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壊せばわかるか

 孫であるオリヴィアとその従者のリアと別れた後、グレゴリオは周囲に集まっていた騎士や冒険者に指示を出し、王都北部から侵入して王城へと侵攻する異種乱れた魔物の群れをどうにか抑えていた。

 しかし、突如として王都上空に現れた魔術陣に動揺が広がったことと、そこから現れた魔物達によって挟撃される形となり窮地となった。

(魔術陣は時期に破壊される筈じゃ……部隊を二つに分けるか、わしがどちらかを受け持つか……しかしここは)


「後ろは振り返らず、先陣を切って包囲を振り払う方が良いかのう」


 着ていた上衣を全て脱ぎ捨て、グレゴリオは半裸になった。

 齢七十を超えた身でありながらその肉体は分厚い筋肉で覆われ、傍でその様子を見ていた騎士は突然なぜ脱ぎ出すのかという疑問と共に、その肉体美に圧倒された。


「さて、狩りの時間じゃ」


 脇腹から上腕までを髪と同じ白い毛で覆うように獣化し、頬辺りにも毛を生やしながらグレゴリオは仁王立ちした。

 突然起こった元皇帝であり、一時的な指揮官でもある老人の脱衣と変化のショーにその場に居た者達の殆どは困惑したが、一部のファシュトリアの英雄の強さと戦いを知る者達は皆、獰猛な笑みを浮かべていた。


「まずは正面突破!北門から一度王都を出たのち反転!先陣はわしが切る!あとに続けええええええええ!」


 咆哮にも聞こえるような声量で指示を出し、グレゴリオは魔物の群れへと突っ込んだ。


「邪魔じゃ、失せんか」


 その一言と共にグレゴリオは進行方向だけに飽き足らず周囲の魔物を吹き飛ばしながら北門への太い一本の道を作った。


「俺達も続くぞ!」


 ベテランの冒険者がそう声を張り上げながらグレゴリオが作った道を駆け、突然の事態に固まっていた他の者達もあとに続いた。皆が北門前で仁王立ちするグレゴリオの元に行き着くまでの間、指揮官などがいない魔物の群れは一瞬のうちに一人の老人によって仲間が吹き飛ばされるという事態に動きを止めていた。


「そのまま王城に向けて侵攻せずにそのまま立ち尽くす辺り、この場に事態を引き起こした賊は居らんか」


 無論、侵攻されるような事態になった場合の対策も考えていたグレゴリオだが、そんなことはおくびにも出さない。

 グレゴリオの眼前で動きを止めている魔物達、王都リーファへと襲撃してきた魔物は全て人を捕食対象とする魔物達ばかりだった。

(指揮官が居ないのならば、王城へと向かわずに目の前に居る食い物であるわしらを狙うじゃろうな……ん?)

 王都上空へとグレゴリオが目を向ければ、黒い生物が魔術陣から這い出て来ようしているのが見えた。


「出て来る前に壊せればアレは引っ込むじゃろうが……」


(わしは遠距離攻撃はからっきしじゃからのう……頼むぞ、ジョセフ)

 魔術陣の対処を心の中でジョセフに任せ、グレゴリオは「ところで」と傍らで片膝をつき、エルフに比べれば短いが尖った耳を持ち統一された衣装を着た者達へと目を向けた。


「何用じゃ?援軍にしては数が少なく、早過ぎる気がするが…?」

「はっ!我々はリーヴァスの者です。ルーヴァンス公の命によりフリーシアへと向かっておりました」


 胸に着けた意匠から代表して話して来た男は責任者だろうと当たりをつけつつ、敵が変化した存在ではないことを嗅覚で確かめながらグレゴリオは話の内容からあることを思い出した。


「そういえばジョセフが言っておったのう。確かルーヴァンス公が小僧に会いたいとかで、それと同時に短剣を受け取りたいんじゃったか」


 ぞろぞろと動き始めた魔物達を見据えながら、グレゴリオはどう指示を出そうかと考えつつ責任者の男ヘ向けて確認をとった。


「はい、そのように命を受けています。しかし、今はこのような事態、是非私達をお使いください」

「そうか、わしが言うのも変なところじゃが協力感謝する」


 リーヴァスの者達に感謝を伝え、グレゴリオは集まった中から攻撃魔術が使える者に魔物の先頭集団に向けて魔術を放つよう指示を出した。

(どうやら無事に魔術陣は破壊出来たようじゃのう)

 王都上空に魔術陣が消えていることに安堵しながら魔術を放たれた魔物達へと目を向ければ、魔術がぶつかったことで先頭の魔物達の多くが息絶えるか、重症を負い動きが止まり、後ろに居た魔物達が突然のことで躓き、さらに後ろからも来ることで魔物の渋滞が起きていった。

