五話、ご飯
葛城先生、急展開です
「別に礼はいいっての。ほら、食べようぜ」
俺はワザと話を逸らしながらテーブルには箸を向かい合わせに置く。
そして母さんと向かえるように椅子に座り二人で食べ始める。家の母はもうこんな生活8年も頑張ってきてくれたんだ。俺は少しは親孝行今からでもしとかねぇと、先延ばしにしてると本当に出来ない日が来るかもしれないからな…。
「美味い?」
「悠人が作ってくれたんだもん。美味しくて当然よ」
「そっか。から良かった」
そら安心だ。
俺も食べよっと言っても、やっぱり炒飯だけだと超地味だな?もうちょい作ってたら良かったか。
けど今から何て作れねえし…。
「悪いな母さん。レパートリー少なくて」
「何言ってんのよ?あんたがこれちゃんと作ってくれたんでしょう?お母さんそれだけで嬉しいんだからもうこれ以上はいらないわよ!」
「ははっ、そっか。サンキュー」
本当、この人のこういう性格には有り難いよな。
だから俺をこんな風に育ててくれたんだろうけど。
ま、学校ではふざけてるけど。
「最近どうだよ?仕事」
「うーん?あんたに教えても意味ないわよ?」
「いいんだよ、俺は母さんの話聞くだけでいいんだから」
だから学校の分、親に返す。
そりゃこの考え方は間違ってるけど、この人には幸せになって欲しいから。だっていつ病気になってもおかしくない仕事の量をやってるんだぞ?あんなバカ親父に生活費用もくれないんだから尚更働なくちゃいけない。それに母さんが働いた金には俺を育てる金まで入ってるんだ、大切にしないと。
「あんた、本当に良い子に育ったわね…口の悪さ以外」
「以外つけるな。そういう時は全部褒めるもんだろ」
「いいや違うな。一個ぐらいは文句言っとかなきゃね?」
「へいへい分かりましたよ俺の産んでくれた人っ」
「何でそこで産んでくれた人なのよ?」
何となくっ?何か呼びたくなったじゃ無理か?
俺は最後の一口を食べるとそんな一言は声に出さず無視したみたいな状態になって食器を片付ける。
今は見えないが、多分母さんは今笑顔になっているだろう。理由は分からねえが。
だから俺も何気ないように声をかける、これが俺たち家族の普通だった。
「母さんもう食べた?食器洗いたいんだけど」
「ああ、うん。ちょっと待ってっ」
「ゆっくりでいいよ、俺いくらでも待つし」
そんな出来事が終わった後、俺は食器を洗ってその後風呂に入り自分の部屋に入った時にはもう十時だった。
「時間って早いなぁ」
ま、明日どうせ学校だしせっかくだからいつもより早く寝るかな…って学校はいつもだから今のは関係ないけど。
「電気消すか」
こうして俺の五月に入ってからの家族の食事何日ぐらいは無事に終わった。
✴︎
「おっはよー北原っ!」
「あん?ってどあっ!?」
次の日…俺が家を出てみんなと会いやすいでかい道路に歩いていると、案の定知ってる奴に出会った。
ただ予想してないのは蹴りを入れられた事で。
「おっ?痛かった?」
「痛かったじゃねえよ昌幸!お前俺にボコられたいのかっ?」
「まっさかー!遊びたかっただけだよ!」
「俺は遊んだ気が全然しないんだけどな…!」
という事で俺も昌幸に思い切り一発蹴りを入れてついでにその隙にデコにデコピンする。
「いって!お前二回だぞせっこ!俺にもやらせろっ」
「お前はどんだけガキなんだっ!」
おっとあぶね、やられる所だった。
俺たちはそうこうやり合いをしてるといつの間にか学校に着いたのだが昌幸はそれに気づいてない。
アホかこいつ。
「さぁ、俺の必殺技を受け取りやがれ!」
「うおっ!?って止めろよ昌幸っ、ていうかお前もう一度小学生からやり直してこい!」
俺は最後に昌幸の必殺技を鞄でガードして収める。
つーか必殺技鞄で収められるって事は相当弱いよな、その必殺技。
「ちっ、必殺技を受け止められるとはな」
「んなどうでもいい事は放っておいて俺は先に行くぞ」
「あ、待てって悠人!」
「へっ、お前の足で俺の事をーーって、えっ?」
あれ?何か前から俺の頭の下ぐらいにすげぇ柔らかい感触が…ってこれは!
「おっ…おっ!」
「いい加減離れなさいよっ」
「は、はいっ!すみません!」
違う意味で謝る俺は、何故だか虚しくなった。
しかも相手葛城 遥先生だし、それに今葛城先生の新しい一面が見えたし。
「もうっ、今度からは気をつけなさいよ?北原君」
「は、はい…すみません。あの、葛城先生、何か前より変わってません?性格と雰囲気」
「えっ?ああ、実はね…本当の私って結構大人っぽいのよ。ほら、いいでしょ?頼れる上司みたいなで」
この人は一体本当の自分をいくつ持ってんだ?
しかも雰囲気が前と全然違うし。
これがこの人の姿かよ。俺、一体この人の本当の自分何回見せられたらいいと思ってるんだ?
「まぁ?上司はいいと思うっすけど」
「でしょ?私、仕事だけはちゃんとこなしたいタイプなの。まだ20歳だけど…精一杯頑張りたい。だから北原君、藤田君、覚悟しておきなさい」
「は、はぁ…で先生、先生は一体何個の自分持ってるんですか?」
俺はもう呆れながら言う。
だってそうじゃねえか…呆れながら言わないんだったら何で顔して言えばいいんだよ、俺、どれだけこの人に惑わされてるんだ?
「ごめん北原君。これが最後の私だ。これだけは信じて欲しい」
「えっ?しかも男口調?」
「あっ、し、仕方なかったんだ!これは…北原君に教えてもらったからな。自分通りにいればいいって言ってくれたのだから。だから私はあれからずっと考えてこうしたんだ」
いや、そもそも俺そんな事言った覚えないんだけど?それにこの馬鹿な昌幸も戸惑ってるし。
「なぁ、北原。これでいいと思うか?」
「しかもいきなり呼び捨て…」
「あ、悪い。で、どうなんだ?」
「そんなのどうなんだって言われても、いいじゃないですかって答えるしかないじゃないですか」
ああ駄目だ。
俺この人の相手はすげぇ疲れる。
大体何だよこの性格は?今までのこの人は演技ってわけ?最近出てきてなかったのに。それに今ここでそんな事言われても戸惑るしかないっての。
「…そうか。それは有り難い。ありがとう北原君」
はぁ…
この言葉は俺も声には出さなかった。ただ口に出すのも面倒いだけで。
しかもこの人は…どれだけ勝手にすれば気がすむんだよ
この性格も気に入って下さると嬉しいです笑