第21話 陰謀は憎しみ深く Aパート
アバンタイトル
ナレーション「ルードヴィッヒ打倒のためにガーランド大将を寝返らせる、というシナリオの打ち合わせのためにアインと密会するノゾミ。そこでガーランド大将への不満で意気投合した2人は、偽の暗殺計画でガーランド大将を驚かせようと陰謀を巡らせる。そこに偶然現れた三流マスコミを誤魔化すために戦うノゾミとアイン。密かに三対一の状況に追い込まれていたものの、それを見抜いて辛くも勝利したノゾミだったが、翌朝の新聞を読んで三流マスコミとも思えない取材力に戦慄するのであった」
オープニングテーマソング「戦え、ボクらのブレバティ」
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「ガーハッハッハ、今回はTPGを何と二個小隊も連れてきたぞ! ホワイトフォックス、オレンジフォックス、ブルーフォックス、イエローフォックス、レッドフォックス、グリーンラクーンドッグの6機にそれぞれ違うパーソナリティを付与しており、戦法も違う。どうじゃ!?」
「だから、どうして最後の2機だけネタ名前なんだよっ!?」
レッドフォックスはまだ色のバリエーションと主張できるかもしれないけど、狸は完全にアウトだろう。
と、ついツッコみを入れてしまったが、「予定」通りガーランド大将が魔導戦艦レオパルドを率いて強襲してきているのである。ここはイモータル市北東郊外。毎度おなじみ敵襲の舞台となっている荒れ地である。もし、このまま戦争が続くなら、かつての埼玉の石切場並みの頻度でここが使われる事になりそうだ。
「レッドフォックスは単なる色のバリエーションじゃ。グリーンラクーンドッグはドライのパーソナリティを移植してある。防御重視で重装甲化したところ体形が太めになったので名前も変えただけじゃ」
予想通りにうそぶくガーランド大将。一応理屈はつけてるけどさあ…
「それだけではないぞ。今回このレオパルドは何と吾輩1人で操っておる! ワンマンオペレート化に成功したのじゃ!! これで戦争が変わるぞ」
「…乗組員が全自動化に反対して反乱を起こしたりしなかったのか?」
「どこの宇宙戦艦の話じゃ!?」
ついネタの応酬をしてしまったが、つまり今回の戦闘に参加している敵側の人員はガーランド大将以外は、無人機の他に「護衛」として一緒に出撃してきているノイエ・シュバルツ・ゲシュペンスト三兄弟のみという事になる。
なるほど、「誘拐」シナリオのために人員を極力まで減らしてきたという事か。しかし、これは好都合だ…僕たちの「陰謀」にとっても。
「それでは早速戦闘しようではないか」
「済まないけど、遊ぶ積もりは無いよ。作戦開始!」
ガーランド大将の言葉に応じて、僕も今回出撃してきているメンバーに戦闘開始を命令する。僕を含めて4個小隊全12名。魔導戦艦こそいないが精鋭揃いだ。
「言っておくが、この前のような奇策は通じんぞ。瞬間移動妨害! …あ?」
「「「「「「「「「「「「瞬間移動」」」」」」」」」」」」
きれいに僕たちの呪文がハモり、次の瞬間には2機1組で敵のTPGの前後や左右に転移する。
僕のドラゴンとリュー君のドラグーンがホワイトフォックスを前後から挟む。僕のドラゴン・ブレードは防御したホワイトフォックスだったが、背後からリュー君のロングスピアに腹部の制御ユニットを破壊される。
同じように、カイとロキがブルーフォックスを、クーとマヤがイエローフォックスを、リーベとリーフさんがオレンジフォックスを、ジャヴァリー殿下とフィリアさんがレッドフォックスを、タケル殿下とホムラ様がグリーンラクーンドッグを撃破している。
反応速度が非常に高いTPGなので、1対1なら転移にも対応できたかもしれない。しかし、2機1組の奇襲に対して有効な反応はできなかった。いずれの機体も、片側の攻撃は防いだものの、もう1機に制御ユニットを壊されて動きを止めていた。
「何じゃ、どうして瞬間移動妨害が発動せん!?」
本気で驚いているガーランド大将。そこに冷静な声をかける男が一人。
「それは私が細工しておいたからですよ、父上」
「なに!?」
「総員撤退。ここから先は僕とアインの仕事だ」
「「「「「「「「「「「了解。瞬間移動」」」」」」」」」」」
僕の命令を受け、即座に僕以外のメンバーが転移して消える。彼らには今回の「作戦」について概要を知らせている。ガーランド大将を「捕虜」にする作戦。その実行部分を直接「見ている」人間は少ない方がいい。それが撤退命令の表向きの理由だ。
表があるなら裏もある。彼らには「陰謀」については知らせてないんだ。ここから先は、僕とアインたち三兄弟だけが軽く楽しむための悪戯なんだから。
