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SS遊び~夏色~  作者: エッセイ村 村長&副村長
6/8

選ばれし者達@くまくるの

 ドキドキドキ……。

 自分の心臓の音が皆に聞こえそうなほど大きい。

 大きすぎて耳の奥でキィィンとなっている。


 ドキドキドキ……。

 いつもなら騒がしい教室内部も、物音を立てる人間もなく、唯全員が先生の手元に注目していた。

 ガサリガサリとくじをかき回す音がやけに大きく聞こえて、怖い。


 ドキドキドキ……。

 ガサリガサリ。


 ガサリの音がピタッと止まり、先生は何の躊躇もなく数枚の紙を無造作の教卓へ並べていく。


 その数、全部で十枚。



 先生が紙を広げて黙って眺めている間も、僕達の間は静かで。

 こんな事は滅多にない。



「では……発表するぞ!」



 教室内部は静かで静かで、僕の隣の席の女子がゴクリと唾を飲み込んだ音すら聞こえるぐらいで……。




「大石! 田中! 斉藤! 綾瀬! 和田!」

 名前を呼ばれた子は「よ~っしゃあああ!」とガッツポーズをする。


 僕の名前はまだ出ない。



「広田! 近藤! 野中! 大川! 山本!」


 山本! 山本! 僕の名前だ!

 ガッツポーズをしようとしたら「先生! 山本ってどっちの山本ですか~?」とのんびりした声。


 そうだった!

 このクラスには山本が二人いた!!


 僕はゴクリと唾を飲む。



「山本……小春だな。この字は……」


 きゃあ! っと山本が小さく叫んだ。同時に「嫌だなぁ」とも。

 嫌なら代わってくれよ!

 選ばれし者になれる瞬間なんだからさ!



「さあ、今名前を呼ばれたやつは、明日の放課後、プールの大掃除。水着を持って来いよ」



 一年間使ってないプールは緑色で汚くて、ぬるぬるしてるけど、暑い日にプールの授業が始まる前に入れる唯一の時間なのに。

 六年生しか出来ないから、僕はずっと「プール清掃当番」を楽しみにしてたのに。



「やったあ! 明日遊ぼうぜ!」と笑う者。

「汚い、不潔」といいながらも、笑いを隠せない者。


 選ばれし者達の笑顔は弾けんばかりだ。



「あ~あ……」


 選ばれ損ねた僕達は「汚い水に入らなくてラッキー」と言いながらも全然ラッキーそうな顔をしてない。




 選ばれし者と選ばれ損ねた者。


 ラッキーなのかアンラッキーなのかは……神のみぞ知る。

キーワードは「プール」です。

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