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ふぇ?

 女性陣の元へ着くと、サティナとユリナさんの姿もあった。


「おはようございます、ユウジさん」

「おはよう、サティナ。それにユリナさんも」


 ところどころに花の意匠をあしらった淡いブルーのワンピースを着た侯爵令嬢と、紺のトップスと白のスキニーデニムを着た女性騎士に挨拶を返した。


「ラナとミオンさんはどうしたんだ?」

「二人は馬車の人数の関係で留守番です」

「サティナ様以外に誰が行くかで少し揉めました...」


 ユリナさんが苦笑いを浮かべながら言った。深く聞く気はないが、決める時に色々とあったのだろう。


「ご苦労さまです」

「ありがとうございます」

「ユリナ、少し良いですか?」

「ええ、分かりました。ユウジさん、失礼します」


 リアさんに声を掛けられ、軽く頭を下げてユリナさんが離れた。

 サティナに今日はどんな店に行くのかを聞きながら、改めてこの場に居る五人の女性達を見る。元の世界ではなかなかお目にかかることが出来ないレベルの女性達だ。

 彼女達がこれから出掛ける場に俺が一緒に居ていいのかという疑問が湧いてくるのも仕方ないだろう。


「ユウジさん、どうかしましたか?」


 髪をアップに纏めたことで頭に金色の尻尾を付けたように見えるサティナに尋ねられた。


「ん?ああ...みんなが着ている服が俺の世界で着ていても違和感がない服だなって思ってな」


 男のプライドか、彼女達に気後れしていることではなく、彼女達の服に関して疑問に感じていたことを俺は言ってしまう。


「ああ、それはですね。かつて、美の伝道師と呼ばれた異世界の方がいたんです」

「へえ、そんな人が」

「服や化粧品関係で大きな貢献をされた方なんですよ」

「両方で活躍したのか、かなりそっち方面に知識があった人なんだな」


 そんな会話をサティナとしていると、そろそろ出発すると呼びかけられ、馬車の近くに向かった。

 馬車には俺が一番最後に入るようにと言われ、女性陣が乗り込むのを待つ間に御者席に座る人物をちらと見れば、どこかで見たことがある人物が手綱を握っていた。

 一体誰なのかを確認する為に凝視をしていると、その人物は被っていた帽子を深く被り直した。その行動によって正体がバレると不味い人物で、こういったことしそうな人物が俺の頭の中で一人浮かぶ。

 まさかいる筈がないだろうと思いながらも、御者の男性に声を掛けようとしたところで中の女性陣に呼ばれてしまった。

 あとで馬車から降りた時に説いただそうと思いながら馬車に乗り込めば、入り口側からリアさん・マリア・ユリナさんの順で座る前側の席と、入り口側からサティナ・空き・オリヴィアさんの順で座る後ろ側の席が目に入った。


「侯爵令嬢と皇女の間に挟まれるなんて、アマノ様は役得ですね」

「そ、そうだな...」


 席順のことをすっかり忘れていた俺はそんな返事しか出来ず、おとなしくサティナとオリヴィアさんの間に座ることにした。


「おとなしく座りましたね、サティナ」

「そうですね、オリヴィア姉さま」


 そんな会話を広げる二人を無視し、目の前の席で俺達の様子を見ていた女性達を眺める。

 銀髪の聖女はニコニコと機嫌良さそうに笑みを浮かべ、亜麻色の髪の騎士は俺達の様子にクスクスと笑い、黒髪の獣人侍女はただ一人だけ様々な感情の入り混じった表情で俺を見ていた。


「リアさん?どうかしました?」

「い、いえ。お気になさらず」


 気になって声を掛けると、ぴくりと驚きながらリアさんは言った。


「そうですか。何かあったら言ってください。俺に出来るかは分かりませんけど...」

「お気持ちだけで充分です...少し、懐かしい気持ちになっただけですから」


 そう言って彼女は目を伏せた後、窓の方へと目線を移した。

 彼女をそうさせた原因がなんだったのか気にはなるが、あまり触れていいことなのか分からない。


「ところでユウジさん」


 サティナの呼び掛けで意識を引き戻される。


「どうした?」

「昼食はどうしますか?」

「そうだな。折角だから城下で何か食べたいけど、何か良い店とかあるか?」


 この世界に来て一日目以外はその殆どを王城で過ごして居たからこそ、折角だから城下で何かを食べたい。


「それなら、今から向かう服屋の近くにあるレストランが美味しいですよ?」

「良さそうだな。けど、このメンバーで行って大丈夫か?」


 侯爵令嬢に皇女に王女と身分の高い人物が多いのだ。心配ないとは思うが、何かあれば一大事だ。

 

