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第27話 激突! 魔界四天王 Aパート

長らくお待たせいたしましたが、更新を再開いたします。

なお、この中断期間中に表記のしかたを一部変更しているため、第一部とは表記が一部変わっております(三点リーダ「…」の二重使用、数値の漢数字表記、一部漢字のひらがな化など)。何とぞご了承ください。


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アバンタイトル


ナレーション「世界大戦はルードヴィッヒひとりの犠牲で終わりを告げ、餓狼戦隊のメンバーも母国に戻っていった。そんな中でアーストリアから別れを告げに戻ってきたリーベに告白したカイは、自分がアニマーレの王族であると知らされ、無事リーベと婚約する。そして、年明と共に地球連邦は正式に発足し、魔界からの侵攻に対する迎撃準備は着々と進むのであった」


オープニングテーマソング「神鋼魔像は勝利の証」


この番組は、ご覧のスポンサーの…


 空が割れた。


 そう表現するしかない現象を目の当たりにして、僕は息を飲んでいた。


 爆心地(グラウンドゼロ)上空三千メートル。時空間異常の発生は、旧十カ国連邦側国境城壁でも、旧アーストリア側国境城壁でも、設置されたセンサーによって数時間前に感知されていた。連邦非常事態法の規定に基づき、最高評議会議長が地球防衛軍に防衛出動を命令する。


 このことを予期して準備されていた防衛部隊が即座に緊急発進(スクランブル)をかけ、爆心地(グラウンドゼロ)を包囲する形での部隊配置が完了する。


 魔道戦艦二十四隻、AG総数二百十六機……すべてがスフィンクス級かブリュンヒルト級の新鋭戦艦と、ドラグーン2型やペガサス2型の改良型量産機もしくは専用カスタム機によって構成された、地球防衛軍の最精鋭部隊だ。


 これだけの戦力を最前線に投入しておいて、なお魔道戦艦、潜水艦合わせて二十二隻、AG三百機以上の予備兵力が残されている。他地域への奇襲の可能性もあるので警戒は怠れない。


 これは緒戦だ。その先鋒には連邦最強の兵が配置される……つまり、僕たちが。


 かすかな武者震いと共に、周りを見回す。戦艦オグナの展開された飛行甲板上に立つ僕のドラゴンの隣には、エメラルドグリーンのオリジナルカラーに塗られたペガサス2型。正式に僕の副官という配置になったフィーアの愛機だ。後ろにはリュー君やマヤたち餓狼戦隊時代からの部下が乗るペガサスが控えている。


 反対側の飛行甲板には、タケル十八世殿下のフライトブースター装備ゴールドライオンと、ホムラ姫のシルバーフェニックス、その直衛に任命されたクーのロプロスはじめ優秀なパイロットが乗るペガサスが立っている。


 時空間異常が上空に発生すると測定されていたので、空戦仕様の機体が前線に配置されている。カスタム機もゴールドライオンのように空戦オプション装備の機体が多い。


 隣には同型艦のスフィンクスが飛行しており、包囲網の反対側にはバルバロッサやティーガー(ツヴァイ)、ブリュンヒルトがいるはずだ。ヒカリはそちら側、リヒトの隣にいる。そして、かつてのルードヴィッヒの旗艦ブリュンヒルトは、今はアーストリア皇帝リーベ一世が座乗する迎撃艦隊総旗艦になっている。その直衛AG部隊はカイが率いている。


 その包囲網の真ん中で、今、空が割れた。時空間の裂け目から、無数の飛行物体が飛びだしてくる。


 見た限り、飛行系の魔物に見える。大きいのは(ドラゴン)だが、他に有翼獅子(グリフォン)飛竜(ワイバーン)も見受けられる。魔界からの侵略軍というので身構えていたんだが、この世界にも普通に存在する魔獣ばっかりじゃないか。


 確かに、(ドラゴン)とかは全長五メートルもあり、鋼鉄より硬い鱗に覆われ、口からはかなり強力な炎を吐く。プロの冒険者でもA級以上でないと簡単には倒せないような魔獣だ。とはいえ、それは生身で一対一で戦った場合の話。軍だったら集団戦で倒せるし、AGが実用化された今となっては脅威となるような相手じゃない。


