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いじらしいというか

「どうする?」

「早めに事を進めてしまった方が良いですね。ヤマト、欠片を」

「ああ……っとこれだ」


 ヤマトが懐から取り出した欠片をウェグルは受け取った。


「これに関わることが起きたお陰で、我々は出会うことが出来た訳ですが……出来ることなら別の形で会いたかった」


 平和な世で友誼を結びたかったウェグルだったが、叶わない願いだと苦笑した。


「そうだな」


 気遣わしげにキュラスが首肯した。


「さて、行きましょうか。ヤマト、助かりました」


 気持ちを入れ替えるようにウェグルはかぶりを振り、ヤマトヘ視線を向けた。

 次に会うとすれば戦いの最中か或いは全てが終わった後か、それとも今日が最後になってしまうのか、そんな考えがウェグルの脳裏に過ぎる。


「ふっ」


 未だに生への執着があるかのような自身の思考に、ウェグルは思わず笑ってしまった。


「あの人はもう、自分の未来については何も考えていないだろうに……私ときたら」

「公爵?」


 自嘲気味に呟くウェグルを心配してヤマトが声を掛けた。


「なんでもありません。ヤマト、後は自身の国民の為に最善を尽くしなさい」


 影のある様子から一転し、努めて明るく、そして真剣な眼差しでウェグルはヤマトを見た。


「例えそれが私達と敵対することだとしても……良いですね?」

「……承知した」


 一国を纏め上げる長の先達として敬意を表し、ヤマトは膝を着き頭を垂れた。


「クロバ殿、ヤマトを頼みますよ」

「承りました」


 リュウゾウもまた主と同様に膝を着き、頭を垂れた。

 ウェグルは満足げに笑みを浮かべ、キュラスに目配せする。


「失礼する」


 キュラスはヤマトとリュウゾウに向けて声を掛けると、転移魔術でウェグルを連れてその場を後にした。









「行ってしまわれましたね」


 ウェグルとキュラスが去った部屋を見回し、リュウゾウは呟いた。


「ああ」

「しかし、どうして欠片をこの国に預けたのでしょうか?」


 ヤマトから話を聞いて以降、ずっと感じていた疑問をリュウゾウは主に問うた。


「勇者が預けたそうだ。それを知った公爵、当時はリーヴァスの王だったウェグル様が当時の皇帝に事情を伝え、時が来れば渡すという約束を結んだ」

「よく当時の皇帝陛下は勇者が預けた欠片を渡す約束を結びましたね」

「勇者もある程度事情を知っていたようでな、事前にアマノユウジを知る者が欲すれば渡すよう伝えたそうだ」

「……事情を知っていた? 勇者はアマノユウジと関わりが?」


 リュウゾウは驚き、目を見開いた。


「ああ。まだ勇者ではなく、ただの少女だった頃に生まれ故郷が襲われたそうだ。その時に救ったのが彼らしい」

「なるほど。ではそれ以降から共に行動を?」

「いや。それが当時の聖女による神託まで行動が不明だ。恐らく、信頼できる者に保護されていたんだろう」

「とすると、神託を受けるまでは無名の、本当にただの少女だったと?」

「そうなるな」

「それはなんと酷な……」


 幼い頃から戦うことを身に沁みている者ではなく、ただの少女を勇者という存在。つまり当時の最上位の力を持つ存在へとした女神の神意がリュウゾウは理解出来なかった。しかし、自身を救った恩人を倒すことになってしまった勇者がただただ不憫でならなかった。


「欠片についてはもう良いか?」

「はい」


 そういえば欠片の話だったなと思い返し、リュウゾウはヤマトへと目を向けた。


「やるべきだと考えていることが一つある」

「それは一体?」


 恐らく自分がやることになるだろうと考えつつ、リュウゾウはヤマトの言葉を待った。


「勇者を探せ」

「はい?」

「なんだ?」

「いえ、なんでもありません」


 気でも狂ったのかと主の頭の心配をしたくなったリュウゾウだが、どうにか堪えた。


「まあいい。とにかく探せ、勇者は未だに場所が不明の欠片と共に眠っている筈だ」

「実力はともかく、ただの人間では?」

「事態を予期して自らに封印を施し、今も生きている筈だ。この国に欠片を渡した後、彼女はどれほど月日が経とうとも恩人を救い、全てを終わらせなければならないと言い残したらしい」

「なんとまあ、いじらしいというか。アマノユウジは彼女の初恋の男だったんですかね?」


 冗談めかしてリュウゾウは口に出したが、存外そう間違ってはいないのではないだろうかと頭の片隅で考えた。


「可能性としてはありそうだな。最後の欠片についてはあの方達も探しているだろうが、勇者も一緒に眠っていることは知らないだろう。恐らく、手に入るだけの欠片を集めたのちにフリーシアを襲った者を打ち倒す筈だろうからな。それまでは出来るだけ有益な情報を集めておきたい。頼んだぞ?」

「承知しました」


 自分が探したところで殆ど意味は無いだろうと思いつつ、リュウゾウは主に恭しく頭を下げた。


「さて、どうしたものか」


 部屋を退出し、長い廊下を歩きながら思案するがリュウゾウには勇者の場所など検討もつかなかった。

 行き交う侍女に手を振りつつ長い廊下を歩き終わり、城を出た時にリュウゾウに天啓が降りた。

 

「仮にアマノユウジが初恋の相手だとすれば、彼女は思い出の地で眠っているのでは……?」


 しかし、その思い出の地が皆目検討もつかないことに思い至りリュウゾウは肩を落とした。

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