あとは、ガーランド大将に悪戯だと説明する必要があるから、受け入れ側の魔法陣を操作する父さん…もとい魔術師艦長にだけは説明したけどね。最初は僕たちの「陰謀」を見たがってたけど、ガーランド大将のびっくり顔が見られるなら、と受け入れ側の操作をしてくれることになった。
「何のつもりじゃ? せっかくTPGを用意してきたのじゃぞ。少しは戦闘データを取らせてくれてもよいではないか」
「その点についてはお詫びしますよ。『最後に』そのくらいは楽しんでいただいても良かったかな、とは思っているのですが」
文句を言うガーランド大将に、わざとらしく「最後に」を強調しながら答える僕。それを後追いするようにアインが補足していく。
「ですが、我々の方がそうした茶番に付き合う気が無かったのですよ。率爾ながら父上、ここで死んでいただきます」
「な、何じゃ、何を言っておる!?」
「父上、あなたは理想主義に過ぎた。世界の統一は必要でしょう。ルードヴィッヒ様の理想も分かります。そのために、誰かが泥をかぶらなければならない事も。しかし、我がガーランド伯爵家の事も少しは考えていただきたかった」
「…どういう意味じゃ?」
「父上、あなたにとっては伯父上方が亡くなった事で棚ぼたで手に入った家かもしれませんが、私は嫡男なのですよ。ガーランド伯爵家を末代まで伝える貴族としての義務があるのです。ルードヴィッヒ様に仕えてアーストリアを滅ぼしたのは人類救済の大義のためと言い張ることもできるでしょう。しかし、そこから更にリーベ様のアーストリア帝国復古のために寝返ったのでは、それまでの行為は何だったのかという事になります。ガーランド伯爵家の名は汚辱にまみれる」
「それはやむを得まい。誰かがやらねばならん事じゃ。何も知らん他人の評価など気にするほどの事でもあるまい」
「父上はお強い。しかし、我が一族にはそこまで心臓に毛が生えたような者ばかりではないのですよ。私は次期頭領として、父上が気に掛けていない彼らも守らなければならぬのです。我が家の家名を辱めぬためには、裏切りの汚辱を消す必要がある。例えば、当主がその責任を取って自害する、というような事が」
「何じゃと!?」
「ご安心召されよ、父上。あなたが成さねばならぬ事は、すべて我々が引き継ぎます。世界救済は必ずや成し遂げてご覧にいれましょう。草葉の陰にてお見守りください」
「ま、待て、アイン! オイ、ノゾミ、お主も何とか言ったらどうじゃ!?」
かなり迫真のアインの演技に、かなり本気で焦りだしたガーランド大将が僕に振ってきた。よしよし、ここは一つ入魂の演技を見せてあげようか、フフフ…
「この戦争では犠牲者は出したくない。そう言っていた人がいたよ。でも、その人自身が犠牲になってしまった」
「は?」
あ、ちょっと補足しておくと、僕は嘘は言ってないよ。ほら、ルードヴィッヒは人を殺したくないと言ってたけど、結局自分自身が「死ぬ」事になっちゃったじゃない。もう確定しているんだから過去形で言ってもいいよね。
「連邦から1人戦死者が出たなら、帝国からも1人の戦死者が出て然るべきじゃないかな。有能な魔導研究家にして軍の司令官。そういう人が死んだのなら、同じような人が死ぬべきなんじゃないかな。違うかい?」
これは、どっちも仮定表現です。この前、そうやって騙されたんだから、僕も同じように仮定表現を使ってもいいよね。
「ちょっと待て、お主、まだシュンに会っておらんのか?」
「おいおい、父さんに会うには『西の方』に行かなきゃいけないだろ?」
この世界でも死後の世界は西方にあるという伝説が昔はあった。輪廻転生の宗教観もあるから、死んだ後の魂は西の方に旅立って、そこにある神の地で生まれ変わって次の人生に転生するというのだ。この世界では大地が球体である事も相当に昔から知られていたんだけど、もっと古くにはそういう伝説もあり、今でも言葉としては残っているんだ。
だから、ここではあえて誤解させるような意図で使っている。ここでも僕は別に嘘は言ってないよ。だって、本当に父さんは現在の場所から西に居るんだもの。まあ、正確には南西だけどね。それに「会ってない」とは一言も言ってないし。
いや、実際にも会ってないのかな。僕が会ったのは魔術師艦長だし、一度も仮面の下の素顔を見たことは無いもんね。
「ま、待て、お主の父親は実は…」
「父上、見苦しいですぞ。最期くらい潔く伯爵家当主として見苦しくない姿を見せてください」
説明しようとするガーランド大将を遮るアイン。グッジョブだね。
「父さんが寂しがっているからね。同じ所に行ってもらおうか!」