 思わず拍子抜けしてしまったのだが、そんな僕を叱咤するかのように、魔道通信機から聞き慣れた声が飛び込んでくる。


「あれこそ正に魔界のケダモノ、魔界獣!」


 今は素面で第十三戦隊~オグナとスフィンクスで構成される機動部隊だけど、名前からしてネタっぽい~の指揮官となっているシュン・ヘルム少将こと、父さんの声だ。しかし、相変わらずセリフの方もネタっぽいよ……。


「どこが魔界!? 何の変哲もない(ドラゴン)有翼獅子(グリフォン)飛竜(ワイバーン)じゃないか!」


 と思わずツッコんでしまったのだが……


「いや、待てノゾミ、スケールを確認しろ!」


 フィーアの緊迫した声が飛び込んでくる。


「スケール?」


 問い返しながらも、僕はドラゴンの頭部魔道カメラを思念コントロールして測距機能をオンにする。これでドラゴンの左右の目を構成するカメラの視差から距離とだいたいの対象物の大きさが測定されるのだ、が……


「全長五十メートル!?」


 測定結果は衝撃的だった。遠目に見たら普通の(ドラゴン)に見えたが、通常の十倍の大きさがあるとは! いや、遠目なのにあれだけはっきり見えることで、逆に大きさに気付くべきだったんだな。


 それにしても、怪獣サイズじゃないか! なるほど、AGを人間の身長の十倍のサイズにする必要があるワケだ。


『だから言わんこっちゃないギル! 油断大敵だギル!!』


「うるさいぞ、ギル! そんなことより、出撃だ!! マーサさん、発進管制よろしく」


 僕は、突然口を挟んできた補助頭脳(サポートブレイン)「ギルガメッシュ」に文句を言いながら、マーサさんに呼びかける。


 このギルガメッシュは、新しくドラゴンに追加された装備のひとつで、人格を持った精霊を憑依させた小型魔像(ゴーレム)だったりする。出撃時にはドラゴンのコクピットに収納されてドラゴンのコントロールを補助し、僕が戦術指揮などを行うときにはドラゴンの操縦を一時代行してくれたりするほか、ナビゲートなどもやってくれる。なかなか便利なヤツなんだが、独自の人格を持っているんで、結構口うるさいと思うときもある。


「ドラゴン、進路クリア。発進よろし。気をつけてね」


 マーサさんの声が聞こえると同時に、オグナ飛行甲板の前方に進路ガイドレーザーが照射される。


「了解。ドラゴン、発進する! 変形(トランスフォーム)揚力力場起動リフティングフィールドオン点火(イグニッション)!!」


 マーサさんに応答しながら、僕はドラゴンを軽くジャンプさせると同時に、機体を変形させ、機体全体を覆って揚力を発生させる力場を起動し、脚部に内蔵された憤進(ロケット)の魔道具を点火するキーワードを連続で口にする。


 次の瞬間、ドラゴンの顔面周囲の竜の口が閉じると同時に、背嚢部が開いて、背中に折りたたまれていた機首部分が竜の顔を付けたまま前方に伸びる。両腕部は拳が収納され、ドラゴンクローが前面に押し出されて竜の足を形作る。脚部は腹部の方に折りたたまれると同時に、太股とふくらはぎの部分に収納されていた憤進(ロケット)の魔道具がむき出しになり、すぐにそこから後方に向けて火を噴き出す。一度開いた背嚢はすぐにたたまれると同時に、翼部分が扇状に展開して、ドラゴンの羽を模した大きな翼になる。それと同時に、機体臀部に収納されていた垂直尾翼がせり出してくる。


 これもドラゴンの新機能のひとつ、飛行形態(ワイバーンモード)への変形だ。


 ほぼ三秒ほどで飛行形態(ワイバーンモード)に変形したドラゴンを、不可視の力場が覆う。飛行形態とはいっても、この翼だけでは揚力を得るには足りないので、機体全体を揚力が発生する曲面を帯びた力場で覆うことで、飛行に必要な揚力を得るのである。


 それなら、魔像(ゴーレム)形態のままで揚力力場で覆ってもいいんじゃないか、などと思ったのだが、それだと揚力力場が大きくなりすぎるらしい。飛行形態に変形することで、力場の覆う範囲を最小限に減らすことで持続時間を延ばし、より長時間の飛行を可能にすると同時に、飛行状態での機動性を上げるという意味があるんだそうな。


