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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
第一章:始動の春
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EP12.知られた秘密


 三回目のクエストを終えて1ヶ月が経ち、6月も終わりに近づいている。

 少し前には梅雨入りし、雨が降り続いている。

 その間に四回のクエストをクリアしてきたが、特に強化された力を活用する場面も無く、普通に2人が無双して終わっていた。

 そろそろ魔法とか覚えたいな〜、と思っていたそんなある日の事。


「よー、群星くーん」


「誰だお前」


 突然制服を着崩し、髪も軽く色を抜いたチャラそうな男が声を掛けてくる。

 …多分同じクラスの……誰だっけ?


速野すみの貴斗たかとだよ!あんたと同じクラスだろうが!」


「あぁ、興味無いから。で、何だよ」


「いや興味無いって…。いや、実は俺の方は君に興味があるんだよ」


 俺に興味?…そういう事か。


「涼海を口説きたけりゃ自分でやれ。俺は手を貸すつもりはない」


「ちげーよ!別に月見さんに近付くために群星に近付いたんじゃねーよ!」


「…結衣乃だろうが同じだぞ?」


「いや朝日さんでもねーよ」


 え?涼海でも結衣乃でも無いとしたら…まさか。


「……えっと、その…ごめんな?俺、個人の自由は尊重されるべきだと思うし、お前が誰を好きになろうとお前の自由なんだけどさ、俺…恋愛対象女性だからさ、君の想いには応えられない」


「急に長文で良いこと言ってる風に早とちりするのやめてもらっていい!?俺だって恋愛対象女だわ!俺は単純にお前と友達になりたいだけだっつーの!」


 何だ、友達ね。…友達?


「何故に?お前と俺が友達になってどうするんだ」


「え?…そうだなぁ。例えば、異世界転移についての話を聞かせてもらう、とか?」


「!?…お前!」


 速野が俺の耳元で呟く。…こいつ、知ってやがったのか!でも何時、何処で?


 俺が一人で頭を巡らせていると、速野は外に出るように言う。


「ここじゃちょっと…話しづらいっしょ?」


「…分かった」


 俺達は屋上へ行き、話を続ける。


「どうしてその事を知っている!」


「…1ヶ月前、偶々先生から用を頼まれて4階の資料室から物を運んでたんだけどな、その時に空き教室の前を通りがかったら物音がしたからふと中の様子をチラッと伺ってびっくり、何か変な穴が浮かんでそこから群星と月見さんに朝日さんまで出て来るんだもんな!しかも群星は何か倒れ込むし」


「…あの時のか」


 恐らく禁断の果実の時の話だろう。俺は倒れ込んでたし、二人もきっと焦ってたから注意が薄くなってたのかもしれない。


「それで気になって少し君達の事を調べてみたんだよ。んで、その会話などから異世界に行っているって事を突き止めたんだよ」


「そうかい。それで?何が目的だ?こんな話周りに言ったって頭おかしいと思われるだけだろうし、脅しは無いとして。そうすると異世界に連れてけとでも言うつもりか?」


 そう言うと、速野は首を振っておちゃらけた様に言う。


「まさか!異世界になんて行きたくないよ、俺は。怖いじゃない。何かチートとか貰えるならともかく」


「は?」


 じゃあ何が目的なんだと問うと速野は「いや、だから話を聞かせて欲しいんだよ」と返す。…ますます分からん。


「断る。大体話をするメリットが無いだろ」


「頼むよ〜、頼むって〜」


「だーかーら!なんでそんなに必死なんだ!」


「新作のアイデアになりそうなんだよ!」


「…新作?」


 俺が聞き返すと、速野は少し言いづらそうにした後、スマホを取り出し、何かの画面を見せてくる。


 それは、何かのゲーム画面だ。『ファンタジー・トラベラー』というらしい。聞いたことないな。


「これ…実は俺が制作途中のゲームでさ、ファンタジーRPGを作ろうと思ったんだけどどうもネタが思いつかなくて、そんな時に君達の異世界転移を知ったんだ」


「お前、ゲームクリエイターにでもなりたいのか?」


「…まぁ、なれるんならな」


「成る程ね、そういう事」


 俺は少し考え、そして口を開く。


「……良いぜ。ただし、涼海と結衣乃が許可を出し、尚且つ俺達がストーリー構成をチェックして問題が無ければオッケーという条件な。後、折角取材すんだ。絶対面白いの作れよ」


