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無限回廊と幼馴染  作者: 名梨野公星
最終章:終幕の春
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EP FINAL.三人の結論


 俺が到着すると、既に涼海と結衣乃の二人が待っていた。時刻は17時半。時間通りだ。


「…よう」


「やっほー、剣義」


「…来てくれてありがと」


「そりゃまあ、逃げたりしねえよ」


 二人からの言葉に、何となく気恥ずかしくなった俺は横を見遣りながら返す。


結衣乃「じゃあさ、剣義…まずは私から」


剣義「…ああ」


結衣乃「そういえば、何で私が剣義のことを好きか言ってなかった気がするね。…本当のところ、私にも分からないんだ。いつからか分からないくらいずっと昔から一緒にいて、ずっと一緒に過ごしてきて…そしたら自然に好きになっちゃってたから。だから…理由なんて分かんないかな。…そんな曖昧な始まりでも、この気持ちは本当だよ。本物だって絶対の自信を持って言える。だってそれくらい

──私は剣義が好きだから」


 結衣乃は俺の目をまっすぐ見て想いを伝えてくる。去年のゴールデンウィーク明け、流れで告白された時に交わした約束…「今度は自分の意思で告白する」を結衣乃は果たした。

 すると、涼海が一歩進み出て、代わりに結衣乃が一歩下がる。


「…私はね、バレンタインの時にもはっきりと言葉にしてないから…ちゃんと告白する。

私は…水族館で初めて出会ったあの日、あの日から…一人だった私と一緒にいてくれた剣義君の優しさに、一目惚れしてたんだと思う。二年生になって同じクラスになって、一緒に過ごしていく中で……沢山の剣義君を知った。男の子の友達と遊ぶ剣義君。困ってる人をついつい助けちゃう剣義君。宿題が面倒くさくてへたってる剣義君。……そのどれを知っても、私のこの想いは強くなってくる一方だった。

……そう、私は──剣義君のことが好き。大好きだよ」


 涼海が告白を終えると、一歩下がって結衣乃と並ぶ。そして、二人とも真剣な顔付きでこちらを見つめてくる。二人が勇気を出した…最後は俺の番だ。思い返してみると、俺は割と分かりにくい部類なのだろう。だが俺の心はずっと昔から決まってる。不思議と、恐怖は無かった。受け入れてくれると分かっていたのもあるし、何よりも俺達三人の絆は誰を選んだ選ばなかったなんてことで消えしまうような脆いものじゃないと確信してたからだ。そしてそれはきっと──二人も同じだろう。

 そうは言っても緊張はする。シンプルに恥ずかしい。だから一度深く息を吸い、吐き出す。そして…俺は口を開いた。


「…まず二人とも、ありがとな。俺のことを好きになってくれて。別に俺が偉いわけではないけど、こうして選ぶ機会をくれたことも、感謝してる。きっと二人とも、凄い勇気を出して、俺に想いを伝えてくれたんだと思う。だからこそ…ここでしっかりと結論を言う。俺が好きなのは──








──涼海だ。…俺と、付き合ってほしい」


 俺は遂に決定的な言葉を言い切った。思えば、誰かにこの想いを告げるのはセルラ以来だ。あの時はもう会うことはないだろうという謂わば今生の別だったことと、セルラの告白へのせめてもの通すべき筋として答えた。当然…本人を前にして言うのなんて初めてだ。……本当はもっといい感じな言い方をしたかったんだが、想定以上に頭真っ白になったな。滅茶苦茶シンプルになった。


 そして、俺の告白を聞いた涼海は顔を真っ赤にして唖然とし、結衣乃は眉尻を下げながらも嬉しそうに笑う。


「わ、私…本当に?」


「…おう。本当だ」


「い、いつから…?」


「一目惚れ、って言ったら分かるか?」


「え、ええ!?」


 どうやら俺達は同じ日、同じタイミングに互いに一目惚れしてここまで幼馴染をやってきたらしい。

 結衣乃も勿論魅力的だけれど、もっと幼かった俺にとっては恋愛対象かと言われると、そうではなかった。というよりそれまで物心着く前から一緒にいたから俺はあいつを意識したことがなかった。その辺は男の子より女の子の方が早熟だと言うから、俺と結衣乃との間で認識に差が生まれたのは無理もないだろう。

 そんな時に、俺は水族館で涼海に出会った。俺にとって涼海は、あの時守らなきゃいけない存在だった。そう思ったのは…初めて会ったあいつは知らない環境でひとりぼっちになって、怯えてたから。そんな涼海を守らなきゃ、なんて一丁前に思った俺は、あいつと一緒に行動して…驚くほど楽しかった。あんなに楽しかったのは初めてかもしれない、それくらい楽しかった。あの後、同じクラスになるまで俺は毎日ふと気付くと涼海のことを考える時があった。廊下ですれ違うだけでも嬉しかったけど、何故だが話しかけられなかった。そして同じクラスになって、俺は勇気を出して涼海に話しかけた。その結果一緒にいるようになって…段々と恋愛とかを考えるようになって…その頃にはもう、自然と涼海のことが好きなのだと、自覚していた。


「…結衣乃」


「うん。分かってたよ」


「そうだったんだ…」


「……やっぱお前にはバレてたか」


「勿論。私はずっと剣義を見てきたんだから。最初から、知ってたよ。それでも振り向いてもらおうと頑張ってきたつもりだったけど…頑固だねえ、剣義は」


「いや言い方」


「えへへ、そうだね。一途って言った方が良いかな。…不思議なんだ。フラれて…しかも10年以上も募らせてきた初恋なのに…勿論悔しいのにそれ以上に嬉しいんだよ。私」


「涼海…」


「だって私…剣義も好きだけど、きっと同じくらいすずちゃんも好きだからさ。その二人が結ばれたら…やっぱり嬉しいんだよ」


「結衣乃!」


「あはは…すずちゃんから抱き着いてくるなんて珍しいね。…うん。やっぱり私、二人が大好きだよ」


「俺も…お前達二人が大切で、大好きな存在だ。だから、この先も…俺達は“幼馴染”だからな」


「うん。勿論。“恋人”は一席だから譲るけど、その席は二席…私達二人の席だからね!」


「そうだね。…私達三人が幼馴染であることは…変わらない」


 こうして…俺と涼海は幼馴染という関係に加えて、恋人という関係になった。それでも、結衣乃も含めて三人の幼馴染であることに変わりはない。


 きっとこの先、色んなことがあるのだろう。それでも、きっとこの三人でなら乗り越えられる。そう信じられる。それに、俺達は三人だけじゃない。リンがいて、シュウトがいて、姉貴がいて、速野がいて…そんな頼れる仲間がいるから、きっと大丈夫だろう。


 空を見ると、沈みかけの太陽が西の空から橙色に空の半分を染め上げ、そして東側からは月が昇り始めていた。その周りには星が瞬いていて…その景色が、いつもよりも綺麗に見えた。


(了)

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