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第26話 偽りの戦争 Aパート

アバンタイトル


ナレーション「戦争を終わらせるためにルードヴィッヒを討つというシナリオに従って、最前線で兵を鼓舞する演説を行っていたルードヴィッヒを襲撃したノゾミたち。そこにルードヴィッヒが用意していたのは、通常のAGの3倍以上の巨体を持ちながら魔法も使えるという怪物『ルードヴィッヒ・B』であった。それに対抗して3機合体『ブレバティ・インフィニティ』を披露したノゾミたちは、苦戦しながらもルードヴィッヒ・Bを倒したものの、その中から脱出用の総統専用AG『ルードヴィッヒ・A』が現れたのだった」


オープニングテーマソング「戦え、ボクらのブレバティ」


この番組は、ご覧のスポンサーの…


「胴体の中身は空っぽだったのかよ…」


 と、思わずつぶやいた僕の声に反応したわけではないのだろうが、仮面親父が何かに気付いたように叫ぶ。


「そうか、アレはAGじゃなくて超巨大な強化鎧(パワード・アーマー)だったんだな!」


「いかにも左様! 吾輩の強化鎧(パワード・アーマー)構想は本来は人間を核にしてその動きをトレースする身長5~6メートル程度の重装甲、重武装の機動歩兵を作る案じゃったが、それをスケール10倍にしてAGを核にする仕様に変更したのじゃよ!!」


 自慢気に叫び返すガーランド博士(おっさん)。そういえば、この人の考案した強化鎧(パワード・アーマー)構想は父さんのAG構想に負けてお蔵入りになったとか以前に言ってたよなあ。


「待てよ、お前の強化鎧(パワード・アーマー)構想が俺のAG構想に負けたのは、魔力強化の機能がついてなかったからだ。ってことは、さっきの魔法は!?」


「気付きおったか。あれは中の18メートル級AGであるルードヴィッヒ・Aの魔力を使っていたに過ぎんのじゃよ。57メートルの巨体の魔力を使えたワケではなかったんじゃな」


「ハッタリだったのかよ!!」


 仮面親父に指摘を受けて、今更種明かしをするガーランド博士(おっさん)に思わずツッコんでしまった。


「その通りだよ。最初にああやって魔法を使って見せれば、勝手に誤解するだろうと思ったのでね。実際にはルードヴィッヒ・Bの魔力は、機体を動かすことと、機体内蔵の固定兵装を稼働させるのにしか使う事はできぬのだ」


「じゃが、その有り余る魔力を機体の動作に使えたからこそ、あの巨体に似合わぬほど俊敏に動作させることが可能だったのじゃ! どうじゃ、我が強化鎧(パワード・アーマー)も捨てたものではあるまい!!」


 自分へのツッコみかと思ったらしいルードヴィッヒが答え、それにガーランド博士(おっさん)が補足する。だけど、その発言を聞いて、僕はガーランド博士(おっさん)が何で今までそれを隠していたのか分かってしまった。


「あんた、それを実戦で証明するために今まで黙ってたんだな!?」


「だーっはっはっは、いかにもその通り! スマンのう」


「利敵行為じゃないか!! あんた本当は未だにルードヴィッヒの手下なんじゃないだろうな!?」


「いやなに、婿()殿()なら大丈夫と信じておったからじゃよ」


「ぐっ」


 婿殿などと呼ばれて一瞬口ごもってしまった。ここでそれを言うのは卑怯だろう!


「お前、意外にチョロいのな」


 ああ、カイに呆れられてしまった…クソ、反撃してやる!


「そう言うお前はどうなんだよ? リーベにはきちんと言ったのか!?」


「この戦いが終わったら言う積もりで約束してある」


「ええ、何か重要な話があると聞いていますが」


「死亡フラグじゃねえか!!」


 カイとリーベの返答に思わずツッコんでしまった、のだが…


「博士とかが死亡フラグって言ってたの聞いたことがあるけど、よく考えてみたら物語の主人公とかヒロインがそれやったって死なねえじゃんか。オレはともかく、リーベはヒロインだろ」


 む、それは確かに一理ある。あるんだが、この場合の最大の問題点は…


「ヒロインに恋する脇役って一番死にやすいパターンだぞ」


「なら、これで生き残ればオレも主人公だな!」


「…頑張れよ」


 思わずバカ負けして激励してしまったが、そのアクティブすぎる前向きな思考には正直感心する。まあ、この期に及んでこいつらを殺させはしないけどね!!


