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しぶとい奴め

 時は少し遡り、人型が王都中の全ての魔物を取り込んだ後。

 地上で合流を果たしたグレゴリオとグラディスは人型の対処と参戦した一人の男について話していた。


「これからどうなると考えておる?」

「奴の行動次第では王都が壊滅するかと、それに……」


 グラディスが言葉尻を濁し、人型よりもさらに上へと目を向けた。


「王都ではレビンが戦いづらいか」

「はい」

「ふむ、雷雲からの攻撃は無理か。となると、直接やるしかないかもしくは……」


 グレゴリオもまた上空で浮かぶ人型の更に上へと目を向けると、雷雲から雷を全身に纏った金髪金眼の男が現れた。

 男の名はレビン・ヴォルフナー、フリーシア王国から遥か南に位置するウェスティリア王国の名門ヴォルフナー伯爵家の次期当主であり魔法師、そして世界でも最強格の実力を持つ男だ。

 レビンは人型の元へ一瞬で肉迫するが、人型は危なげなく躱すか姿形を変えることで対処していく。

 それを見たレビンが人型の真下に移動し、雷雲に向けて何十本もの雷を放つものの人型は網目状に姿を変えてそれら全てを躱してしまう。


「アレを躱すか……恐らく自分にとって危険な攻撃は躱し、そうではない攻撃は受け止めるといったところかのう」


 レビンと人型の攻防を見てグレゴリオはそう判断した。


「そうですね。しかし、向こうも特にこれといった行動をしないことが気になります」

「ふむ……」


 レビンはさらに雷を放つが、人型は変形することなくそれを躱すと四本の腕を肥大化させ、王都へ殴りかかった。

 瞬時に状況を察したレビンが特大の雷を放つが空を切り、グレゴリオとグラディスはなんとか攻撃地点に向かおうと脚を進めるが間に合わない。

 崩壊する王都の姿を幻視した三人だったが、突如王都と人型の拳との間に大規模防護魔術アイギスが張られ、攻撃を阻んだ。


「これは、殿下と父上達か!」


 襲撃によって焦燥感に駆られていた中、どうにか冷静さを取り戻したアイザックの指示で貴族達が発動した《アイギス》だが、不十分な状態で発動した為に強度が足らずピキピキとひび割れていってしまう。

 そんな中、突如起きた出来事に動きが止まった人型の隙を狙い、レビンが幾重もの雷を放つ。

 人型は攻撃を止めて《アイギス》から離れ、変形することで雷撃の大半を躱すものの避けきれず、数本の雷を浴び僅かに動きを止めた。

 それを狙いレビンは更に畳み掛けるように特大の雷を放つ。眩い程の雷光が雷雲によって暗くなった王都を照らし、轟音が鳴り響いた。


「なっ!?」

 

 光が消えた後、傷ついた人型の姿を思い浮かべていたグラディスの目に二体の人型の姿が写った。

 二体の人型は同じ形ながら、片方は傷一つなく片方はプスプスと煙を上げていた。


「分離して片方に受けさせたのか!」


 そう、人型は一瞬のうちに自らの体を分け片方に雷撃を受けさせた。しかし、雷撃を受けた人型はレビンの雷撃に流石に耐えれなかったのかぐらりと身を崩す。


「じゃがこれで少しはマシ、に……ならんみたいじゃな」


 レビンは雷撃も反動で対処出来ないものの状況は好転したと思ったグレゴリオだったが、身を崩した人型はそのまま墜落せずに即座に無事な人型に吸収されてしまった。


「しぶとい奴め!」


 悪態をついたところで人型に影響などなく。


「KyuRyuRyuRyuuuuuuuuuuuuu!」


 人型は攻撃を押し付けた方のダメージなどなかったのか雷鳴を押し退けて耳を塞ぎたくなるような奇声を上げ、全身から触手を出し、それを王都全体へと向けた。

 ひびだらけの《アイギス》が触手を阻むが、破片を撒き散らし空に消えながら少しずつ崩壊していってしまう。


「不味いのう……空いた隙間を狙い奴へ仕掛けるか?」


 額から汗を垂らしながらグレゴリオは傍らの男に問うた。


「叩き落とされるのがオチかと。せめて動きを封じることさえ出来れば、レビンの最大火力で対処出来る筈ですが……」

「無理に発動して外しでもすれば、不完全な《アイギス》を突破してレビンの手で王都は壊滅じゃからな」


(こんな中、オリヴィア達は何をやっておるんじゃ?王都が壊滅するのは都合が悪いじゃろうに……)

 ここに居ない孫のような存在とその従者の行方についてグレゴリオが考えている間にも、人型はさらに触手を増やし《アイギス》を攻めたてる。


「援軍はまだか!」


 グラディスは魔力を解放し《アイギス》の空いた穴の修復を始めながら叫んだ。

(何がフリーシア最強だ。飛ぶ相手に対して余りにも無力ではないか)

 自分の無力さにグラディスは呆れた。

 反動から復帰したレビンが雷撃を放つものの、触手はものともせずに苛烈な攻撃を行い続けた。


「自らの身よりも王都を壊滅させる方をとったか!」


 グレゴリオが人型の真意に気づいた時には既に遅く、雷鳴のさなかガラスの砕けるような音王都に響き《アイギス》崩壊した。

 瞬間、ある者は己の実力不足を呪い、またある者は己の心の未熟さを呪った。

 もっと自分が強ければと、多くの者が後悔した。

 殆どの者達が後悔の念を抱いている中、レビンは確実に人型を仕留める為に王都を壊滅させてしまうことも視野に最大火力の魔法を行おうとしたが、動きを止めてしまった。

 なぜなら今まさに《アイギス》が砕け、王都を壊滅させるには格好の状況にも関わらず人型が動きを止めたからだ。

 これから触手で王都を蹂躙しようという躍動感はそのままにまるで時が止まったかのような人型の静止。

 これを見たレビンは好機だと判断し、即座に持てる最大火力の魔法を放った。

 空を覆っていた雷雲が渦を巻きながら一瞬にして収束し、直後に雷の柱が人型に向けて落ちた。

 王都中を雷光が覆い、一瞬の無音の後に轟音がフリーシア王国中に響き、人型は断末魔を上げることなくその身を塵へと変えた。

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