同じ所ってのは、もちろんイモータル市の対人転送魔法陣の事だよ。あの世だなんて僕は一言も言ってないし。 まあ、父さんが寂しがってるかどうかは多少疑問だけど、ライバルなんだから、口ではどうこう言っても会ったら嬉しいんじゃないかな。
…って、よく考えたら戦闘開始の前から魔導通信機つなげっぱなしにしてるんだから、このセリフ聞いてるよな、あの人。後で「寂しがってなんかないぞ」とか文句言われそうだ。まあ、いいか。
「父上、あなたがいけないのですよ」
かなり気合いと殺気を込めて言い放つアイン。…実感こもってるなあ。相当に鬱屈してたんだな。
「超電磁パンチ」
僕がキーワードを口にすると同時に、ドラゴンの右腕からレールが展開される。
「拘束。父上、無駄ですよ。先ほど瞬間移動妨害と一緒にレオパルドの瞬間移動機能も破壊しておきました」
アインが拘束の魔法でレオパルドを固定する。いくらカスタムタイプの一眼巨兵に乗っているとはいえ、全長300メートル近く、重量は十万トンに及ぼうかという巨大戦艦を固定するのだから、アインの魔法も大したものだ。これを拘束破壊で解放するには、同じくらいの魔力が必要になるが、戦艦を操作はできても、その魔力を使えるわけではないガーランド大将には無理な話だ。
「瞬間移動」
僕は発射直前の超電磁パンチを維持したまま、レオパルドの艦底部、ガーランド大将の生命反応がある艦橋の真下の位置に転移する。
「喰らえ、超電磁直撃拳!!」
「待て、お主ら何を考えているのじゃ!? うおおぉぉぉぉっ!!」
発射されたドラゴンの右腕は、やすやすとレオパルドの装甲を貫通し、艦底部から艦橋を突き抜ける。高張力綱と炭素結晶、それにミスリウムを重ねた頑丈な装甲板を何層も貫いたので、さすがにその速度は相当に落ちている。あれなら、回収も簡単だろう。
そして、もちろんあらかじめ戦闘開始前にかけていた生命感知の魔法でガーランド大将の生命反応が消えるのを感知する直前に、しっかりと空間魔法の反応があったことを、艦底部にいた僕は気付くことができた。うん、父さんグッジョブ。通信機越しに僕の声を聞きながらタイミングを計ってたんだろうけど、少し早めにしっかり発動できたようだ。
この転送魔法陣の魔力反応はかなり微弱な反応なので、レオパルドの至近にいたアインたち三人も気付くことができただろうけど、もう少し離れていたら気付かないだろう。これなら、ルードヴィッヒを「殺す」時に使っても、他人からは気付かれないで済みそうだ。実験成功だな。
僕が艦底部から移動すると、ほぼ同時に空から右腕が落ちてきたので牽引光線で捕まえて、レールを収納しながら元のようにセットする。
アインも拘束を調整して、操縦者を失ったレオパルドを地上に軟着陸させていた。良い腕してるよ。
「スッキリしたぜ!」
「うまくいき申したな」
ガーランド大将と話すのはアインに任せていたツヴァイとドライも、してやったりといった感じで陽気に話している。きっと、こいつらもアインと同じように父親に散々振り回されて鬱屈してたんだろうなあ。
「これはどうするかな? 艦橋を破壊してしまったから修理しないと飛べないが、ここで応急修理するというのも難しそうだ」
「後でオグナとスフィンクスに取りに来させよう。魔像形態になれば2体がかりでドックまで運ぶことも…」
「待て、貴様らっ!!」
僕とアインの言葉を、誰かが遮る。え、この声は、まさか!?
「「「「フィーア!?」」」」
僕とアインたち3人の声が重なる。
「ちょっと落ち着いてフィーアっ!」
声の聞こえてきた方角を見れば、見慣れた角付き一眼巨兵と、それを抑えようと後ろから肩に手をかけているライガーが宙に浮かんでいた。
「ど、どうしてここに?」
「アインたちが何か企んでるっぽいんで、フィーア誘ってこっそり見に来てたんだよね。あはははは…」
動揺しながら尋ねる僕に答えたのは、フィーアではなくヒカリだった。乾いた笑いが続いているのは、たぶん真相を見破ったからだろう。
「フィーア、落ち着いてってば、アレ、たぶん違うから!」
「何が違うっ! 父上が、父上がぁっ!!」
あ、あ、あ、完全に頭に血が上ってるよ。ダメだ、ヒカリの話を全然聞こうとしてない。これって、完全に僕が彼女の父親を殺したことになっちゃってるよね!?
「ヒカリぃ、お前、なんつー事をしてくれたんだ!? 許さん! ボロ雑巾にして捨ててやるッ!!」
「それ、実の妹の方に言うセリフじゃないから!」
思わずネタセリフ入りでヒカリに八つ当たりしてしまったが、ヒカリの方も普段のキャラを被ってる余裕が無くて、素で返してくる。
そんな僕たちの会話を遮るように、すさまじい怒りと憎悪に満ちた叫び声が戦場を切り裂いた。
「なぜ父上を殺した!? 答えろ、ノゾミっ!!」
アイキャッチ
「神鋼魔像、ブレバティ!」




