九話、裏事情
更新が遅れてしまいました。申し訳ございません
「えっ!?な、何でここに北原が!?」
「驚いた時にだけ呼び捨てなんですね?」
俺が目指した場所、そこは資料室だった。
ここの学校の資料室には図書室にあるべき本も沢山あるので生徒も立ち入り可能になっている。だがほとんどの本が勉強、社会、高校とは、などそういう分類の本なので今の時期にはあまり立ち寄られない場所になっていた。まぁ、そんな全くの関係なさそうな葛城先生がここに居るのかは知らないが。
「あ、ごめん北原君」
「いいですよもう、北原で」
「うーん…じゃあそれでいい?悪いわね北原」
1年目だからとっさに三年生の勉強忘れたとか?
しっかりしてそうな大人っぽい雰囲気出してるけど実は本心はマイペースでおっちょこちょいもあえりえるな?けどこの人に限ってそんな事あるのか?
俺はもう一度資料室の中を探索して漫画などありえない物が入ってないかチャックする。
やっぱりねぇか。
「で何で先生はここに?」
俺はまだ探索をしながら先生にそう聞くと後ろでビクンと揺れた気がした。
どこかは知らねぇが。
「誰にも言わないかしら?」
「本人がそう言うなら俺は絶対に教えない主義ですよ?」
「なら結構」
で、結局教えてくれるんだな?こんな教師と生徒の関係性しか持ってない俺に。
それとも俺を信頼して教えてくれるのだろうか?それかこの話は誰にもしてなかったので誰かに喋れば少しは自分の心が安らぐとか、そんなのもありえる。
だからそんなに期待しない方がいいかもな。
「私、1〜3年ぐらい経ったら、大阪に行こうと思ってるの。母がね、病気だからそこで看病しながら大阪で教師やろうと思ってて」
「…へぇ、そうなんですか」
多分この話は親友とか近くにいる親からだと泣くほどの悲しい事情なのだろう。
けど、この話はあまり関わりを持ってない、さっき言ったように教師と生徒の一年も経ってない間柄の人だと本当にどうでもいい話だと思う。そこに俺が入ってしまうから。勿論この人に恋をしちゃってる奴は悲しんだりしてしまうだろう、この人は大人っぽい顔や雰囲気が出て美人だからな。
けど俺はそんな人に恋はしていない、ただの俺の教師という認識しか持ってないだけ。
だからだ。だから先生は俺にこの話をしたんだ。
どうでもいい相手に。
「ここは東京ですから暫く会えなくなりますね」
「ええ、そうね。あ〜この話みんなにして悲しい顔とかされたら私行くの止めちゃいそう…」
「ははっ。けどそれが先生の本音じゃないんですか?」
「バーカ何言ってるのよっ、そんな事言ったらお母さんに怒られる」
否定はしないのかよ。
本当に素直じゃない人だな?大人っぽい雰囲気を出しながらも仕事は出来る、そんな感じの人だ。
そんな欠点なんかないって人が、欠点なんか普通の人よりもあるのかもしれないな。
「で、何で資料室何ですか?」
「えっ?ああ、予習?みたいなもんよ。一応3年の勉強は全部覚えてきたけど私も1回ぐらいは予習しとかないとね」
「真面目ですね?」
それは俺でもびっくりするわ。
「だから放課後には絶対にいるわけだ」
「は?何で知ってるのよ北原?」
「だって俺、放課後ここに通ると絶対に先生見ますから。あ、他の奴は知らないと思いますよ」
「うそぉー!?何とかみんなにはバレないと思うから資料室に来てたのにー。北原にばれてたか」
先生の欠点一、少し子供っぽいかも。
俺は一つの欠点を覚えておくと先生の向かい側にある椅子に当たり前のように座りポケットにはなるべく入れているシャーペンを取り出す。あ、これ初耳だとは思うがこれ癖になってるので。
「で、何処か分かりにくい所はありますか?」
「えっ?」
「教えますよ。俺一応3年の勉強は全部してあるので」
「うそっ、本当に北原?」
「本当です。そんな仕事を熱心に一人でやってたらいつか倒れそうだし。休み時間だから少しだけど放課後とかだと暇があったら来るんで。とにかく今は少ししか休み時間ねぇけどやりましょう」
俺も一応この人には勉強を教わっているんだ、少しくらいの感謝を合わせてのお礼くらいはいいだろう。
俺の性格には少し会わないけど、何故だかこの人にはそんなちっぽけな事でもお礼をしたい。
ま、何でそんなお礼をしたいのかは分かってるけど。
んなの、先生の嬉しそうな笑顔を見たいからに決まってるだろ。
ちなみに作中は五月の後半ぐらいです。次の話では6月に入ろうかと思っています。