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4話 高橋凛音(4)


 俺は仕事を探すために、アリシア案内のもとクーラ家から一番近い街『ソニア』を訪れていた。


 近いと言ってもアリシア家から森を抜けて、約5キロ離れている。

 なので行きだけで、約1時間は掛かってしまった。


 帰りも歩くとなると、面倒くさいな。運動不足の体には答える。マジで部活やっていた時ほど体が動ない。


 アリシア曰く、仕事のバイトはこの町の案内状にある掲示板で募集しているそうだ。


「やっと着いたな。ここから町の案内状ってどれくらい掛かるんだ?」

「ここから20分くらいね。もちろん歩きだから。日本みたいな便利な生活こっちじゃ無理だからな。覚えておいた方がいいぜ」

「わかってます。アリシアも口調が守になってますよ」

「あ……そうだな。気を付けなくっちゃね」


 アリシアはぶりっ子風に答えた。もうこの体を存分に楽しんでいるな。ポジティブそうでなによりだ。


「それより私に対しては、敬語じゃなくていいよ。見た目だけで判断するなら、私たち同い年くらいだから。敬語だと違和感ない?」


「そうですか……。中身を意識しないように、アリシアとして接しようとしてるんですがね。つい……」


 だって20近く離れてるんだぜ。なので完全なるタメ語で話すのを躊躇してしまう。

 仕方ない。その代わりに怒らないでくれよ。言ったのはそっちだからな。


「では……アリシア案内よろしく!」

「オッケー! じゃあついて来て」


---


 案内所の前に到着した。案内所は1戸建ての店が、続く通りにひっそりとあった。


 しかいこの街は、俺がイメージしていた街並みとは違った。

 中世・ヨーロッパみたいな街並みを勝手に連想していた。

 だがこの街の家は、レンガ造りだ。横道には所々に、点々と木が生えている。

 強いて言うならば、アフリカ、南米の町並みに近いかもな。


 案内所に入って正面が、受付になっている。

 受付の右側に掲示板があり、左側は受付を待っているのか、複数人の男女が椅子に座っていた。


 とりあえず掲示板から目を通すことにした。

 掲示板には、数十件のバイト募集が張り出されていた。


 アリシアと一緒に掲示板で仕事を探す。わからない職業は、アリシアに説明してもらう。


「アリシアちょっと聞きたいんだけどさ?」

「何?」


「この『エロディー』ってどんな仕事だよ? ヤバそうな臭いがするんだが」


 それを聞いたアリシアは、呆れた表情をした。

「やっぱ年頃だね。別に、これはあっち系の仕事じゃないよ。簡単に説明すると、虫歯を強制的に引っこ抜く仕事だね」


「それがどうして『エロディー』になるんだ」

「さぁー。私に聞かれても、わかないよ」


 このようなよくわかんないバイトが、いくつかあるのだ。

 しかしお店の接客など、身近に感じる仕事も一応ある。

 さて何をやろうか? 仕事選びにも、結構時間掛かるんだよな。

 高校時代の時も、バイト始めようと思ったが決めれずに、 結局探すのを止めたこともあった。


「どう? 自分がやりたいやつあった?」

「候補は3つくらいあるんですが……迷いますね」

「そう。とりあえず決まったら受付に、自分が選んだバイトの紙を持ってて。そしたら受付の人が、面接の手続きしてくれるから」

「はい。わかりました」

「今日中に決めなよ。また明日もくるの面倒だし。私、あっちの席で座って待ってるから」

「すみません。付き合わせて」


「別にいいよ。今日仕事なくて暇だし。あと敬語は使うなよ~」

 後ろ向きで手を横に振りながら、そう言ってアリシアは、席がある方に行った。


 これ以上アリシアを待たせるのは悪いし、早めに決めなきゃな。


 居酒屋の接客 ・ 会計士 ・ 占い師の雑用

 この3つで迷っていたのだ。


 最初に居酒屋。

 仕事内容は日本でやることと、対して変わらないそう。

 居酒屋を選んだ理由は、人との交流・この世界の食料・常識マナーなどが学べそうだからだ。

 俺は、実際に居酒屋でバイトをしたことあるからな。その経験が活かせるだろう。


 次に会計士。

 日本で会計士と聞けば、立派な職業だ。

 しかしこの張り紙の説明を読み限り、こっちの世界では違うそうだ。

 仕事内容は、企業や株などではなく、家庭が所有している資金の計算をすること。

 この張り紙には、『この国では計算ができる人物は稀であり、重宝される。是非ともその能力をソニアの民に奉仕してほしい!』と書いてある。

 それなりに時給は弾むそう。

 会計士を選んだ理由は、この国の通貨・学力・一般家庭の事情が知れそうだからだ。

 僕は、理系である程度の計算はやってる。なので何とかなりそう……だと信じる。


 最後に占い師の雑用。

 仕事内容は、掃除・道具の手入れ・スケジュール管理などその他もろもろ。

 占い師を選んだ理由は、アリシアが記憶を取り戻しのが、魔術的な何かに関係がありそうだからだ。

 じゃなければ、こんな仕事は絶対にやらない!


