表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

2日目2

 ドライフルーツ屋のおっちゃんの話を聞いたり、薬草屋のオババの話を聞いたりしているうちに時間は過ぎて一旦ログアウトすることになり。

 風呂と夕食を済ませ。鈴木哲也はスズシロになった。




 リアルで夜の七時。ファステスは午前四時で街が動き始める時間だった。

 世界人(NPC)の冒険者が冒険者ギルドに行き、商人が店を開け始め、工房が稼働し始める。

 そんなファステスを、スズシロはぶらついていた。

「図書館はあと四時間後に開くしなあ……」

 図書館で自主勉強をしようと思っていたのだが、ゲーム内であと四時間経たなければ開かないのだ。それまでの暇潰しを、スズシロは探していた。

「そうだ!」

 ここでスズシロは思い出した。

「【召喚魔法】覚えてスライム召喚しよう!」

 チュートリアルで貰った『召喚石:スライム』。そのスライムを召喚しようと、スズシロは街の東の草原へ出た。




   * * *




「よし」


~~~~~

名前:スズシロ

種族:エルフ

特性

【精霊視】【精霊語話者】

【大陸共通語話者】

種族スキル

【精霊魔法】【筋力低下】

スキル

【魔力感知Ⅵ】【魔力操作Ⅵ】

【生活魔法Ⅰ】【体術Ⅲ】

【採取Ⅰ】【召喚魔法Ⅰ】

【空き6枠】

~~~~~


 このゲームは、スキルの【空き枠】の数だけ、好きなスキルを覚えられる仕様になっている。

 【召喚魔法】を覚えたスズシロは、ストレージから『召喚石:スライム』を取り出して使った。


『キュイッ!』

 ポン、とスズシロの目の前に青く透き通った膝程の大きさのあるお饅頭が現れた。同時に視界の左上のHPバーの下にバーが増えている。


《召喚したスライムの名前を決めてください》


「お前は『ベル』だ」

『キュイィ!』

 スライム改めベルは、ピョンピョンと跳ねた。

(この大きさで跳ねると、結構迫力あるね)

 スズシロはそんな感想を抱きつつ、ベルのステータスを確認する。


~~~~~

名前:ベル

種族:スライム

種族スキル

【魔力貯蔵】【不完全擬態】

スキル

【胆力強化Ⅰ】【生命強化Ⅰ】

【消化Ⅰ】【吸収Ⅰ】

~~~~~


 スズシロがもし、DFで戦ったり生産したりしたいプレイヤーだったら、こんな感想を抱いただろう。

「何だこのゴミモンス?」

 唯一有用そうな【魔力貯蔵】は、魔力を貯める『だけ』で引き出せないことが判明しているので、そんな判断になるのだ。


 だがスズシロは、DFに勉強と鍛練と休みに来ているので、こんな感想を抱いた。

「クッションに良さそうな柔らかさだね」

 プニプニとベルを触って、スズシロは微笑していた。

「でも座るのはなんか悪いしなあ」

 スズシロは悩む。このひんやりさとプニプニ感を捨てるのはもったいない。

「ねえベル? 【不完全擬態】で帽子に変身出来たりしない?」

『キュイ!』

 ベルはひと鳴きして、ウニウニと小さくなってからヨジヨジとスズシロの頭の上に登り。

「おお?」

 見事帽子に変身した。

 スズシロは頭の上からベルを取る。ベルは青く透き通ったベレー帽になっていた。

「いいね! これで一緒にいられる!」

 ベルを被って、スズシロは喜んだ。ひんやりする頭が気持ち良い。

「ん?」

 ベルを被ってから、スズシロは己の体内魔力量の上限が増えたのを感じた。視界の左上のHPバーが自分のモノだけになっていることに気付いた。

「もしかして……」


 メニューを操作し、装備一覧を見る。


~~~~~

頭部:ベル(ベレー帽の姿)

腕部:

上半身:村人の服

下半身:村人のズボン

脚部:村人の靴

アクセサリー1:

アクセサリー2:

武器1:

武器2:

補助武器:

~~~~~


「おおー!」

 ベルが装備品扱いになっていた。


 【召喚魔法】で召喚されたモンスターは、『パーティ枠』に入ると攻略サイトには書かれている。

 だが、今のベルは『パーティ枠』ではなく『装備枠』にいる。

 スズシロは【召喚魔法】の扱い方が変わる新発見をしたのだが。


「これでベルも迷子にならないね!」

 装備品は意識しないと外れないので、そっちの方が重要であった。

(ベルの効果『MP上限+50%』『【熱耐性Ⅰ】』だけれど、これは使い道ないから気にしないでおこう)

 攻略勢や検証勢が発狂しそうなことを平気でするスズシロ。ゲームの目的がゲームにないから仕方ないのだろう。




「じゃ、まだ図書館開くまで時間あるし。薬草摘みでもしよっと」

 前のログインで、商店街の雑貨屋から五カッパーで購入した軍手を装備し、一〇〇カッパーで購入した移植ごてを持って、スズシロはファステス東の草原を歩く。狙うは『タンポポの根』だ。

「ここはノンアクティブの『ラビット』しかいないからいいねー」

 ファステス東の草原にいるモンスターは、非攻撃的モンスターのラビットだけだ。大体の異邦人(プレイヤー)はこのフィールドでのレベリングを終えて別のフィールドに行っているので、スズシロは遠慮なくタンポポを見つけては根っこを掘り出す。

「分かって! いたけど! タンポポ! 根っこ! 深い!」

 タンポポの根は、細いゴボウのようなものが真っ直ぐ地下へ伸びていく。

 薬草屋のオババが欲しがっていたからと、スズシロは掘っているのだが。浅くて三〇センチ、深い時には一メートル以上を掘らないといけない『タンポポの根の採取』は重労働だ。

 ましてやそれを移植ごて程度でやるなど。

 そして掘った穴は埋め戻すのがマナーだ。


「つ、疲れたぁ!」

 なんとか五本のタンポポの根と八個のタンポポの花、何枚かのタンポポの葉を手に入れたスズシロは、疲労感と達成感にニンマリする。

「【生活魔法:クリーン】。……おお! 汚れ本当に落ちた!」

 初めて使った【生活魔法】の威力に興奮しつつ、スズシロはファステスの街へ帰り、商店街へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 急に召喚魔法覚えますやん。どうやって覚えたの?
[良い点] 更新乙い [一言] 掘る用の道具は、ちゃんとした物にしよう、そうしよう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