ。
そしてテスト明けの日曜、結衣乃の提案で三人で遊園地に行こうという話になっていた。
まぁ、何故遊園地かと言うと結衣乃がどうやら遊園地のチケットを貰っていたのだが、それを忘れて使ってなかったが為に有効期限があと少しで切れてしまうからテストも終わったし遊びに行こうという事らしい。
そんな訳で隣町の遊園地に来たのだが…。少し早く着いたので二人とも居ない。とりあえずスマホをいじって待つことにした。
「おはよう。群星君」
声を掛けられたので顔を上げると、涼しげな水色と白を基調としたブラウスに藍色のロングスカートに身を包んだ涼海が居た。割とよく似合っている。
「おう、おはよう。…ってあれ?結衣乃は?一緒じゃねーの?」
結衣乃が居ないことに気付き、涼海に尋ねると涼海も首を傾げて聞き返す。
「群星君と一緒じゃないの?」
「いや、俺は一人で来たぞ?珍しーな、あいつ基本的に時間前行動だからそろそろ来てる頃だと思うが」
「そうね…って、結衣乃から電話だ。…もしもし?結衣乃?今向かってるの?
……え!?…あ、うん、分かった。
なら私達も…え?いやいやいや…ちょっ、結衣乃!…もう」
…なんだか分からんが何かあったのだろうか。一先ず涼海に声を掛けてみる。
「どうした?結衣乃なんかあったのか?」
「あ、うん…。実は結衣乃…風邪、ひいたみたいで」
「は?マジか?あいつツイてねーな。…しゃーねーな、俺達も帰って見舞いにでも行くか?」
あいつを放っといて遊ぶのもな…と思い提案する。が、涼海は意外にも首を横に振る。
「いや、それが…私もそうしようと思ってたんだけど結衣乃は『そのまま遊んできて』って言ってた。チケット勿体ないからって」
「そうか。…まあ、結衣乃がそう言うなら良いか」
かくして、俺たちは予期せず二人きりで遊園地を共に回ることになった。
…図らずしもデートみたいになったな。と考えて思い出す。そういえば俺は結衣乃に告られている。しかも本人の希望とはいえ返事をせず、その告白してきた幼馴染から貰ったチケットでもう一人の幼馴染とデート(もどき)をする。
…事実ではあるけどなんか凄えクズ感あるなこれ。
まあ、折角結衣乃が遊んできてと言ってるんだ、余計なことは考えずに楽しむとしよう。
遊園地の入り口を通り抜けて中に入ると、カップルやら、家族連れやらが沢山いて、アトラクションの音もあって騒がしい。
…この騒がしさは何だか遊園地という感じがして俺は意外と好きだ。
そんなことを思いながら涼海の持つマップを覗き込む。
「で、取り敢えずお前はどこ行きたい?」
「私?群星君は何処か行きたいところ無いの?」
聞き返されてしまった。…まあ、普段は結衣乃が計画立ててくれてるし、今回もそうだと思ってたからあんまし考えてなかったな…。
少し考えて涼海の方を見ると、その後ろにジェットコースターが見える。
…ま、あれでいっか。涼海絶叫系イケるし。
「んじゃあ、あのジェットコースターにするか」
「…そう言えば、三人で来るといつも最初にジェットコースター乗るね」
「だな。だから、まぁ選んだんだが」
「いいんじゃない?乗る?」
そう言うと涼海はジェットコースターに向かって歩いていく。俺もそれに続く形で歩き出す。
…こうして歩いていると思い出す。最近はすっかり来ることも減ったが昔は三人と、その親でよく来ていた。
そう考えると今まで二人きりと言うのは一度も無かったような気もする。
乗り場に着き、列に並ぶ。この遊園地はそもそもそこまで有名では無いので30分並ぶなんてことも珍しい。
このジェットコースターもどうやら5、6分で乗れそうだ。
「おっ、順番来たな」
「うん」
係員の案内に従ってジェットコースターに、乗り込む。動き出して少し経った後、段々と坂道を上っていく。
そして頂上に着く直前にふと涼海の方を見ると、目があった。何となく気恥ずかしくて目を逸らすのと同時にジェットコースターが滑り落ちて行く。
この妙な浮遊感は今でも慣れない。その後も上がったり下がったりを数回繰り返し、元の場所まで戻ってくる。久しぶりに乗ったが、悪く無いな。
涼海の方を向き、話しかけようとすると、涼海の視線があるアトラクションへ向いていた。
…メリーゴーランドである。
「もしかして乗りたいか?メリーゴーランド」
「えっ?ま、まあ。でも群星君乗りたく無いだろうし、待たせるの悪いから良いよ、別に」
「遠慮すんなって。ほら、行くぞ?」
そう言って俺は涼海の手を引きメリーゴーランドへ向かう。
昔から涼海は変なとこで線引きして遠慮するからな。折角なら楽しませてやりたい。
そこまで混んでいなかったメリーゴーランドには特に並ばずに乗れた。
動き出すメリーゴーランド。周りを見ても男性は全く乗っておらず、精々子供を連れた父親くらいだった。
…凄い浮いてるし、恥ずかしいが、涼海は楽しそうなので良しとしよう。
……メリーゴーランドに乗って目を輝かせる少女が、異世界では仕方のないこととはいえ、敵を殺し続けている。
それは結衣乃だって同じだ、しかし俺も同じく魔法を使うので何となく分かるが、やっぱり直接手を下すよりは気が楽に思う。
俺だって命を奪うのなんて嫌なのに、必要に迫られて内気で臆病な、それでいて根は優しい少女が自らの手で自分と同じように生きて、思考する者を殺していくというのは、そこに至るまでにどれだけの苦しみや哀しみ、痛みがあったか。
その払った犠牲の大きさを想い、少し切なくなる。と同時にせめてここにいる間だけはそんなこと忘れて笑顔でいさせたいと、そう心に決めた。
…ま、何はともあれ腹が減ったし昼飯にするか……。




