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キャラクリ~チュートリアル

 鈴木哲也は、自分が『モブ』だと分かっている。

 所詮十把一絡げの背景になるような人間に過ぎないと知っている。

 だからこそ努力してきたし、それなりの結果も出してきた。

 だが一五歳の誕生日、唐突に思った。


「休みが欲しい!」


 努力を中断して休むことの必要性に気付いたのだ。

 かと言って努力を止めるのは怖い。ならどうするか?


「一日の時間を増やせば良い!」


 幸いというべきか、不幸にと言うべきか。新作フルダイブゲーム『Dive to Fantasy』略称DFは『時間四倍加速機能』が標準搭載されており。それを使えば、お高い勉強アプリを使わないでも一日の体感時間を増やせた。

「これをやるしかねえ!」

 世のゲーマーが怒りそうな理由から、鈴木哲也はサービス開始と共にDFをやることにしたのだ。




   * * *




《名前を入力してください》


「『スズシロ』と」


《種族を選んでください》


「『エルフ』で」


 特にゲームを遊ぶ気のない鈴木改めスズシロは、サクサクとキャラクタークリエイトを進めていく。


《アバターデータがあります。コンバートしますか?》


「『いいえ』。『エルフ:タイプ2』のデフォルト1で」

 『タイプ2』アバターは女性アバターだ。女性アバターを選んだのは『その方が一人で甘味処に突撃しやすいから』という理由からだった。その程度の理由なので、デフォルトアバターの髪と目の色を茶色にするだけで、アバター造りは終わった。


《スキルを選んでください》


~~~~~

名前:スズシロ

種族:エルフ

種族スキル

【精霊魔法】【筋力低下】

スキル

【魔力感知Ⅰ】【魔力操作Ⅰ】

【生活魔法Ⅰ】【体術Ⅰ】

【採取Ⅰ】

~~~~~


 種族『エルフ』はなんか凄そうな【精霊魔法】のため。

 【採取】は金策用に。

 【魔力感知】【魔力操作】はリアルに存在しない感覚を補うため。

 【生活魔法】は面白そうだから。

 【体術】は、本来は【料理】が入っていたが。試しにアバターを動かしたところ違和感が凄かったのでチュートリアルAIに尋ねたところ、習得を推奨されたため導入。違和感はマシになった。


《これでよろしいですか?》


「はい」


《では、チュートリアルを始めます》


「お願いします」


 フィールドが青白い電脳空間から草原に変わる。


《まず、採取の基本です。そこら辺にある草を抜いてください》


 スズシロは難しい課題だと思った。草とは言うが、何個か種類があったからだ。

(抜いた草でチュートリアルの内容が変わるとか、止めてくれよ?)

 祈りつつ、イネ科の雑草に紛れていたオオバコを抜く。


《このゲームでは、『破壊不可能属性』の付いていない全てのオブジェクトが採取可能です。また、該当するスキルを持っていれば、リポップ機能のある各種『採取ポイント』からも採取が可能になります》


 採取ポイントにないオブジェクトはリポップしない。スズシロは覚えた。


《次に戦闘の基本です。出現したスライムを倒してください》


 ポン、と青く透き通った、膝までの大きさはあるお饅頭が現れた。

(倒す? ということは()()()()()()()()のか)

 スズシロはそう判断してスライムに近付き。


《ええと、スズシロ様……?》


 スライムを撫でた。

「ふむ」

 ひんやりして気持ちが良い。夏場枕にすると気持ち良さそうだ。スズシロはそう感じた。


《スズシロ様、スライムを倒してください》

「検証中」

 急かすチュートリアルAIに、スズシロは言う。

「『倒す』であって『殺す』でない。つまり『モンスターを倒したという判定は、殺す以外の方法でも発生する』。違う?」


《その通りです!》


 チュートリアルAIは歓喜していた。

《モンスターを無理に『殺す』必要は全くありません! 『倒せば』それで良いのです! 気付かれたあなたには、チュートリアル終了後【スキル枠+2】を追加でプレゼントします!》

「ありがとうございます」

 頭を下げつつ、スズシロは考える。

(ベータテストまでの情報によると、街で冒険者ギルドに登録するとスキル枠が【5枠】解放される。スキル枠はそれで一杯だと書かれていた。

 でもこの様子からすると、隠し要素的にスキル枠を増やせる『ことがある』のか)

 つまり同じことばかりしていないで、この世界で『遊べ』ということだろう。

(このゲームを本格的に遊びたくなった時のために覚えとこう)


《で、スズシロ様はどのようにスライムを倒すのですか?》

「その前にちょっと練習」

「練習、ですか?」

「うん」

 スズシロはチュートリアルAIに頼む。

「一時間経ったら教えて」




 スズシロは、一時間ひたすらスライムを撫でていた。

 だが、チュートリアルAIには見えていた。

(【魔力操作】を鍛えている……?)

 スズシロは、体内や体外の魔力を動かしていたのだ。

(【体術】の件と言い、このプレイヤーの『フルダイブ適性』は高い?)


 チュートリアルAIは『フルダイブ適性』の高いプレイヤーを探し、運営に伝える役目もある。運営としては、ゲームを通じてシステム開発に必須の人材を確保出来るという利点があるからこそ、『Dive to Fantasy』は基本無料なのだ。


 だが、スズシロのフルダイブマシンのデータを読み取ったところ。

(特に脳が活性化したりはしていませんね)

 スズシロのフルダイブ適性は『平凡』そのものであると出た。

(平凡なのに初期から【体術】必須で、【魔力感知・操作】を扱える?)

 それは矛盾している。データ改竄でもしないと起こらない事象だ。

 チュートリアルAIはスズシロのことを運営に『要注意プレイヤー』として報告した。




《スズシロ様。一時間が経過しました》

 チュートリアルAIは頼まれた時間が過ぎたことを告げる。

《スズシロ様……?》

 だが、スズシロの反応はない。

《スズシロ様!》

 肩を揺すってやっとスズシロは反応した。

「……あー、もう一時間経ったの?」

《はい、経ちました》

「なるほどありがとう。じゃ、挑戦してみる」

《挑戦、ですか?》

「うん」

 スズシロは言う。

「スライムを倒す」

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[良い点] 投稿乙い
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