 ペガサスの運用実績の結果から、飛行機形態の場合は、飛行(フライト)の魔法で飛ばすよりは、普通に翼で揚力が発生する機体を憤進(ロケット)で推進する方が魔力消費量が減ることが分かったんで、ペガサス系の機体も全機が憤進方式に改修されて「2型」になっている。


「フィーア・ガーランド、ペガサス、出る!! 変形(トランスフォーム)点火(イグニッション)!!」


 フィーアの声が通信機から聞こえると同時に、背後で緑色のペガサスが飛行形態に変形すると、同じく憤進(ロケット)を点火してドラゴンに続く。


 右側飛行甲板の全機が飛びだすと、僕とフィーアの二機以外は三機で編隊を組む。


 左側飛行甲板からは、ゴールドライオン、シルバーフェニックス、ロプロス、ペガサス二機が飛び立って、同じく二機と三機で編隊を組む。


 周囲の魔道戦艦からも同様に飛行型AGが飛び立つと編隊を組み、異世界の魔獣目がけて突進していく。


 と、包囲網の反対側の飛行戦艦の中から、ひときわ巨大な幻影が空中に投影される。以前にルードヴィッヒも使っていた魔法技術だな。


 ただ、今回投影されたのはリーベだ。今回の防衛作戦の名目上の総司令官であり、全権外交官でもある。


「わたしは地球連邦最高評議会特使リーベ・アーストリアです。異世界からの侵入者に警告します。あなたたちは地球連邦の領空に侵入しています。敵対する意志がない場合は、ただちに停止しなさい。その上で交渉を行いたいと思います。もし停止しない場合は、敵対意志があるものとみなし、防衛に必要な措置を行います。また、そちらからの攻撃があった場合は、宣戦布告と判断します」


 同じ内容を、僕らの標準語(つまり日本語)と、魔法語(なんちゃって英語)で繰り返して布告するリーベ。


 父さんたちが『大爆発ビッグエクスプロージョン』の際に経験したことからすると、魔族は一方的に侵略意図を抱いているらしいから、こんな警告をしても無駄なんじゃないかと思うんだけど、異世界との戦争であれ、形式は整えないといけないらしい。


 ところが、リーベのように顔こそ見せないものの、意外にもすぐに魔族側から返答があった。それも、僕らの使う標準語で。


「そのような警告は無意味である。第二世界の下等人類よ、偉大なる我ら魔族の望みは、このような下らぬ世界の侵略などではない。お前たち下等人類が無様にあがく姿を見ることだ。せいぜい無駄な抵抗をして我々を楽しませるがよい。降伏してもかまわぬが、降伏条件は一切認めぬ。完全なる無条件降伏のみ認めよう。いずれにせよ、お前たちの生殺与奪の権は我らにある。抵抗して死ぬか、降伏して我らの楽しみのために殺されるか、好きな方を選ぶがよい」


 野太い男の声によってなされた傲慢極まりない宣言。これを聞いて、父さんたちが何で話し合いなんかをまったく考えずに地球防衛のための世界統一と軍備の増強を急いでいたのかがよくわかった。話の通じる相手じゃない!


 リーベも同じことを思ったんだろう。遠目に見えるだけだが、キッとした顔になって宣言する。


「それでは、我々地球連邦は、自らの生存権をかけて魔界に対して宣戦を布告します。全軍、攻撃開始!!」


 次の瞬間、僕らの背後に飛行している全魔道戦艦の主砲が火を噴いた。口径四十センチ、四十六センチの無属性魔力弾が巨大魔獣~魔界獣~目がけて宙を裂いて飛んでいく。


「全機、突撃!!」


「了解!!」


 通信機から聞こえる父さんの命令に答えながら、僕たちも翼を翻して巨大な敵目がけて突っ込んでいった。


 さあ、戦いだ!!

アイキャッチ「神鋼魔像、ブレバティ!!」


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次回更新は、別連載「魔王様の邪悪な邪悪な秘密計画」http://ncode.syosetu.com/n6957dq/更新後になりますので、少々お待ちください。


なお、休止期間中に「四百年間童貞を守って魔王になったけど、女性との付き合い方がわからない件」http://ncode.syosetu.com/n4550dn/を完結させております。ジャンル別「コメディー」では半月くらい一位を取っていたので、よろしかったらご覧ください。全三十三話十二万字ほどの作品です。

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