EP14.この世界の悪
魔法の特訓を始めてから3週間。相変わらず制御は上手くいっていない。
というか寧ろ俺の魔力が鍛えられて威力が上がってしまっている。
そんでまぁ、今何をしてるかというと、この世界のクエストをクリアするべく、悪魔王サタヌスの元へ向かっている途中だ。何でもこの世界を脅かす最凶の悪魔…らしい。
そしてサタヌスに辿り着くまでの間に多くの敵と戦う事になるだろうから実戦で磨こう的な発想で、クエストに向かいつつ魔法の特訓をしている。
丁度今も馬車が悪魔に囲まれてんので、睨み合ってるところだ。
別に倒すだけなら簡単なのだが、今回も俺の特訓を兼ねて俺が戦うというのもあって、ちょっとした緊張状態なのだ。
そうして暫く睨み合った後、突然悪魔が飛び掛かってくると同時に右手をかざし、イメージを構築、そして唱える。
「爆炎魔撃砲!」
すると、右手から炎が放たれ、悪魔達を焼いていく。
…え?名前違くねって?まぁ、元々名前は飽くまでイメージしやすい様にというサポートの為や区別の為に付けられている物なので、使えるのならどんな名前でも良いらしい。
そんな訳でコレクトバーンから爆炎魔撃砲に変えたのだ。個人的には気に入っている。
おっと、いつの間にか殆どの悪魔が消し炭になっている。よし、消火だな。
今度は氷山のイメージを構築し、左手をかざして、唱える。
「氷結魔撃砲!」
今度は巨大な氷壁が現れ、逃げようとした悪魔を氷漬けにしていくと同時に炎を消していく。
「おー、強くなったね。制御出来てないけど」
「はぁ…。つっかれたあ〜」
そう、やっぱりまだ全力に近いだけの威力を連続で二つ使うという事で凄まじい疲れが体を襲う。…制御にはまだまだ程遠いなぁ…。
ただ、結衣乃曰く魔法というのは魔力の流れ。これをまず感じ取る事が大事らしい。
普通なら繰り返し使って自らの中の魔力を高めつつ、威力を上げていく過程の中で自然と魔力の流れを感じ取る事が出来る様になるみたいだが、俺の場合はなまじ魔力が底上げされてる分、手加減する必要性が出てきた。
……てな訳で兎に角魔法を使って魔力の流れを感じ取れるようになるしか無いのだ。
そして、特に進展もないまま2週間が過ぎた。その間に俺達はサタヌスの元へと辿り着いてしまっている。
…結局どうにもならなかったな。ま、焦らずにやってくしかないか。
目の前には、悪魔の軍団。…俺生きて帰れるかな。
相手方もこちらの実力を理解している為、膠着状態が続く…と思いきや涼海が戦姫の一太刀を発動して突っ込み、悪魔達も突撃する。
「えっ?!ちょっ!涼海!?」
「まぁ、待ってても仕方ないけどさー。じゃあ行くよ!剣義」
「あ、あぁ!爆炎魔撃砲!」
仕方ないので俺も右手もかざし、強力な火炎攻撃を放つ。俺に向かってきた悪魔を数匹消し炭にする。
「っ!!仕留めきれなかったか!」
炎の中から攻撃を受けても倒しきれなかった悪魔が飛び出してくる。
不味い、避けられない。体も竦んで動かない、その次の瞬間。
「ドロップコンボ・インパクト!」
結衣乃が杖を振るい、雷を纏った風を飛ばし、悪魔達を吹き飛ばして消滅させていく。…助かった〜。
「サンキュー、助かった」
「どういたしまして。気を付けてよね」
言葉を交わし、別の所に向かうと、爆音が鳴る。その方向を見ると、涼海が、サタヌスの魔法を喰らい、爆風の中から出てきた。
少し後ろに吹き飛ばされつつも無傷の涼海はサタヌスを鋭く睨む。
「…ダメージは受けないとはいえあそこまでの威力の爆発を起こされたんじゃ近づき難いわね、結衣乃!お願い!」
「はいはい、任せて!ドロップコンボ・インパクト!」
結衣乃が杖を振るうと、土の壁が形成されてサタヌスの攻撃を受け止め、そのまま炎を纏った岩として打ち返す。
しかし、サタヌスも負けじと結界を張って防ぐ。
凄まじい魔力と魔力のぶつかり合いによって、近くの悪魔が消し飛んでいく。
ある程度離れたところにいる俺も何とか氷結魔撃砲を撃ってその影に隠れる事でやり過ごせるレベルだ。
見守っていると、結衣乃が赤いエネルギーを一点に集める。
一方サタヌスも禍々しい魔力を両手に集める。
…凄い。近くに居るだけで体がざわざわと騒ぐ程だ。もしかして、これが魔力の流れなのか?
「…やってみるか」
目を瞑り、意識を集中すると、結衣乃とサタヌスの元に何かが集まっていくのを感じる。これが…魔力の流れ!間違いない!
俺がそんな確信を抱くと同時に二人が魔力を解き放つ。
「ドロップコンボ・バーニング!」
「消し飛ぶが良い!」
炎と炎がぶつかり合う、そしてその中に涼海が飛び込み、炎の中から姿を現すと、戦姫の一太刀でサタヌスの首を刎ねる。…無敵って凄えな。
かくして、割りとあっさりと俺達の1ヶ月近くのクエストは幕を閉じた。