 しかし、これだけ露骨な発言してるのに「?」って表情を浮かべてるリーベの恋愛音痴っぷりは本物だな。


「そちらにも何やら事情はありそうだが、そろそろ続きを始めようではないか。この有様になってしまったルードヴィッヒ・Bだが、まだ別の使い方もあってね」


 置き去りになってたルードヴィッヒが焦れて口を挟んできた。こっちは魔力空っぽに近いが、それでも合体してる分、機体の身長は2倍以上、体重は3倍だ。格闘戦に持ち込めば何とかなるだろうと思っていたのだが…


 ルードヴィッヒ・Bのバラバラになっていた四肢のうち、両脚部分をまるでバズーカ砲でも構えるような形で、足の裏を前にして両肩に担いだルードヴィッヒ・A。


「レッグキャノン!」


 ルードヴィッヒがキーワードを唱えると同時に、足の裏から長大な砲身が突き出してきたのである。


「おい、足の裏に大砲仕込んでるとか、どこの無敵鋼人だ!?」


「確かに元ネタはアレじゃな。飛行形態は無理だが、戦車形態への変形は仕込んでおいたのじゃよ。結局使えんかったがの」


 思わずツッコんでしまったのだが、ガーランド博士(おっさん)に肯定されてしまった。


「だが、こういう場合にルードヴィッヒ・Aのオプション兵装としても使える設計なのだよ。さすがガーランド伯、無駄が無い。さあ、喰らいたまえ、発射(ファイア)!!」


 そのキーワードと同時に両肩に担いだ砲身から、結構強力な無属性魔力弾が発射されたのを、慌てて回避する。


「魔道具の大砲なので自前の魔法と違って誘導が効かないのが難点だな。だが、それでも口径20センチは重巡の主砲クラス。魔力防壁(マジック・シールド)を張ってあるオリハルコリウム装甲にもダメージを与える威力があるだろう。牽制の役には立つ。発射(ファイア)!」


 そううそぶきながら大砲を乱射してくるルードヴィッヒ・A。くそ、これじゃ迂闊に近づけない。


 と、そこである事に気付いて思わず叫んでしまう。


「何で重巡の主砲級の魔力弾をそんなに乱射できるんだ!?」


 ルードヴィッヒ・Bの脚部は確かに大きいので畜魔量も結構あるようだが、それにしても大威力の魔力弾をこのペースで乱射するのは難しいはずだ。


「ガーッハッハッハ、実はルードヴィッヒ・Bは胴体中央に魔道エンジンを配置できない関係上、両腕と両脚に魔道エンジンが仕込んであるのじゃよ! 片腕や片足がもがれても戦闘能力を減じないように独立連動システムと組み合わせてあったんじゃが、さすがにバラバラにされると役に立たんかったがの」


「おっさあぁぁぁぁん!!」


 相変わらず自慢気に語るガーランド博士(おっさん)に、もう外聞も気にせずおっさん呼ばわりしてしまった。


「さすがに、あのペースで打ち続けると充魔が間に合わんが、実は腕にも内蔵火器は仕込んであってなあ…」


 ガーランド博士(おっさん)の言葉に合わせるかのように、ルードヴィッヒ・Aが両脚を脇に置くと、今度はルードヴィッヒ・Bの両腕を肩に担ぎ、「アームガン」のキーワードと共に腕部の内蔵武器を展開する。


「さっきはセンジュキャノン・レインボー用に魔力を温存しておいたから使わなかったが、こちらは口径15センチとやや小口径な分、無駄話している間に砲撃用の魔力が充魔されているのだよ。発射(ファイア)!」


 さっき、こっちが無駄話してたのを邪魔しなかったのは、そういう意図もあったのかい!