「本当か?よっしゃ!そしたら早速放課後に取材させてくれないか!?」


「あー、分かった分かった。…仕方ねえ、後で二人に許可取りに行くぞ」


 俺がそう言うと速野は満面の笑顔でやたらと馴れ馴れしく肩を組んでくる。…どんだけ嬉しかったんだよ…ってかうぜぇ!


「流石群星〜、救世主様〜」


「…えーい!うぜぇ!てか鬱陶しいわ!くっついてくんじゃなねーよ気色悪い!」


「つれないこと言うなよ〜。俺とお前の仲だろ〜?」


「つい数分前に初めて喋ったような仲だろ」


────


 さて、速野に頼まれ涼海と結衣乃を学校近くのファミレスに集める。


「よう、悪いな、突然呼び出して」


「別に良いけど何で速野君が?」


「えーっと、剣義とすずちゃんのクラスの」


「あー、月見さんは兎も角朝日さんは初めましてだな。俺は速野貴斗、三人に取材をさせて欲しいんだ」


 取材という単語に反応した涼海が怪訝そうな顔で聞き返す。


「取材?…何の?」


「異世界について」


 速野が事もなげに言うと、二人は驚いたように目を見開く。


「実はな、こいつに異世界に行って帰ってくるとこを見られてたらしい。んで、かくしかって訳でこいつに取材させてやって欲しいんだ?良いか?」


 事情を説明すると、涼海と結衣乃は相談し合い、承諾する。

 ……因みにかくしかってのはかくかくしかじかの略語だ。


「…まあ、それくらいなら」


「何か面白そうだしね」


「本当か!?助かるぜ!ありがとよ!」


 分かりやすく喜ぶ速野。…ま、良かった良かった。

 その後早速取材させて欲しいと言う速野の要望に応え、取り敢えず三人揃ってからの冒険談を話す。

 速野は終始飽きもせず目を輝かせてメモを取っていた。熱心だ事で。

 …禁断の果実の一件の時に「うわっ、こいつやべーな」みたいな目で見られたのは気の所為だと思おう。


「成る程。…ってもうこんな時間か。今日はこのくらいで良いよ。付き合ってくれてありがとう」


「ん?そうか。んじゃまぁ帰るかね」


 そして帰り道、家が同じ方向という事で途中まで速野も着いてくる。


「いや〜楽しかった〜。んじゃ、俺こっちだから!また協力頼むわ!じゃあな〜」


「おう、またな」


「またねー」


「また明日」


 一人減って結局何時もの三人になり、特に何を言うでもなく歩いていると、結衣乃が口を開く。


「良かったよ〜。本当に」


「?何がだ?」


「え?そりゃ勿論剣義に友達が出来た事だよ〜。これでも心配してたんだよ〜」


 …そんな風に思われてたのか。


「馬鹿にすんな。俺だって友達くらいいるっての!」


「……見た事ないけど、ああやって他人と話してる群星君」


「ばっ、お前余計な事言うなよ涼海」


 …涼海にバラされて、結衣乃はケラケラと笑う。


「……別に、お前らがいりゃそれで充分なんだよ」


「おっ、言うねぇ〜私は嬉しいよ。そんな風に思っててくれたんだ〜」


 結衣乃は少し顔を赤くしつつも茶々を入れ、涼海は顔を真っ赤にして黙り込んでいる。

 ……何かこっちまで恥ずかしくなってきたな。

 まあ、そんなこんな色々あって秘密を共有する仲間が出来たとさ。

 …何か変なのに懐かれただけの気もするが、まあ良いか。


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