ほれっ
「お待たせ」
そう言って彼女達の元へ着くと、彼女達の前にはそれぞれ五着の服が吊るされていた。
「ユウジさん、すみません。もっと絞り込みたかったのですがこれ以上絞り込めなくて...」
申し訳なさそうにサティナは言った。
「私達で意見を出し合ったんですけど、どれも良くて...かといって全てを買うのも違う気がして...」
そうマリアが続き、選ぶのに難航していることを教えてくれた。
「そしてここはもう、少し数は多いですがアマノ様に私達それぞれに来て欲しい物を選んで頂いた方が良いと思い、お呼びしました」
そして最後にオリヴィアさんが俺を呼んだ経緯を説明した。
「まあ、元々俺に服を選んで貰うって言ってたからな。良い選択が出来るかは分からないけど...やらせてもらうよ」
「大丈夫です。アマノ様が私に着せたい物を選んで頂ければそれで構いません。なんでしたら、私が絞り込んだ服以外でも構いませんよ?」
俺の手を取りながら、オリヴィアさんは蠱惑的に笑った。
「じゃあ、オリヴィアさんはアレで」
俺は彼女の色香に呑まれないよう、彼女が選んでいた服の中からパッと目についた、装飾など一切ないロングワンピースを指差した。
「これですか?」
俺から離れ、オリヴィアさんは俺が指差したロングワンピースを手に取った。
「なるほどなるほど。私ならば素材が良いからシンプルなものの方が映える、というわけですね?」
「あ、ああ」
彼女の色香から逃れる為に目についた服を指しただけとは言えず、俺は頷くことしか出来なかった。
しかし、結果的に整った容姿とスタイルの良さ、そして皇女ならではの品があればシンプルな服の方が彼女には似合うと納得することにした。
「それだと生地は...ありがとうございますアマノ様。早速仕立てて貰って来ます、楽しみにしていて下さいね」
そう言い残し、彼女は店員の元へと向かった。
「行ってしまった」
「ユウジさん」
マリアに呼ばれ、振り返ればマリアとサティナの姿があった。
「どうした?」
「すみません、ユウジさん。買う服が決まりました」
申し訳なさそうにマリアが言った。
マリアの手には布で隠されているが、彼女が選んだと思われる服があった。
「そうか、どの服にしたんだ?」
隠している為に答えてくれないと思いつつも、俺はマリアに尋ねた。
「ふふっ。完成して、着た姿を見せるまでは内緒です。」
隠している服を抱きかかえ、いたずらっぽく人差し指を口元にやりながらマリアは言った。
内緒ならば仕方ないと俺が納得していると、
「あの、ユウジさん。私も決まりまして...お呼びしたのにすみません」
サティナも服が決まったと申し訳なさそうに伝えてきた。
「サティナも?」
「はい。そして私も、マリアのように着た姿をお見せするまでは内緒です」
マリアと目配せして、サティナは答えた。
「そうか、まあ決まったのなら良かったよ」
「ありがとうございます」
「仕立てて貰うんだろ?二人共、行って来ていいぞ」
そうサティナとマリアを促すと、
「では、行ってきます。行きましょう、マリア」
「はい、サティナ姉さま」
ペコリと頭を下げ、姉妹のような二人は店員の元へと向かった。
二人を見送り、手持ち無沙汰になった俺は陛下とジジイの元へ戻った。
「戻りました」
「おう。見ていて面白かったぞ?」
ニヤニヤと笑いながら、陛下が声を掛けてきた。
「そうですか?特にこれといったことはなかったと思いますけど」
女性陣に親しくさせて貰ってるのは感じているが、外から見ていて面白いようなことはなかったと思うのだが。
「ふむ。まあ小僧がそう言うのであれば、そういうことにしておくかのう」
「意味深に口角を上げるの止めて下さいよ...特に変なことはなかったじゃないですか」
未だに笑みを浮かべる二人を見ながら、俺は席に座った。
「まあしかし、予想していたよりは早く終わりましたな」
「そうじゃのう。ふむ、そういえば...ほれっ」
ジジイが胸元を探ると、どこに入っていたのか袋に入った何か取り出し、それを俺に投げ渡してきた。
「おっと...なんですか、これ?」
俺はずっしりと重いそれをテーブルに置き、ジジイに尋ねた。
「渡しそびれていた、お主の金じゃ」
「俺、何かしましたっけ?」
「オークとか色々、スタンピードの時に倒しただろ?その分の金だ。グレゴリオ殿に預けていたんだよ。ちゃんと受け取って、しっかり使って経済を回せよ?」
陛下の説明で納得がいった。確かにオーク等を色々と倒したのは覚えている。報奨金のようなものだろう。
「ありがたく頂戴します。けど、貰うには多いような気がするんですが...」
「お前さんと一緒にユーフォレナに行った面子は要らないって言ったからな。その分がお前さんに渡されたわけだ。言っとくが、その袋に入ってるのが全てじゃないからな?残りの金は銀行に預けてある」
「これ以上あるのか...」
どうやら、スタンピードの一件で殆どが共に向かった仲間達のおかげによるものだが、俺はそこそこ纏まった金を得ることが出来たらしい。
因みにこの世界では銀行が存在する。元の世界のように複数の銀行が存在したりせず、一つの組織が預金や融資などを行っているようだ。
「早速使うか...」
俺はコーヒーを淹れに来てくれた店員さんに幾つか聞いた後、袋毎お金を渡した。
「えっと...少々お待ちください」
袋の重さに顔を引きつらせながら、オーナーらしき人物の元へと店員さんは向かった。
「喜んでくれるかなあ」
「喜びはするだろうが、特別感はないだろうなあ...」
俺の独り言に対し、陛下はそんな感想を呟いた。




