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3話 高橋凛音(3)


 後日、朝……


 ソニアさんに昨夜二人で決意した旅について、勇気を振り絞り話すことにした。

 アリシアが記憶を取り戻したこと、アリシアも同じ世界から転移してきたことも話した。

 しかし、アリシアさんの要望で転生前が中年の男だったことは伏せた。


 今まで1年間一緒に暮らしてたので、話すとややこしいことが幾つかあるそう。

 俺にはその辺を察してくれと言われ、詳しい理由は語らなかった。


 ソフィアさんは、俺たちの話を聞き終わると、少し間を置いて口を開いた。


「事情はわかった。昨日アリシアの様子が、何かおかしいと思ったけど納得いったわ。でも旅については、賛成しかねる」


 思った通りの反応が返ってきた。

 計画性ゼロだし、年頃の男女二人が一緒に旅する何て言い出したら、百パー裏があると勘ぐるのが普通だ。


「そもそも、凛音君はこっちに来て一日しか経ってないんでしょう。そんなあなたにアリシアを任せられない」


 普通の親はこう言うよな。

 アリシアの中身がオッサンって言ったら、この辺の問題は解決するのに。


「じゃあお母さん、どうしたら行くのを許可してくれるの?」

「そういう問題じゃないって……」

ソニアさんは、ぼそりと呟いた。


 やはり実の娘ではなくとも、1年間娘のように可愛がってきた子を他人に旅させるとか不安だよな。

 アリシアの目的に、明確なゴールはない。

 おそらく一度家を出たら、いつ戻るかはわからない。

 そのことをソニアさんはわかっている。

 だから、余計に躊躇いがあるのだろう。


「じゃあまず凛音くんは、アリシアのように近くの町で働いてみたらどう? 

 働くことで、こっちの世界の常識を勉強できるし、その方が旅に出る時に困ることも少なくなるんじゃない」


「えー、今すぐ行きたいのに」

 アリシアが子供っぽく、言ってみせる。


「そんな目してもダメ。アリシアは1年間こっちで暮らしてるから一人でもやってけると思う。

 だってアリシアはしっかりしてるもの」


 ソニアさんも意外と親バカだな。

 そう思ってると、ソニアさんはアリシアから俺の方を向いてきた。

 真剣な眼差しだった。


「今すぐ戻りたい。早く行動に移さなければ。そう焦燥に駆られてしまう気持ちもわかる。私にもそういう時期があったから。でもまずこの世界の常識は、学んでおいた方が絶対にいい。その方が、凛音くんのためになると思う。それから旅に出ても遅くないよ」


 そう言ったソニアさんの目は、曇り一つなかった。確証なんてない。

 だが、俺を心の底から心配してくれて言っているのが伝わった。


 ソフィアさんの提案は、全くその通りだった。

 俺は焦っていた。けど、俺の気持ちがわかるのは嘘だろ。

 実際に、異世界に転生した経験何てないはずだ。

 そんな経験が無い人が、俺の気持ちが分かるはずがない。


 難癖を付けたって何も始まらないないことは、十分に理解している。


 ここは、大人の意見に従うべきなのだろう。

 俺は、その提案を受け入れることにした。

 この世界に住んでいる人の国民性は、知っておきたい。


「助言ありがとうございます。確かに俺は、急ぎ過ぎてかもしれません。この辺でしばらく働いてから旅に出ることにします」


「そうか。まぁ仕方ないな。そっちの方が凛音君のためか」


 アリシアは、俺の意見に同意してくれた。


「オッケー! それならここにしばらく泊まっても構わないよ。それに最低1ヶ月以上働いて、それでも旅にでたいならアリシアを連れて行ってもいいわ」


 ソニアさんは、俺たちが旅に行く要件を快く了承してくれた。


「とりあえず今日近くの町に仕事を探しに行こうと思います」

「なら私が案内してあげる」

「そうだね。そうしてくれると助かる」


 この世界の仕事を全く知らない俺にとって、アリシアの協力は本当に助かる。


 こうして俺は一旦社会勉強のために、仕事探しから始めることになった。

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