六話
今回も砂糖強めです。
「なぁアルテミス、付き合った記念に観光でも行かないか?」
「観光?」
「あぁ、前聞いた話だとこの森の近くに町が有るんだろ?」
「うむ、『エウリカ』というそれなりに大きな町があるぞ」
「なら、デートしに行こうぜ、新しい調味料も欲しいしな」
「で、デートか、うむいいぞ」
アルテミスにプレゼントとかしたいしね、たまに町に観光に行くのも良いだろう。
「じゃあ早速明日出発な、確か最初に初期資金として金貨10枚貰ってたよな、それで1泊位出来るか?」
「うーむ、確かあの街で1番高い宿の部屋は1日2000Fじゃったし大丈夫じゃろ」
「二人部屋はどうだ?」
「!?お、お主、それは!?」
「恋人になったんだし添い寝ぐらいはしちゃダメか?駄目だったら二部屋取ることにするけど」
「な、そんなのよいに決まっておるだろう!」
付き合いだしてからというもの、アルテミスは自分に対しての好意を隠さなくなってきたと思う。
さっきのもそうだ、前なら『ば、バカもの!する訳がないだろう!』と言っていただろう。
それが今はこうだ、正直可愛い過ぎる。
「しょうがないじゃろ···お主を好いておるとハッキリしておるのでな」
「そっ、そうかありがとう」
ヤバイ、照れながら好きって言っているアルテミスが可愛すぎる。
「お、お主もうちょっと可愛いと思うのにも自重をだな···」
「可愛いアルテミスに可愛いと思う事の何が悪いんだ??」
「うぅ···お主はどうしてそんなに我を喜ばせる事が出来るのじゃ···」
「お前の恋人だからな、当たり前だろ」
「!!そ、そうじゃな···えへへ」
そんな恥じらっているアルテミスが可愛すぎて思わず抱きしめてしまった。
「キャッ!?」
「す、すまん、つい」
口ではそう言ってはいるがアルテミスから離れることは出来なかった。
「···俺の告白の時なんだけどさ、あの時俺の心を読んでれば先に俺が告白するってこと分かったんじゃ無いのか···?」
唐突に俺はそう思い、抱きしめたまま話す。
「うむ?そうじゃな、イルが大事な話と言っていた時妙にイルが緊張していたのでの、心を読んで内容を知るのは無粋だと思ってのう(あぁぁぁぁぁ!イルの匂いがするのじゃぁぁ!ずっとこうしていたいのじゃぁぁ!)」
その言葉を聞いて、俺はアルテミスを抱きしめる力を強くする。
「俺、もっとアルテミスが好きになった」
俺とアルテミスは見つめ合う。
俺は心の中でとある事を思い浮かべる。
「────うむ」
アルテミスは目を閉じる。
俺はアルテミスの顔に近づいていった。
そしてその距離がゼロになる。
触れるだけのキス、それでも2人の心は高揚していた。
10秒ほどで離れてしまうと、アルテミスが名残惜しそうに言った。
「の、のう、もうンムッ!?」
アルテミスが言い切る前にイルが唇を押し付けてきた。
イルの舌がアルテミスの口内に侵入してくる。
舌と舌を絡ませ合う濃厚なキス。
始めはアルテミスも驚いていたが、途中からアルテミスからも舌を絡ませていった。
長く激しいキスは息が続かなくなるまで続き、息が続かなくなると2人は離れた。
2人の間には唾液の糸がかかっていた。
「キスがこんなに気持ちいいものだとは思っていなかったのぅ」
「···あぁ、正直に言うともっとしたいと思った」
その日の夜は2人で同じベッドに入り、ずっと貪るようにキスをしながら夜は更けていった。
·········
······
···
次の日、アルテミスとイルはダンジョン都市『エウリカ』へと歩を進めていた。
2人は当然のように手を繋いでいた。
エウリカまでは徒歩1時間程で、20分程で森を抜けることが出来た。
森を抜けた先は草原になっており、奥にエウリカ行きだろう街道が見える。
「何事も無く抜けられたな」
「そりゃあ妾の結界があったからのぅ、褒めてもいいんじゃぞ?」
「あぁ、ありがとう、可愛いよ」
「何故そこで可愛いと言ってくるのじゃぁぁ···」
そんなこんなでエウリカの都市の城壁が見えてきた。
その城壁は厚く、頑丈そうに出来ていた。
俺達はそのまま中に入るため、門の一般ゲートへ向かった。
一般ゲートには多くの人が並んでいた。
一般ゲートにいた人々の視線が突き刺さる。
それもその筈、俺と手を繋いでいるアルテミスが美しいからだ。
