表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています  作者: 空月
本編3

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/75

12話

本日3話目の更新です。



 どちらからともなく手をつないで、外へ向かう道を歩く。

 以前似たような状況になった時と違うのは、ルカの口数の少なさだ。どうにも上の空で、フィオラが他愛ない話を振ってみても生返事が返ってくる。



(まったく、こいつは……)



 騎士団区域から離れて、魔法使いの宿舎付近まで来たところで、フィオラは足を止めた。ここまで来ればほとんど人がいない。話をするにはうってつけだった。



「……おぼえているか? おまえと私が初めて会ったのは、ここだったな」


「……覚えてるよ。俺がフィーに最悪な態度をとったことも」


「それはもう、当時の心情的に仕方ないということで流しておけ。そうじゃなくて……。ああ、もう。こういうのは得意じゃないんだ。そっちょくに言うぞ」


「…………」


「おまえ、むだに責任を感じているだろう。さっきの『きしだんちょう失格』うんぬんもいやに真剣な声音だったし」


「だって、それは……そうだろう。俺のせいでフィーは攫われて、危険な目に遭ったし、この国に『ディゼット・ヴァレーリオ』の手の者が入り込んだのも、俺が原因のようなものだし」



 やっぱりか、とフィオラは思う。どうせそういうことをぐだぐだと考えて、見舞いに来なかったのだろうと察してはいた。



「いちばん危険な目にあったのが誰かと言ったら、正直なところおまえだろう。私はむしろおまえを危険な目にあわせた側だし」


「それは、リトのせいで……」


「そもそもが『ディゼット・ヴァレーリオ』の、ローシェ魔法士長へのちょうはつなんだ。言ってしまえば、その尖兵はだれだってよかった。リト=メルセラでも、そうじゃなくても。彼もあるいみ、利用されたわけだ」


「……そういう見方も、あるかもしれないけど」


「まあ、外野が何か言ってきてるのかもしれないが。私はおまえに落ち度はないし、被害を出さずにじたいを収束しているんだから、あれこれ言われるすじあいもないと思うぞ」


「……今日のフィーは、饒舌だね」


「おまえが喋らないからな」



 長く喋ったことで少々疲れて、フィオラは一旦口を閉じた。すべてを自責としようとするルカに、いちいち道理を説くのはもっと口の回る――何やら裏で何事かあったらしいサヴィーノ魔法士あたりが適任だと思うのだが。

 彼は実際のところ、けっこうルカのことを気にしていると思う。見舞いのときもそれとなく「あのまるで恋人みたいに貴方に甘い騎士団長は、まだ来てないそうですね」とか言っていたし。



「ともかく、私はおまえのせいでとかそういうのは思ってない。思ってないから、いきなり距離をとろうとかするな」


「フィー……、でも……」


「でもも何もない。とうじしゃの私がいいって言っているんだから、いいんだ」



 言い切ると、ルカの眉がへにゃりと下がった。



「本当に、フィーにはかなわないな……」


「あと、その傷。残すな。治せ」


「え、」


「『氷のびぼうのきしさま』の顔に傷をつけたなんて知られたら、私の身が危ういだろうが」


「でも……」


「でもでもうるさい。その傷を見る度、自分の行いを突きつけられることになる私の身になれ」


「……そういう言い方で、俺が傷を治しやすいようにって気遣ってくれてるのくらい、わかるよ」


「…………」


「ありがとう、フィー。……俺は君に、助けられてばかりだ」



 そう、顔を伏せて言ったルカの声がどこか泣きそうにも聞こえたので、フィオラは努めてその顔を見ないようにした。……たぶん、見られたくないだろうと思ったので。



「私だって、おまえに助けられてばかりだろう。今回のことしかり、『ディゼット・ヴァレーリオ』絡みの時は、特に」


「……そう、かな」


「そうだ。だから、これでも感謝しているんだ。……伝わりにくいかもしれないが」


「今日のフィーは、なんだか素直に言葉を向けてくれるね」


「いつもがすなおじゃないみたいな言い方はやめてくれ。言葉を尽くさない方なのはじかくしているが」


「俺は、いつものフィーも、今みたいなフィーも、どっちも好きだよ」


「……ちょうしが戻ってきたようで何よりだ」



 ルカはなんとか持ち直したらしい。蕩けるような甘い笑顔を向けられて、フィオラは少し身体の力を抜いた。やはり無意識に気負っていたようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