表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホープフルセイビアー  作者: 朝田ひなた
1章
1/5

プロローグ

  二〇〇〇年、元旦

 フランスの占星術師、ノストラダムスの予言は虚しくも外れて、人類史は二十一世紀へ突入した。

 この事に家族や友人と共に騒ぎ散らす人。逆に、これまでに感謝して未来の平和を願った人。表現の仕方や形はそれぞれ異なってはいたが、新たな時代の幕開けに当時の人々は喜んでいたのに間違いはなかった。

 しかし、それも束の間の幸福に過ぎなかった。

 天を指して重なっていた長短の二つの針が、カチッという音でずれたのと同時に、人間世界が大きく変化してしまったのだ。

 原因は何なのか。それは、人間の広大な想像力が作り上げた存在するはずのない世界――〈異世界〉からの訪問者の()()である。


 最初の訪問者の存在が確認されたのは、日本の首都、東京だ。

 渋谷のスクランブル交差点のど真ん中に突如にして現れた巨大な扉、その中か出てきた人間とは異なる種族の者達が、一番最初の訪問者の記録である。

 その後も、ニューヨークやロンドン、北京、パリ、ローマ、シンガポール、ベルリンといった世界上位に位置する東京を含めた八つの主要都市にも同じく扉が出現し、訪問者達が続々と人間世界に歩み入れた。

 その数、扉一つにつきおよそ一万人近くに及ぶ。彼らの種族や容姿は扉ごとに違っていたが、そのほとんどは武器や鎧の類を身につけた兵士ばかり。

 これらを目にした当時の人々は、彼らを〈侵略者〉だと呼んだ。人間の支配、もしくは滅亡を狙ってどこかの別世界から侵入してきた人々だ、と予測していたのだろう。

 しかし残念ながら、それは誤りだった。

 侵略どころか、訪問者達は一切の武力行為すら実行しなかった。代わりに、彼らは人間に一つの要件を求めてきたのだ。


『――お前達人間が求める物は出来る限り提供する。だが、その代わりにお前達の知識や技術を駆使して我々の種族を危機から救ってはくれないだろうか――』


 彼らの要求――いや、切願は多くの人間の心を大きく揺さぶった。

 仲間や友達が増える、世界が広がる、未知なる資源や技術が入手できる、新たな労働力を獲得できる――。

 善と悪の二心を胸に、少々の反論を無理に押し切って、人間側は彼らの願いを受け入れた。

 もちろん、冗談半分で承諾したのではない。きちんとした話し合いをし、双方の意見を書面にまとめた上で、公の場に立って正式に結んでいる。

 その話し合いの場、〈ニューヨーク国際会議〉。公の場に立って、地球上のほとんどの資本国家と九つの種族との間に結ばれた〈多国家共同協力条約〉。

 これらの出来事を経て、人間世界を含めた九つの世界が共に歩み始めた。


 しかし、この時点で既に自分達人間の立場が三角形の底辺にある事に人々は気づき始めた。理由は簡単。魔法や超能力といった訪問者の先天的な固有能力を人間は持っていないからである。

 その絶対的な力を持たない者が持つ者に勝るはずはないし、例えここからいくら努力したところでそれを手に入れる事はできない。そう誰もが思っていた。

 だが、そういった思想を根底からひっくり返すように、あの出来事が起きた。   


 〈日比総合ビルテロ未遂事件〉


 人類解放を目指す狂信者集団がバイオや核兵器のテロを、訪問者達が持つ固有能力のような力を用いた()()の警備員が阻止した事件である。

 この事件が、最初に人間が訪問者のような能力――〈特異的能力(ぺキュリーアビリティ)〉を使用したと確認された事例とされた。

 この出来事を機に、ほんの僅かながら徐々に能力を使える人間が現れ始めてくる。しかし、能力の入手方法や動力源などは不明。まだ、その特異的能力についての謎は多かった。


 しかし、謎が深まっていくにつれて、能力を開花できた人々への期待は大きく積もってゆく。次第に、そんな彼らのことを世間ではこう呼ぶようになった――


 〈希望なる救世主(ホープフルセイビアー)〉と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