その証拠に男はアルテミスに釘付けになっていた。
「流石アルテミス、皆の注目の的だな、俺的にはあまり見られたくないけどな」
「むぅ、妾はお主以外ではいやじゃぞ?」
アルテミスはそう言って俺に撓垂れ掛かってくる。
「それは嬉しい、俺もだよ、アルテミス···」
「イル···」
2人の世界を作ってしまったイルとアルテミスは自分達が順番になる直前までイチャコラしていた。
「それでお二人はどうしてエウリカに?(イチャイチャしやがって、胸糞悪い)」
門番の兵士に強い口調で言われたのに違和感を感じながらイルは答えた。
「観光です」
「なら通行料にお二人で500F頂きます」
俺は金貨を一枚渡し、銀貨5枚を受け取り、町に入った。
町の中は商店や人々で多いに賑わっていた。
「凄いな···」
「うむ、少し騒がしすぎる気もするがの」
俺達には2人で静かに過ごすのがあっているようだ。
「じゃあアルテミスが言ってた調味料と他に必要な日用品とかを買いに行くぞ」
「9500Fで足りない気がするのぅ」
「うーん、森で取った素材でも売るか?」
「なら冒険者ギルドじゃな、登録しなくても買取だけならして貰えるのじゃ」
「よし、じゃあ冒先に冒険者ギルドに行こう、アルテミス案内を頼む」
「任せよ」
アルテミスはイルの腕に手を絡ませながら案内をしていった。
向かっている途中、ずっと視線を感じたがアルテミスが無視していたので、イルも無視していた。
·········
······
···
多くの視線に晒されたが、特にトラブルは起こらず、冒険者ギルドに着いた。
冒険者ギルドは他の建物より二回りほど大きく、多くの冒険者達が出入りしていた。
「気をつけろよ、俺の世界なテンプレじゃあ間違いなく絡まれるからな」
「う、うむ、守ってくれの···?」
「当たり前だ、指1本触れさせねぇよ」
俺達は冒険者ギルドに足を踏み入れた。
冒険者ギルド内は受付嬢が居る依頼受付カウンター、買取カウンター、酒場、依頼ボードが主な施設だった。
酒場には昼間から酒を飲むガタイのいい冒険者も多くいた。
中に多く居た冒険者は俺達が入ってくると妙に静かになった。
男性冒険者の目線は主にアルテミスだ。
俺達は気に止めずに買取カウンターへ向かった。
買取カウンターにいたのは金色の髪が特徴的な美女受付嬢さんだった。
勿論、アルテミスには叶わないが。
「買取を頼む」
「え、はっはい、そ、それで素材はどちらでしょう」
俺は異空庫からベルセルクボアとベルセルクラビットの素材を三つずつ出し、カウンターに置く。
「い、異空庫ですか!?···それにこの素材は···」
「うん?ベルセルクボアとベルセルクラビットだが?」
その言葉を聞いた冒険者達がざわつき始める。
『ベルセルクボアだって!?あいつベルセルクの森に入ったのか!?』『ベルセルクの森は最低でもAランクは無いとモンスターに殺されるんじゃ無かったのか?』『ふんっ!どうせ金持ちのボンボンが高ランク冒険者に取ってきて貰ったんだろ』
うわぁ···予想通りの反応がある、俺みたいな美女連れに実力で負けたく無いんだろうな。
「はい、少々お待ち下さい!」
受付嬢さんは、奥にパタパタ走っていった。
「さてと、売った金でアルテミスにプレゼント買ってやるからな」
「それはほんとなのじゃ!?」
「俺はアルテミスには嘘は付かないよ」
「ありがとうなのじゃ!」
アルテミスは満面の笑みを見せてくれた。
────ズッキューン!
冒険者ギルド内にそんな効果音が鳴ったような気がした。
周りを見るとアルテミスを見てボーッとしている冒険者や、下衆な目線を向けてくる冒険者、女の冒険者に頬を叩かれている冒険者等がいた。
「お待たせしました!ベルセルクボア三つで金貨30枚、ベルセルクラビット三つで金貨15枚、合計で45枚で45,000Fになります。白金貨に両替しましょうか?」
「いえ、金貨でいいです」
そう言って金貨の入った袋を受け取り異空庫に入れた。
冒険者ギルドから立ち去ろうとした時、1組の冒険者パーティがこちらに向かってくるのを見た。
〖次回予告〗
もう止めて!その冒険者達のライフはゼロよ!もう勝負は着いたのよ!次回!冒険者達死す!デュエ〇スタンバイ!※死にません