 腕の砲の口径は軽巡の主砲級なのだが、実は陸軍の野砲としてなら最大級の口径であって、決して侮れない。この機体の装甲なら魔力防壁(マジック・シールド)してあれば遠距離なら耐えられるだろうが、至近距離まで突っ込んでいったら貫通される危険性がある。


 ドラゴンならかわして突っ込む自信はあるが、インフィニティは機体が大きい分、どこかに喰らってしまいそうだ。クソ、こういう場合は逆に大きいのが仇になってるな。


 ん? それならいっそ…


「おい、融合(フュージョン)はどうやって解除するんだ!?」


「キーワードは融合解除(フュージョン・アウト)だが…どうする積もりだ?」


「デカいから逆に弾に当たりやすいんだ。もう魔力が空なんだから分離して3機で接近戦に持ち込む方がマシだろう!」


 拡声(スピーカー)を切って外に聞こえないようにしてから、魔道通信機で仮面親父に分離方法を聞いて、これからの方針を説明する。


「なるほどな」

「分かった」

「了解」


 仮面親父だけでなく、カイとリーベも僕の意図を了解してくれたので、弾を避けやすいようにルードヴィッヒ・Aから距離を取るように飛び離れて…


「せーの」

「「「融合解除(フュージョン・アウト)」」」


 3人声を合わせて分離のキーワードを唱えると、即座に合体したときと逆のプロセスで機体が分離する。


「さあ、3機で包囲して接近戦に…ってぇ、ちょっと待てや!!」


「オイ、この魔力残量は!?」


飛翔(フライト)も維持できません!!」


 さっきまでは、450トンのインフィニティを何とか飛翔(フライト)で飛ばすだけの魔力も残っていたのだが、今の分離で魔力をほぼ使い切ってしまったのだ。


 ブレバティ・シリーズの魔道エンジンは優秀で、機体を動かすだけの魔力はその場で吸収・変換できるし、少しずつなら戦闘しながらでも魔力が貯まっていく。物理防壁(フィジカル・シールド)魔力防壁(マジック・シールド)も消費魔力量はそんなに多くないから何とか維持し続けられる。


 しかし、飛翔(フライト)の系列の魔法は魔力をバカ食いするから、使い方に習熟していて消費魔力量を抑えられる僕たちでも、完全に空の状態になってしまっては維持できない。


 3機に分離して的が分散したのと、距離をとったおかげで機体の運動性能だけでもルードヴィッヒ・Aが放ってくる魔力弾を回避はできるのだが、これじゃあ迂闊に近づけない。


「クソ、これ詰んでるぞ!」


 状況の悪さに思わず愚痴をこぼしてしまったのだが…


「弱音を吐くとはお前らしくもない」


「えっ!?」


 魔道通信機から聞こえてきたのは、意外な声。だが、聞き間違えるはずもない、今となっては誰よりも愛しい人の声。


「どうしてここに!?」


「父上の命令でフライトブースターを持ってきたんだ。私だって、役に立つところを見せなければな!!」


「フハハハ、『こんなこともあろうかと』秘かに手配しておいたのじゃよ。これで魔力不足は何とかなるじゃろ?」


 フィーアの声に続けて、ガーランド博士(おっさん)が種明かしをする。畜生、やられた!!


「魔力増槽(タンク)を装備して飛んできたから、魔力にはかなり余裕がある。さあ、合体するからジャンプしろ。今だ、合体(ユナイト)!」


 フィーアの意図が分かったので、彼女がキーワードを唱えるのとほぼ同時に弾を避けながらジャンプする。すると、飛行状態のフライトブースターが、そのままドラゴンの背面に近づいて合体してくる。


「よし、ロック完了! 制御を渡すぞ、ユーハブコントロール」


「アイハブコントロール。よし、魔力が来た!!」


 機体の制御を受け取ると同時に、フライトブースターの魔力がドラゴンと一体になったことを感じる。ドラゴンのフル充魔状態には及ばないが、それでも4割くらいの充魔量にはなっている。よし、これだけ魔力があれば、あのルードヴィッヒ・Aが相手だって何とかできそうだ。


 リヒトを相手にしたときは沈黙(サイレンス)で魔法を封じたが、今回それをやるとルードヴィッヒを転移させるタイミングを外す危険性がある。また強制転移させる以上、瞬間移動妨害(テレポート・ジャマー)も使えない。とはいえ、シナリオ上からするとルードヴィッヒが逃げることはないだろう。


 よし、正面から一発で決める!


