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平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています  作者: 空月
本編2

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18話



 目を開いて最初に映ったのは、ローシェ魔法士長の姿だった。

 長い間眠ってしまったときのような倦怠感が頭を覆っている。目を覚ます前のことを思い出せない。

 もし寝ていたのだとしても、何故一介の魔法士の元にローシェ魔法士長がいるのか。そういった疑問を含めて名を呼ぶ。



「ローシェ、まほうしちょう……?」



 やけに真剣な目をしたローシェ魔法士長は、フィオラが体を起こすのを手伝い、そうして衝撃的な発言を――した。



「落ち着いて聞け、クローチェ。ここは君が思っているより未来――そうだな、その姿の時からすると十数年は先の未来だ。まずそれを理解してほしい」


「み、らい……?」


「今いるのはラゼリ連合王国だがすぐにシュターメイア王国に戻るからそれはいい。君は『子どもの姿になる魔法』を編み出し、それを使ってとある事件の解決に尽力したところで――ディゼット・ヴァレーリオに襲われた」



 ディゼット・ヴァレーリオ。

 その名前を聞いて、思考が赤く染まる。



「ヤツは、どこに……!?」


「逃げられた。今ここを飛び出しても彼を捕らえることはできない。だから落ち着いて続きを聞け、フィオラ・クローチェ」



 跳ね起きようとした肩を抑えられて、そう言われる。

 平静を欠いた自覚はある。深呼吸して気を落ち着けた。それを待って、ローシェ魔法士長は続きを口にする。



「君の体はシュターメイア王国に来て間もない頃の姿だと思うが、ディゼット・ヴァレーリオはそれに合わせて君の記憶を操作したと推測される。……異論は?」



 問われ、自身の記憶を探る。

 シュターメイア王国に来て一年経とうとしている――というこの記憶は、ローシェ魔法士長の言葉を聞くに正しくない。本当は十数年を過ごして、魔法士として働き、その最中でディゼット・ヴァレーリオに記憶を操作された……ということになる。



「私のいしきの上では、私はシュターメイア王国に来て一年を数えるころになりますが、この記憶はそうさされているということですね?」


「そうだ」


「……ディゼット・ヴァレーリオは、なぜそんなことを?」


「それに対しての答えはある。が、君はそれを知ることができない」


「なぜですか」


「君が彼に『呪われた』からだ。『呪い』に関わることを君は認識できない。――ディゼット・ヴァレーリオは君が『              』に興味を持って、君に『呪い』をかけたと推測できるけれど……聞き取れなかっただろう?」


「たしかに……ふしぜんに聞き取れない部分がありました」



 まるでそこだけ空白に塗りつぶされたかのように、一切聞こえなかった。唇の動きも、思い出そうとしても思い出せない。



「それが『呪われた』ということだ。この『呪い』が解けない限り、君は元の体に戻れないし、記憶も取り戻せない。『呪い』を解く条件は、この場にいる者はわかっているが、君に教える手立てはない」


「……じょうきょうはわかりました。私はその『呪い』をどうにかして解かないとならないのですね」


「そうだね。君がそのままだとシュターメイア王国としても、僕としても困る。君は優秀な魔法士だったからね」



 自身の意識の上ではシュターメイア王国に来てそれほど経たないというのに、そのような評価をされるのはなんというか、居心地が悪い。



「もちろん、『呪い』に負けてもらっても困る。ディゼット・ヴァレーリオの扱う『呪い』は成長するものだ。馴染んでしまえば、君の中の感情を、記憶を、吸い取って養分にして――『それ』を成就させるだろう。……期限は、一ヵ月は確実にあるだろうが、それ以上はわからない。それを念頭に過ごしてほしい」


「……わかりました」



 肝心なところが不明なのが痛いが、とにかく一ヵ月の間に『呪い』を解けばいいということだ。

 ……ディゼット・ヴァレーリオの思い通りになどなりたくないので、絶対に『呪い』を解かなくては。



「……ところで、ここにいる方々はどなたなのですか」



 フィオラとローシェ魔法士長がやり取りしている間、じっとそれを注視していた三人を目線で示す。


 一番近いところにいるのは、月の光のような銀の髪をした、薄い青の瞳の男性だ。騎士団の服を着ている上、団長だけが身に着けられるマントを羽織っているので、騎士団長だとわかる。随分と若いが。

 他二人は少し離れている。一人はこれはまた騎士団の服を着ていて、徽章で副団長であることがわかる。明るい茶髪と、少しつりあがった大きな瞳が、なんとなく大型犬を想像させる。

 もう一人はとんでもない美形だった。一番近いところにいる騎士団長らしき人物もかなりの美形だが、こちらはもう美形という言葉にはおさまらない、芸術品のような美しさだ。黒髪と赤い目という取り合わせが、浮世離れした美しさに拍車をかけていた。



「彼らは事件解決のために君と共に行動していた人物だよ。――自己紹介を」




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