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まあ、確かに

「ユウジさん?どういう状況ですか?」


 馬車の近くに着くと、俺の様子を見たサティナが笑みを浮かべているものの、その背後にただならぬ雰囲気を醸し出しながら首を傾げた。


「えーっと……」


 下手な答えを言おうものなら間違いなく怒られるだろう。どう言い繕うかと考えていると、


「サティナ、まだ体調が優れない彼を支えているだけだよ」


 サティナには見えないようにジェリカさんがアイコンタクトをしてきた。


「そうなんだよ、サティナ」

「それにしては、随分距離が近い気がしますが?」


 疑いの目を向けてくるサティナだったが「彼を支えるのにこれくらいはしないといけないんだ」というジェリカさんの意見で渋々納得すると、「私はこっちですので」と馬車に乗り込んでいった。


「じゃあ、中に入ろうか。私が手を貸そう」


 サティナが乗ったのとは別の馬車へと乗り込んだジェリカさんの手を借り、馬車に乗り込む。


「もしかして、こっちは三人だけですか?」

「ああ、そうだよ。ここに座ってくれるかい?」

「はい」


 ジェリカさんに促された場所に座ると、俺を挟むようにしてジェリカさんとレイラさんが隣に腰掛けた。


「わざわざ隣に来る必要あります?」

「サティナを上手く誤魔化したんだ、良いだろう?」


 ジェリカさんが肩が触れる程に密着し、耳元で囁く。


「中で何をしたって、外からは分からないんですから良いじゃないですか」


 反対側に座るレイラさんもまた耳元に顔を寄せ、あろうことか胸の果実を当ててくる。


「お二人共、くすぐったいですって……」


 腕に胸が当たることよりも、耳元で囁かれたことで身を捩った俺を見て二人はクスクスと笑った。

 

「レイラ、誘惑するのは狡いんじゃないかい?」

「持てる武器を最大限に活用するのは当然です」


 さらに武器を活かすつもりなのか、レイラさんが俺の腕を自らに強く押し当て、俺の腕の殆どの部分が柔らかいものに飲み込んでしまう。


「今さらですけど、お二人もルーヴァンス公のところヘ向かうんですか?」


 言いようのない感触を内心で味わいながらも、俺は至極冷静に疑問に思ったことを口にした。


「そうだよ。私とレイラは従姉弟なんだけどね。一応、私達はリーヴァスの王族と血の繋がりがあるんだ。かなり離れてはいるけれど、祖父のような存在に会いに行くのは不自然ではないだろう?」

「孫、ということですか」

「直接の祖父ではないけど、随分と可愛がって貰っているからね」

 

 ジェリカさんは俺の肩に頭を乗せ、「久しぶりに会うから楽しみだ」と嬉しそうに呟いた。


「ていうかレイラさん、王族や貴族じゃないとか言ってましたけど、レイラさん自身が結構な立場なんじゃないですか?」

「だからこそ、そういう立場じゃない生活がしたいんですよ!」

「苦労すると思うけどなあ……」


 その後は暫く馬車に揺られながら、美女の間に挟まれつつ到着を待った。






「着いたみたいだね、エスコートをお願いできるかい?」

「わかりました」


 馬車を降りて女性二人に手を貸し、屋敷の入り口でレックスさん達と別れ、公爵家の執事の案内の元で屋敷へと入り、ルーヴァンス公の私室へと案内された。

 

「お客様がお着きになりました」


 そう言ってノックもせずにドアを開けた執事に驚いていると、間髪入れずに俺の横を二人の影が通り過ぎた。


「「お祖父様、お久しぶりです」」

「よく来たね、ジェリカ、レイラ」


 部屋の主は二人と同じ金の髪を持ち、簡素な服に身を包んだ男性だった。


「サティナとユリナ、ラティナにミオンも良く来たね」


 ルーヴァンス公は所々にある顔のしわが目立つものの、想像よりも見た目は若く、ハキハキとした声で迎えた。


「そして、君がユウジ殿だね。良く来てくれた」


 嬉しそうにルーヴァンス公は笑うと、ソファに掛けるよう促した。


「ちゃんとした自己紹介がまだだったね。ウェグル・ルーヴァンスだ。よろしく」

「アマノユウジです」


 対面に座るルーヴァンス公から差し出された手を握り返した時、どこか懐かしそうにルーヴァンス公は目を細めた。

 なぜそんな顔を見せたのか不思議だったが、挨拶もそこそこにルーヴァンス公の両隣に座る孫二人が「話がある」と言った時には元に戻っていた。


「お祖父様、実は私達二人で一生を添い遂げたいと考える人が出来ました」


 ジェリカさんの発言に内心で驚きながらも、俺は状況を見守ることにした。


「それは良かった。相手は誰なんだい?」

「彼です」


 大方の予想通り、ジェリカさんが手を向けたのは俺だった。


「ユウジさん?」

「サティナ、落ち着いてくれ」


 かなりの圧を発するサティナを宥めつつ、ちらりとルーヴァンス公の様子を見れば、特に驚いた様子もなくサティナの様子を見てか笑っていた。


「落ち着く?会ったその日に結婚を申し込まれる人が居たら流石に耳を疑いますよね?」

「あー、貴族社会だと良く有りそうだけど……?」

「それでも異常です!」

「まあ、確かに」


 少々ヒートアップしていてサティナは気づいていないだろうが、ルーヴァンス公は俺と二人きりで話がしたいからこそ、ジェリカさん達を使うという回りくどい方法をとったではないだろうか。


「ユウジ殿と二人で話をしたい。席を外してくれるかい?」


 サティナがユリナさんに宥められて落ち着きを取り戻したタイミングで、ルーヴァンス公は口を開いた。

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