ファンタジーのエルフについて考察してみた
ファンタジーを用いた小説に置いては、色々な種族の人物が描かれる事が多い。
身体の大きさが違う小人や巨人と言った者や、魔界と呼ばれる世界に住まう魔人。身体に獣の特徴が現れる獣人。他にも海に住まう魚人や機械の身体も持つ機人などもあるのだが、今回はそんな中でも、ファンタジー小説で良く見られるエルフについて、考察していきたいと思う。
エルフは身体的特徴として、どの媒体においても「耳が長く尖っていて、外見がそれなりによく、長命とされる傾向」がある。髪と耳に多くの特徴があるが、他にも細身で比較的筋力が弱く、賢くて魔法が得意と言った事が特徴としてあげられる。弓と共に描かれる場合も多いが、これは全ての作品の特徴と言う訳ではなくて剣や斧を使う者もおり、弓が絶対的なエルフの特徴としてあげられる訳ではない。
ゲームや漫画などで良く見られるエルフの特徴としては次の性質があげられる。
○魔法を使えるが力は人間に比べて弱い
○金属製の道具を嫌う
○平和を尊び、他の種族との交流を避ける
○小さな集団で森の中で暮らしている
○戦闘力が低い
しかし、『小説家になろう』においてこの上の5つの点は有って無いような物である。
まず、『魔法を使えるが力は人間に比べて弱い』と言うのは、最近では武闘派エルフのやり直し小説がなろうから書籍として出版されたくらい、力に関しては問題ないだろう。そもそもゲームを元にしたステータス表記が挙げられる小説では、腕が細くても怪力を発揮するのは別に可笑しな話でもないだろう。
『金属製の武器を嫌う』と言う事に関しても、弓を使う事に関しても絶対ではないので、弓を銃に変えたり、剣を使うくらいなんてのは多い物だ。
『平和を尊び、他の種族との交流を避ける』についても、なろうでそれを忠実に守っているエルフはそもそも物語に登場するかも危うい。主人公達と絡ませるために、多くの作品ではエルフとの交流は盛んと言う訳ではないが、少なくともゼロと言う事はない。また平和を好むについても、若干怪しい所である。
最後の『戦闘力が低い』は先の『魔法を使えるが力は人間に比べて弱い』からも分かる通り、別に弱いと言う事でもあるまい。
こうやって考えていくと、最終的にエルフの性質として残ったのは『小さな集団で森の中で暮らしている』と言う事である。
先の特徴から考えれば、エルフと言うのを端的に表すと『小さな集団で森の中に暮らす、美形で長命の種族』と言う事になる。これをもっと分かりやすく、現代風に言うとするならば、『少人数で森に暮らす長生きの美男美女』と言う事になる。こう考えると、エルフと言う存在が身近に感じられると思う。
次に『森で暮らす』について考えてみる。エルフは多くの場合、長命で森に暮らす事が多い。これは何故かについて考えると、エルフと言う者達の暮らしが見えてくる。
エルフは長命の種族であり、ほとんどの者達が数百年、数千年生きるとして設定される。対して我々人類は街で暮らしているが、歴史を紐解いても数百年、数千年とほとんど形を変えなかった文明は少ないだろう。先に否定した条件の中で『平和を尊び、他の種族との交流を避ける』とあるが、この『他の種族との交流を避ける』には、自分達の中での大きな変化を受け入れられないと言う意味として捉えられる事も多い。
エルフが森に暮らしているのは、大きな変化を受け入れられないと言う背景があるのかもしれない。
では、最後に以上の点を受けて、なろうでの正しいエルフのあり方について考えて行こう。
まずエルフとは耳が長く尖っていて、森に暮らす長生きの美男美女であり、力に関しても他の種族と比べてもそこまで劣っている訳でも無く、賢くて魔法が得意。
つまりは、『耳が長く尖った森が大好きで、賢い美男美女の長生き魔法使い』と言う事になる。
……これは果たしてエルフなのだろうか? なんか別の存在に見えて来るのは私1人だけだろうか?