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コメディー

『あと5分』 寝坊助君と目覚ましちゃん

作者: 山目 広介

◇◆◇ 1 ◇◆◇


 夢現。つまりは夢の世界。今現在ここの住人だ。


「朝だよー、起きなさい」


 それはいつもの目覚ましちゃんの声だった。夢の中から返事をする。


「あと五分くれー」

「残念、寝坊助君。それ五分前に聞いたよ。録音もしてあるから聞く?」


 そして夢の国から追放されるのだった。儚い夢だった。

 この「儚い」の人偏は目覚ましちゃんに違いない。




◇◆◇ 2 ◇◆◇


 睡眠中。休憩しているともいう。


「朝だよー、寝坊助君、起きなさい」


 いつものように幼馴染の目覚ましちゃんのセリフが耳に届く。


 なんかいい切り返しはないだろうか?


「あと五秒」

「1・2・3・4・5! はいっ! 終わったよー」


 寝ぼけた頭ではダメだった。

 寝ぼけ(まなこ)に元気な目覚ましちゃんが映るのだった。




◇◆◇ 3 ◇◆◇


 夢幻の世界。

 目覚ましちゃんの(さえず)りが聞こえる。


「寝坊助君、朝だよー、起きなさい」


 ダメだ。夢の世界がボクを待ってる。


「あと五時間寝るー」

「そんなに待ったら昼過ぎちゃうよ!?」


 布団を剥ぎ取られて起こされた。幻ではなかった。

 お願いだから、見ないでほしい。




◇◆◇ 4 ◇◆◇


 夜の世界を引き裂く声が聞こえてきた。

 今日も目覚ましちゃんが叫んでいた。


「朝だよー、起きなさい」

「あと五日待ってて」

「来週になっちゃうよー、さっさと起きる!」


 だあかーら、朝の布団の中には危険物があるというに。

 捲らないで~

 (いと)しい布団との仲を引き裂かれたのだった。




◇◆◇ 5 ◇◆◇


 レム睡眠。眼球が激しく動いている睡眠状態。眠りが浅いと言われる。

 それを止める行動が引き起る。


「寝坊助君。寝坊助君、朝だよー」


 いつもと同じく目覚ましちゃんの唇が起こすための言葉を奏でる。


「あと五週間経ったら」

「今月終わっちゃう!?」

「寝かせて~夜更かししてたんだよー」

「自業自得だよ」


 なぜか最近布団だけでなくパジャマのズボンまで剥ぎ取ろうとしてない?

 浅い眠りだったからか、この状況にすぐに覚醒させられる。




◇◆◇ 6 ◇◆◇


 夢の中を漂っていた。そこに陽の光が射し込み、意識を現実に連れ去られる。


「寝坊助君、起きてー」


 毎度の如く、目覚ましちゃんが唸っていた。


「あと五ヶ月過ぎるまで」

「夏休みも寝てるつもりなの?」

「ああ、寝てるぞー」

「いいから起きてー出かけるよー」


 ズボンといっしょにパンツにも指を掛けないで~

 意識が現実に戻ってきた。




◇◆◇ 7 ◇◆◇


 それは仏の世界だったかも知れない。

 今朝も目覚ましちゃんが念仏でも唱えているようだ。


「寝坊助君、朝ー起きてー」

「あと五年待って」

「オリンピック見ないの?」

「見ないよー」

「いいから起きなさーい」


 パンツだけは死守するのだった。

 ここには神も仏もいなかった。




◇◆◇ 8 ◇◆◇


 広い宇宙を彷徨うような感覚。彷徨ったことはないけど。

 普段と同様の目覚ましちゃんの美声が響き渡る。


「起きて。朝になってるよー」

「あと五光年先まで」

「それ単位が距離だから。あと人類そこまで行ったことないから」


 そして布団の剥ぎ取りに抵抗して、ベッドから落ちるのだった。

 地球には重力がある。万有引力の法則を身をもって味わった。




◇◆◇ 9 ◇◆◇


 生物は海から生まれた。広い大海。


「朝だよー。起きる時間だよー」


 恒例になっている、目覚ましちゃんの歌うような挨拶が始まった。


「あと五キスで起きる~」

「はいはい、こんなこともあろうかと」


 むむむ!

 生臭い!!


「はい、五鱚」


 ネタを予測して対処するとは……

 口が生臭い。これじゃ目が覚めて寝られん。

 真水で口を(すす)ぎ、地上を満喫するのだった。




◇◆◇ 10 ◇◆◇


 森林浴でもしているかのような、この陽気。

 静寂を破る言葉が目覚ましちゃんの口から零れる。


「あっさー。おっきろー!」


 何か今日は雑だなー。


「あと五ちゅーされたら」


 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっちゅっちゅっ


 えっ!? 唇に柔らかい感触が!


「先行くよー」


 なんか顔が赤かった気がした。

 だが、こちらの方が赤いだろう。


 結局、遅刻した。


 緑の補色は赤だったな、とそんなことを思った。




◇◆◇ 11 ◇◆◇


 母の胎内を漂う、そんな心地でいると。

 耳を(つんざ)く大声で目覚ましちゃんが咆哮する。


「朝ー! 起きろー!!」

「あと五えっちしたら」


 ……

 …………


 胎児は誕生の瞬間を望まれている。


「さ~てと。そろそろ起きるか」

「だ~め! あと4回……」


 その日、起きることはなかった。

 終わった後、起きれなかったともいう。




◇◆◇ 12 ◇◆◇


 命の煌めきのような、(まばゆ)い世界。

 目覚ましちゃんの声で意識が戻る。


「ねえ、寝坊助君、起きて」

「あと五分粘るよ」


 それは長く続いた、そして僕らの最後の別れの挨拶でもあった。




長編用のリサイクル

起床パートと日常パートがあり、日常の方が破綻。

起床部分を纏めた。

最後はいきなりどうなってるのか、作者にも不明。

設定上のパターンは7つ。


結婚/老衰/

事故/病気/

留学/進学、卒業/引っ越し/


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