「フィーア、しっかりつかまってろよ! ドラゴン・ブレード、超音速飛翔スーパーソニック・フライト点火(イグニッション)!」


 燃費は悪いが超音速飛翔スーパーソニック・フライトをかけた上でフライトブースターのロケットに点火し、加速を開始する。上昇して大きくループしながら短時間で超音速まで加速していく。


 ルードヴィッヒ・Aは手持ちの魔力砲をドラゴンに向けて連射するが、弾速が遅いので全然ついてこれていない。


 しかし、ここから先は別だ。ループの頂点から、ルードヴィッヒ・A目がけて直線コースで突撃する。ジグザグ飛行して速度を落とすことはできないので、相手からは狙いやすくなるだろう。ルードヴィッヒ・Aが充魔が終わったらしい脚部の砲に持ち替えて射撃を再開する。


玻璃被膜(グラス・コート)


 この前、ヒカリ…じゃなくてミス・アトミックが使った魔法だ。ドラゴン・ブレードをコーティングして耐久性を上げる。


 超音速で突進しながら、真正面から襲ってくる魔力弾をドラゴン・ブレードで受け流し、はじき、斬り飛ばす!


 加速のために少し距離が離れてしまったが、既に超音速近くまで加速しているので、一気に距離が詰まる。


 さすがに20センチ級の魔力弾が相手だと、玻璃被膜(グラス・コート)をかけたドラゴン・ブレードであっても2~3発を受ければボロボロだ。だが、もうルードヴィッヒ・Aは目の前!!


 バキィン!!


 ドラゴン・ブレードがへし折れると同時に投げ捨てる。だが、もう魔力砲を撃つ余裕はないはずだ!


 しかし、その刹那にルードヴィッヒは、この戦闘で最初にして最後の攻撃魔法を放ってきたのだ。


雷撃サンダー・ボルトォォォッ!!」


結合(ボンディング)!」


 お互いの呪文が交錯する。僕が唱えたのは、攻撃魔法ではなく分子結合を強化する魔法。


 バガァァァァァァァン!!


 ルードヴィッヒの雷撃(サンダー・ボルト)で、ドラゴンの頭部と胸部が吹っ飛ぶ!


 ここまでダメージを喰らったのは初めてで、痛覚などはシンクロしていないにせよ、さすがにショックは大きい。しかし、それを覚悟していた僕はその衝撃に耐え、狙い通りに右の(こぶし)、分子結合を強化した鉄拳をルードヴィッヒ・Aの胸板に叩き込む。


 超音速で、フライトブースターの重量も含めると200トン近い重量の物質が突っ込んでくるのだ。その衝撃破壊力は相当なものになる。ましてや、それを右拳ただ1点に集中したのだ。いかに強固強靱なアダマニウム合金であろうと、耐えることなどできない!!


 ドガァァァァン!!


 ドラゴンに一瞬遅れて、ルードヴィッヒ・Aの胸元にも大きな風穴が空き、そのままドラゴンの突進に巻き込まれる形で大きく地面を割りながら吹っ飛ばされていく。


逆噴射(リバース)


 すさまじい衝撃と轟音に耐えながら、冷静にロケットを逆噴射させ、同時に超音速飛翔スーパーソニック・フライトをコントロールして急制動をかける。


 それでも、数キロメートルは地面をえぐり、ようやく2機とも停止する。お互いにボロボロだが、あらかじめかけておいた生命感知(センス・ライフ)で感知している生命反応からは、ルードヴィッヒも、フライトブースターのコクピットにいるフィーアも無事であることが分かる。


「大丈夫か、フィーア?」


 それでも、怪我をしている可能性はあるので聞いてみる。


「ああ、大丈夫だ…が、それにしても無茶すぎるだろう!」


「悪い。だけど、この戦争を終わらせる最後の攻撃だからね、なるべく派手にやりたかったのさ」


「もの凄い勢いで飛んでいったとはいえ、ただのパンチじゃないか!」


「そうさ、最後は、最も原始的な技で決めたくなったんだ」


 フィーアのツッコみに本音で答える。そう、最初の巨大ロボ、28番目の鋼鉄人間には武器も何も無い。ただ、その巨大な腕力で殴り倒すことが必殺技だったんだ。何となく、そんな技で決めたくなったんだ。