「大丈夫です。頻繁に陛下がお一人で行くお店ですから」

「頻繁にか...流石だな」


 俺はそう言いつつ、ここには居ないことになっている国王に対して心の中で呆れた。

 その後、どんな服を見に行くのかや、昼に向かう予定のレストランでのおすすめのメニューの話をしているうちに目的の服屋に着いた。


「さあアマノ様。先に降りて、私達が降りる時に手を」

「練習ですよ、ユウジさん」


 少しテンションの上がっている気がする皇女と令嬢を横目に、俺は先に降りた。

 出迎えに着た獣人の女性店員さんに怪訝そうに首を傾げられながら、俺はこれから降りてくる女性達を待つ。

 最初に出てきたのはサティナだった。


「なっ...!」


 出てきたサティナに手を貸していると、思わずといった風に後ろの女性店員さんが声を上げた。殆ど男との噂のないサティナが出て来れば驚くのも無理はないだろう。

 次に出て来たユリナさんにも手を貸した後に出てきたのはマリアだった。


「ふぇ?」


 なんとも気の抜けた女性店員さんの声を聞きつつ、マリアに手を貸す。

 マリアの後に出て来たのはリアさんだった。


「え?嘘...」


 今までとは違った反応を示した女性店員さんの声を耳にしつつ、リアさんへのエスコート?を終えて、最後の一人を待った。

 皇女はゆっくりと現れ、俺の手を取り馬車から降りた。そして流れるように彼女は俺の腕を取ろうとするが、俺は不自然にならないようにして躱す。


「アマノ様?」

「流石にそれは駄目だろ...」


 俺の態度に不満そうな様子を隠そうともせず、オリヴィアさんは先に降りていた女性陣と共に店に入った。


「ふー。危ない危ない」


 そんな独り言を漏らしながら、俺は店に入らずに御者席の方へと向かう。そこには馬を労う御者の姿があった。


「陛下、こんなところで何をなさってるんです?」


 俺は御者に扮した陛下に声を掛けた。


「なんのことだ?俺はただのしがない御者だぜ?兄ちゃん」


 とぼけた様子で陛下は口調を変えずに返事をした。


「隠すつもりならせめて口調変えましょうよ...」


 呆れながら俺が言うと陛下は「チッ、しょーがねえなあ」と言って帽子を取り、髪の色と合わす気がなかったのか白いカイゼル髭の形の付け髭を外した。


「いつから分かった?」

「王城で見た時ですね」

「かー、最初っからかよ。よっと」


 掛け声と共に陛下は御者台から飛び降りた。


「なんでまたこんなことを?それと二日酔いはもう大丈夫なんですか?」

「やっとスタンピード関連が終わったと思ったら、奴らが襲われたとかいうのを聞いたからな。働くのに疲れたからストレス解消の為にお前さんの面白い姿を見ようと思った。んで、二日酔いは面白いことが起きると思ったら治った」

「便利な体ですね...」


 俺は軽く皮肉のつもりでそう言ったが、「だろう?」と自慢げに陛下は言い、「とっとと店に入るぞ」と俺を呼んで先に店に入ってしまった。

 自由な人だなあと思いながら俺も入ろうとするが、獣人の女性店員さんが固まっていた。


「店員さん?」

「はっ!」

「うおっ」


 突然店員さんが動き出したことに驚いていると、店員さんは辺りをキョロキョロと見始めた。


「どうかしました?」

「侯爵令嬢に王女に皇女までもがこの店に来た気がしたんです!」

「そうですか、それは大変ですね」

「はい。そう...なん...で...す」


 キョロキョロと見ていたのを止め、彼女は俺を見た途端ぎこちない返事をした。


「さっきの方、です...よね?」

「そうですね」

「さっきのは、本当のこと...?」

「そうですよ。因みに陛下も増えましたよ」


 どんな反応をするかと思い陛下も増えたことを言うと「はあ」という声と共に気絶した。


「っと危ねえ」


 なんとか倒れそうになるのを受け止めた。咄嗟のことだった為に肝が冷えたがなんとかなった。


「何してんだ?」


 俺が中に入らないことで陛下が様子を見に来た。


「陛下も来たことを伝えたら気絶したんですよ...」

「ああ。恐らく働き始めて直ぐだったんだろうな...」


 少し申し訳なさそうに言いながら、陛下が俺の方へと来た。


「おーいお嬢さん、起きてくれ。じゃねえとこの男がもっと面白いことになっちまう」

「どんな呼び方なんですか...」

「んなこといいからお前さんも揺するなりして起こせ、こんなところ見られたら俺も怒られるだろ!」

「ええ...」


 自分勝手過ぎる陛下に呆れていると、女性店員さんが「んんっ」という声と共に目を覚ました。


「大丈夫ですか?」

「え?私...」


 自分の状況に店員さんは理解できていなかったが、とりあえず目が覚めたことに俺は安心した。もしなかなか目を覚まさなかったらと考えると何故か寒気がしたからだ。


「それにしても、陛下が居るのにじい様が居ないのは不思議だ」


 幾ら二日酔いとはいえ、ジジイはオリヴィアさんや俺の居ない王城に居ても特にすることがないだろうに、一体何をしているのだろうか。


「呼んだか?小僧?」

「うおっ、びっくりした」


 ぬっと突然ジジイが現れたことでつい驚いてしまう。


「居たんですかじい様...」

「屋根に乗っておったんじゃ」


 なぜ屋根に乗っていたのか聞きたいが、聞けば結局陛下と同じことを言いそうな気がするため止めておくことにした。


「あれ?皇帝陛下?」


 そんな中、俺の腕の中に居る店員さんはジジイに気づいた。


「元じゃけどな」


 そうジジイが返事をするとまた、「ふぇ?」という声と共に店員さんは気絶した。


「じい様...」

「わしは悪くないと思うぞ?」

「そもそもアマノユウジが俺が来ているなんて言うからだろ?」

「ストレス解消で来たとかいう人が何を言ってるんですか...」


 そんな押し付け合いをしていると、


「三人共?その女性を取り囲んで、一体何をしているのですか?」


 と、怖い侯爵令嬢が抑揚のない声で言った。

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