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多過ぎません?

「ユウジさん、服まで買って頂いてありがとうございます」


 店員さんに袋を渡してから、お金の使い道について陛下とジジイに相談していると、ユリナさんが礼を言ってきた。


「いえいえ。貰ったお金の殆どは元々、あの時にいたみんなが貰う筈だったお金ですから」

「...それでも、頂いたことには変わりません。あの服は大事にしますね」


 俺の言葉にユリナさんは首を横に振った後、微笑みながら言った。


「ところで、何を話されていたんですか?」


 俺が何かを言う前に、俺の隣に置かれていた空き椅子にユリナさんは腰掛けながら言った。


「結構な金額を貰ったのは良いんですが、どんなふうに使っていくかの相談をしていたんです」


 王城暮らしのために家賃や食費などにお金を使うことがない俺にとっては趣味を通してお金を使うことや、以前にマリアから聞いていた孤児院への寄付くらいしか思い浮かばなかった。

 しかし、元の世界ではゲームや本などの趣味にお金をつぎ込んでいた俺は、まだ短い間しか暮らしていないこの世界ではこれといった趣味を見つけられておらず、孤児院への寄付に関しては相場等が分からない。

 そのため、この世界ではどうお金を使えば良いかを陛下とジジイに訊いていたのだ。


「実際は結構な金額どころじゃないけどな」

「え?」

「袋に入ってただけで金貨百枚だぞ?」

「は?」


 金貨一枚がこの世界で言う十万ルティ、一ルティが大体一円。つまり袋の中には約一千万円入っていたことになる。

 重いとは思っていたが、まさかそこまでの数が入っているとは思わなかった。


「それで、預けているお前さんの金も含めると全部で一億ルティだ」

「...多過ぎません?」

「お前さんが居たおかげでスタンピードが早急に片付いたんだ。これぐらい貰って当然だ」


 確かに俺が居なければスタンピードの原因となった魔道具は破壊出来ず、犠牲者が多く出ていたのは間違いない。感謝の意や魔物の討伐報酬等、諸々を含めて俺は一億ルティを受け取ることになったのだろう。


「それと」

「まだあるんですか?」

「ユーフォレナの部屋でナイフがあっただろう?あれは結局回収することになってな。そしてそれをユーフォレナの末裔が買い取りたいそうだ」

「末裔...」


 生き延びたという第三王女の子孫ことだろう。


「何でも、彼らにとってはとても大事な物らしくてな」

「そうなんですね。あのナイフが俺の所有になっていたことが驚きですけど、構わないですよ。持つべき人の元へ行くわけですから」

「そうか、向こうにも伝えておく。これで話し忘れていたことは全部無くなったな」


 そう言って陛下はいつの間にか用意されていたコーヒーを口にした。


「一億、しかもさらに増えるのか...どうやって金を使う?いっそのこと、王城暮らしを止めるか?」

「ユウジさん、それは流石に...」

「小僧が王城暮らしを止めるのは無理じゃろうなあ。屋敷を建て、そこに護衛を常駐させるぐらいの金がないとのう」


 もっと金を持たないと俺は自分の家を持つことは許されないらしい。


「言っておくが、宿に泊まるのも小僧一人では駄目じゃからな?」


 家が駄目なら宿なら良いだろうと考えていたが、先んじて言われてしまった。


「...もしかして、俺ってかなり行動を制限されてます?」

「そうじゃ。たとえ王都の中であろうと気ままに一人で散歩なんぞ、これっぽっちも出来んぞ?」


 器用に片眉を上げながら、ジジイが言った。


「過去の異世界人のせいか...」

「それ以外にもあるがのう」


 しみじみとジジイが呟いた。


「それ以外ですか?」

「お主の体質はほぼ不死じゃからのう、それを面白がって小僧の意思など関係なく人体実験をしでかしそうな女が居るんじゃ」

「じい様も俺に対して人体実験に近いことをしましたけどね」

「...」


 俺の言葉にジジイはなんとも言えない顔をした。


「とりあえず、その女に捕まれば俺は酷い目に合わされるわけか」

「ユウジさん、知らない女の人にはついていっては駄目ですよ?」


 俺がどんな目に合わされるのかを想像したのか、ユリナさんは心配そうに言った。


「なるべく一人にならないようにします」


 俺は出来るだけ心配は掛けないようにしようと思った。

 その後、手に入れたお金に関してどうするのかという相談はユリナさん以外の女性陣による感謝の言葉の嵐によって有耶無耶になってしまった。

 そして調度良い時間だからと食事に向かうことになり、改めて御者に扮した陛下が手綱を握り、ジジイは馬車の屋根に乗って行く予定を立てていたレストランへと向かうことになった。


「来れなかったラナとミオンさん、色々と関わった人達に何か贈りたいな」


 馬車に揺られながら、俺はポツリと呟いた。


「でしたら、昼食後に行きましょう。選ぶのをお手伝いさせてください」


 サティナがそう言って申し出てくれた。


「ありがとう。どんなのを選んだら良いか分からないから助かる」


 そんな会話を馬車の中でするうち、陛下が良く通うレストランに到着した。

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