 と、そこで胸部を貫通され魔道エンジンを完全破壊されたルードヴィッヒ・Aから声が聞こえてきた。


「フフフ、完敗だな。もはやこのルードヴィッヒ・Aに残された力は無い。この首を打って地球統一のはなむけにするがいい」


 お、ルードヴィッヒの方も無事だったようだな。それでは、シナリオ通りに話を進めるとするか。とはいえ、戦闘継続中ならコクピットを貫いてしまっても「やむを得なかった」で済むが、この状態からだと少し工夫しないとな。


「ルードヴィッヒ総統、選ぶ道が違ったとはいえ、あなたも我々も地球統一を志すという目的地は同じだった。この戦争で死んだ者はいない。ここで降伏して、あなたの力を来たるべき真の敵との戦いに生かすつもりはないか?」


 改めて降伏勧告をしてみる。ここで拒否されて、僕がトドメを刺す形にすれば、タイミングも計りやすいだろうから余裕を持ってルードヴィッヒを転送収容できるはずだ。


「フ、今更降伏などできるものか。だが、我が部下たちに語るための時間を貰えないだろうか」


「いいだろう」


 そこで、ルードヴィッヒはあらためて遠話(テレフォーン)を唱えると演説をはじめた。


「忠勇なる我が兵士諸君、親愛なる我が国民諸君! 私の最後の言葉を聞いて欲しい。無念ながら、私は敗れた。だが、私の夢、理想たる世界統一は成った。私の手によらずとも、そして独裁の合理を欠くといえども、世界が統一政府によって運営されるということは実現したのだ、だから…」


 そこで、一旦言葉を切ってから、あらためて宣言する。


「私は、地球帝国を解散する。無益な抵抗はやめ『地球連邦』に従ってもらいたい。地球帝国の行為のすべては、この私、ルードヴィッヒが責を負う。諸君らに地球征服の責めを負わせることはない。安んじて、新たなる『地球連邦』の新秩序のために、そして真の侵略者から地球を守るために働いて欲しい」


 そして、ひときわ大きく声を張り上げて言う。


「よいか、私の望みは、地球人類が一丸となって侵略者と戦うことだ。本当に私に忠誠を捧げてくれていたのなら、私の最後の望みをかなえて欲しい。決して、私の仇を討とうなどとは思わないで欲しいのだ。それは、断じて望むところではない。それでは諸君、さらばだ。地球全人類の勝利を祈っている。地球万歳!」


 そして、遠話(テレフォーン)を切ると、改めて僕に向かって語りかける。


「ありがとう、ノゾミくん。もう思い残すことは無い。介錯を頼む」


「分かった」


 ドラゴンも頭部のカメラが破壊されて外部が見えない状態だが、この状況なら問題ないのでコクピット前面のハッチを開き、直接肉眼で様子を確認する。


 ルードヴィッヒ・Aの胸には、まだドラゴンの右腕が刺さっている。折り重なるようにして地面に倒れていたのだが、ここでドラゴンの残り魔力を使って引き起こす。こちらも魔道エンジンを破壊されてしまったのだが、まだ魔力残量はあるので、内側からルードヴィッヒ・Aを破壊するくらいの魔法は使えるだろう。


 さて、仮面親父よ、しっかりやってくれよ…と思ったところで、空間魔法の発動を感知する。お、これで強制転移のタイミングに合わせてルードヴィッヒ・Aのコクピットに向けて魔力弾でも放てば…ん、ちょっと待て、この空間魔法は、強制転移のものは違う!?


「何だ!?」


 ガスッ!


 次の瞬間、ルードヴィッヒ・Aのコクピットが、()()から貫かれていた。


「ルー、あなたが死ななければならないなら、せめて、わたしが殺してあげる」


 押し殺すような姫様の声を聞きながら、僕はルードヴィッヒ・Aのコクピットを貫いて前面に穂先を現したシルバーフェニックスのランスを呆然と眺めることしかできなかった。

アイキャッチ


「神鋼魔像、ブレバティ!」

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