EP 1.幼馴染の秘密
人生において、道を間違えてしまったらどうなるのか、踏み止まれるのか、引き返せるのか。
俺はそのどちらにせよ、近くに居る人達が気付かせてくれ、お互いに道を間違えないで生きていけているのではないかと思う。
何が言いたいかって言うと俺にとって気付かせてくれる存在は二人の幼馴染だったという話だ。
そう、これは俺達幼馴染三人組の冒険物語なのだ。
始まりは高二の春、ゴールデンウィークが明けてすぐの事。
何の変哲も無く、見ていて思わず欠伸が出てしまう程、普通の人生。
それこそが俺、群星剣義の人生だった筈だ。
だが今、そんな俺の前で二人の幼馴染が真剣な目でこちらを見つめ、何かを言おうとしている。
一人は朝日結衣乃。俺とは保育園の頃からの付き合いだ。
茶髪のショートヘアで、人懐っこそうな丸く穏やかな目をしている。
そんでもって顔そのものは可愛い系で、幼馴染の身内贔屓を抜きにしても学校トップクラスの可愛さだろう。
おまけに頭脳明晰で明るく、人当たりも良い為、男子人気はかなり高い。俺が嫉妬の目で見られる位には。因みに運動は少し苦手だ。
何がとは言わんが、大きい。何がとは言わないけどね?
もう一人は月見涼海。小学校の時からの付き合いだな。
涼しそうな名前だけど真夏の八月生まれだ。
黒髪の腰まであるロングヘア。俺も黒髪だが青味がかってる俺とは違い、綺麗な黒髪だ。結衣乃とは対照的な鋭く、凛々しい目をしている。
ただ、外見と人見知りな性格の所為で何となく冷たそうなイメージを持たれちまってるが、中身は寂しがり屋で意外とポンコツだ。
勉強もある程度出来るが、何よりスポーツが得意だ。やっぱりこいつもモテるんで、俺もやっぱり嫉妬の目で見られる。まぁもう慣れたもんだが。
こいつについては結衣乃に比べると………
まぁ、今後に期待って事で。
さて、話が逸れたが、兎にも角にもこれは告白でないのは分かりきっていた。
何せ、この状況を作ったのは俺だしな。
いや、秘密を打ち明けるって意味ではこれも告白か。つまり言い換えれば俺は今人気の幼馴染二人から告白されてる訳だ。
どうしてこうなったのか、話は昨日に遡る。
──回想
ゴールデンウィークに行ってきた旅行のお土産を持って行くよう母さんに言われて涼海の家を訪れた時の事。
「あらぁ剣義くん。里ちゃんから聞いてたけど、わざわざありがとうね!」
里ちゃんと言うのは千里の略で、群星千里。…俺の母親だ。
「いやいや、小遣いの為なんで」
「あら、そう。ふふふ。あ、今部屋に涼海と結衣乃ちゃんも居るわよ。直接渡してきたら?」
いやいや、勝手に入ったら怒るだろ。そう思い、断る。
「いやー、まぁ涼海にもプライベートってもんがあるだろうし、遠慮しときます」
「どうせ後で結衣乃ちゃんの家行くんでしょ?だったら今渡しちゃったら?」
「いや、でも…」
俺の手元の袋を見ながら提案する波羽さん。あ、涼海の母親の名前ね、月見波羽さん。
「んー、だったら二人を呼んできてもらえる?それなら良いでしょ?」
「…まぁ、そう言う事なら」
ニヤニヤしながら俺に頼む波羽さん。全く、何故にそこまで俺を娘の部屋に行かせたいのやら。
二階に行き、涼海の部屋の前に立つと、ドアをノックする。
…返事が無い。不審に思いドアを開けた、まさにその瞬間だった。
「涼海、結衣乃、入るぞ?」
「ふぅ、ただいま〜」
「うん、お疲…れ…」
「えっ?」
目の前にはワームホールみたいな物があって、そこから涼海と結衣乃が出てきた。
あまりに訳が分かんなすぎて素っ頓狂な声が出ちまった。
「どしたの?すずちゃん?それに今何か変な声が…」
「ゆ、結衣乃、後ろ、見て…」
涼海に促され、結衣乃が振り返ると、目が合い、その丸い目が大きく見開かれた。
「え?……剣義!?」
「変な声で悪かったな…。
ってかこれは一体どうなってんだ!?」
ここから、全ては始まったんだ。