 そんなことで、かれこれ30分は悩んだ。

その結果……


 夕御飯を食べながら考えることにした。


---


「アンタ、あり得ない! どんだけ優柔不断なわけ!」


「しょうがないんだ。30分悩んでたら、腹がへっちゃて」

あー、情けねぇ。自分が嫌になる!


「これ食べ終わるころには、結論でてるから。

そしたら届けをだして、帰るよ。だからアリシアはこれ食べたら、先に帰っていいよ」


「私が帰ったら、アンタ帰り道分かるわけ。夜は向こうと違ってこっちは、結構暗いよ。街灯はないからね」


「でも遅いとソニアさんが心配するんじゃ?」

「ダイジョブだよ。最悪9時にここを出ればいいでしょ。

私も昔、就職活動するときにかなり迷ったもんなー」


 就職活動とバイトは、違う気が? 就活か、年の差を感じてしまう。


「そう言えば、アリシアは何の仕事してるんの?」

「私ね。今はハードウッドの環境保護の仕事をしてる」


「今は? もしかして仕事を転々としてる感じか?」

「違う、そういう意味じゃない。言葉足らずだったね。前にってのは、前世で働いていた仕事のこと」


「あ……察し悪くてすみません」

「別に気にしてないよ。むしろ、前より今やっている仕事の方が世のためになっていると実感する」


 アリシアの表情は、どこか哀愁漂うものがあった。

 その顔を見ると、アリシアに前世の話を尋ねるのは無粋な気がする。

 前世の話をすると、寂しい気持ちがこみ上げるものだ。

 俺もその一人。なので知りたくても、一歩を踏み込めない。ダメだな、俺は。


 少し傷心気味に晩飯を食べていると、隣の男が話しかけてきた。

「ちょっといいかな、君?」

「俺ですか?」

「そう、君。二人の話声が聞こえてきちゃって。別に聞き耳を立ててわけじゃないよ」


 そう言われると、余計怪しいな。


「君仕事探してるんだって?」

「そうですけど」

「なら良い店を私が、紹介してあげよう」

「いや、もう候補は絞っているんで。結構です」


「安心して。危険な仕事ではないから。

女の子の多い店で、接客をしてもらうだけ。お金もその辺の仕事よりもだす。待遇も悪くない」


 それキャバクラのボーイじゃん。

 メンドーなやつに捕まっちまった。

 この店はラーメン屋でよく見かける、カウンター席しかない。


 俺はこの世界にまだ馴染んでない。

 そう思ったアリシアが、俺のために人が少ない穴場の店を教えてくれのだ。

 そしたら言ってしまうと、なぁ……。アリシアには申し訳ないが、ババを引いてしまったみたいだ。


「もう決まっているので、結構です!」

「そこを何とか! 俺たちのお店は、男が足りてないんだ」


 そう言った男の格好は、全身黒づくめだ。

 サングラス、スーツ、ズボン全て黒。人は見た目で決まるとは、よく言ったもんだ。

 するとずっとその話を聞いていたアリシアが口を開いた。


「ねぇ面白そうだし、彼のお店行ってみよう」

「ハッ、何言ってんだ!」


 おいおいそんな事言ったら……


「そこの彼女さんも興味が、あるそうですよ。

 ここは彼氏さんも、今からうちのお店に来てください。今回だけお二人ともタダにします。

 絶対楽しいですし、きっと働きたくなりますよ」


 ホラ! オッサン調子付いちまったよ。あらぬ誤解も受けてるし。


「行こうぜ! ちょっとどんな可愛い子いるか気になるし」


 この人酒飲んで、完全男のスイッチ入ったな。


「食べ終わり次第、すぐ案内しましょう」

「そうね。私もう食べたし、早く凛音も食べろ」


 大人二人で俺を責めるなーー!


 俺は、人生初のキャバクラを、異世界で行くことになった。

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