 そんな状況でもなんとか魔物の壁を這い上がり、こちら側へと向かって来ようとする魔物に向けて追加の魔術を放つようグレゴリオは指示を出そうとするが、突如王都の至るところから爆発音が断続的に起こったことで指示を出すのを止めてしまった。

 グレゴリオは一時的に思考に空白が生じてしまうが、直ぐに立ち直り王都を注視した。陽炎が見え、爆発によって王都中に火が着いたのが確認出来た。


「火事はちと不味いのう……まずは目の前の敵を優先じゃ!魔術を放てええええ!」


 火事という事態にグレゴリオ自身悪態をつきたいところだったが、周りで動揺する者達や自身に発破を掛ける目的で声を張り指示を出した。

 グレゴリオの指示によって動揺は消え、魔術が魔物の壁や幸いにも殆ど近づいて来ていない壁を乗り越えた魔物達へと放たれていった。

 次々と放たれていく魔術によって魔物の壁へと叩きつけられたり新たな壁が出来上がったりしていく、そんな中でも運良く弾幕から逃れた魔物がグレゴリオ達の方へと向かって来た。


「私にお任せを」


 その一言と共にグレゴリオの横に居たリーヴァスの責任者の男が前へと躍り出た。

 瞬時に腰に吊るした剣を抜き放ち、男は華麗な剣捌きで魔物の急所を的確に斬り裂いていった。


「ほう、見事じゃな」


 男の剣捌きに関心しつつ、グレゴリオは魔物が壁に阻まれ向かって来る数が減ってきたのを確認すると魔術以外での攻撃の許可を出した。

 待ってましたとばかりにわらわらと魔物の方へと向かっていく騎士や冒険者達、意図的に魔物が出て来る数を絞らせた為に状況は優勢に傾いていくだろうと思案しながらグレゴリオは後方で見守っていた。

(本気で王都を陥落させるつもりならば、もう一度何かしてきそうじゃが……火事もかなりの範囲で広がっているじゃろうし、かなり不味いのう)

 

「しかし、なんじゃあれは?」


 魔物の壁を飛び越え、ぱっと見は一体の黒い魔道人形に見える存在がグレゴリオ達の前に現れた。

(魔道人形…?しかしどこか生物らしき雰囲気も感じるが…)


「まあ、壊せばわかるか」


 グレゴリオは思考を放棄し、一瞬のうちに魔道人形らしき物体の元へと肉迫した。

 グレゴリオが近づいたことにそれは僅かに反応を見せたが、その前にぐしゃりと音を立てつつ地面に叩きつけられた。

(それ程強くはないが……む?)

 グレゴリオの攻撃によってバラバラになっていた元魔道人形らしき物体だが、突如として集束し黒い塊へと変化していった。


「なんじゃこれは…」


 予想だにしなかった事態に思わずグレゴリオは距離を取りながら、黒い塊へと変貌したものを注視した。

 黒塊は徐々に宙へ浮き、伸縮を繰り返し始めた。

 黒塊の伸縮は徐々に大きくなっていくと魔物の壁へと近づいていき、動かなくなった魔物を吸収し始めた。

 取り込んだ魔物が増える程に黒塊は大きくなり、触手のようなものを生やして取り込む魔物を増やしていった。


「人を取り込む様子はないのう、魔物というよりは魔石を取り込んでいるのか」


 グレゴリオは観察しながら黒塊に近づき、拳撃を浴びせるが形状を変化させて黒塊は攻撃を躱した。


「これは……魔術を放て!これを破壊するんじゃ!」


 触手が取り込む対象が生きている魔物にまで及んだのを確認すると、グレゴリオは即座に指示を出した。

 黒塊に向けてありとあらゆる魔術が放たれていくが、多少煤けたり表面に霜が出来たりといった具合で殆ど効いた様子は無かった。

 魔術によって黒塊の動きが阻害されることはなく、黒塊は周囲の魔物の吸収を加速させていった。


「認識出来ん速度で攻撃すれば……」


 先程よりも速度を増し、グレゴリオは殆ど体当たりに近い攻撃を行うが見事に避けられてしまった。

(わしの攻撃は避けて魔術は避けぬことから、攻撃への対処に一定以上の基準を設けておるのか。避けられぬ程の速度で攻撃すれば良いんじゃろうが、かなり手強いのう)

 得られた情報から黒塊について推測を立てたグレゴリオだが、これといった打開策が思いつかないまま辺りの魔物は吸収され尽くされてしまった。


「魔物の掃除はありがたいが、これだけでは終わらんじゃろうな……」


 吸収し尽くした黒塊は高度を上げ王都上空へと移動し始め、グレゴリオの目に王都上空に黒塊が三つ浮かび上がっていつのが見えた。

 三つの黒塊は王都上空で合わさり一つとなり、巨大な球体へと変化した。

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