第20話 迫撃! ノイエ・シュバルツ・ゲシュペンスト Bパート
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「神鋼魔像、ブレバティ!」
「よりにもよってピースポかよ!?」
僕の叫び声を聞いたアインが不審そうに尋ねてくる。
「ピースポとは面倒なマスコミなのか?」
「一番やっかいだ。独立系で政府の統制下に無い。大手マスコミの中では反政府リベラルを気取ってる『サンライズ』だって、所詮は記者クラブの垂れ流し情報を繰り返してるに過ぎないんだが、こいつは記者クラブ外なのに部数が多いんだ」
他の大手マスコミには、政府べったりの『リーディング』、中道系の『エブリデイ』、経済特化ノンポリの『フェデラル・エコノミー』、一見経済系に見えて実はタカ派の『インダストリアル・エコノミー』あたりがあり、その系列化にある新聞やテレビも多いのだが、そいつらは大体は記者クラブで与えられた情報に独自解釈を適当に加えて垂れ流しているだけの事が多い。報道の自由はヤマト皇国憲法でも保障されているのだが、実際は骨抜きにされているのだ。むしろ中小マスコミの方に、しっかりとしたジャーナリストが多い。
「む、まずいな…読者から見て、その新聞の記事に信頼性はあるのか?」
「無い!!」
「は?」
お、アインの間抜けっぽい声はレアだな。でもまあ、そういう反応も無理はない。
「針小棒大って言葉がピッタリなくらい、ささやかな情報を元にゴシップを捏造して書くイエロー・ジャーナリズムとして有名なんだよ。名誉毀損で裁判になった時も『ピースフル・スポーツの記事を信用する読者はいないから名誉毀損は成立しない』って裁判所が認定したくらいだ」
中小マスコミならしっかりしているかというと、全然そうではなく、ピースポみたいなイエロー・ジャーナリズムも多いんだ。とはいえ、それなら放っておいていいかというと、決してそうではない。
「なら何の心配も無いのではないか?」
「じゃあ、お前さん『衝撃! 騎士N・Hが敵国の黒騎士と禁断のBL愛か?』みたいな見出しの記事を書かれてもいいのか?」
「何だソレは!?」
「そういう扇情的な記事を書くのが得意なんだって! おまけに大半は捏造の記事のくせに、その中に核心的な本当の情報をほんのちょこっとだけ混ぜ込んでくるのがタチが悪くてね」
「なに?」
「ルードヴィッヒがオープンにする前に『大爆発の真相は魔族による侵略だった』みたいな記事書いてたこともある。意外に取材力があって、普通のマスコミじゃ書けないような真実をいかがわしい記事の中にこっそり混ぜ込んでるんだよ」
「なるほど、タチが悪いという意味がよく分かった。その取材力でここも見つけたのだろうか?」
「あり得ないだろう。誰に取材する? だけど、偶然にしてもこんな所に来る理由が…そうか! ゴシップ以外ではオカルト系記事も人気で、最近では『秘境に幻の人面竜を追う』とかいうシリーズが人気なんだが、それの取材だな」
「…そんな怪しげな記事ばかりなら、マニアは買っても一般層にそれほど売れるとは思えないのだが?」
「実は、天馬競馬と素手格闘技興行に関してだけはクオリティペーパーでね」
前世なら貴族のスポーツだった乗馬だが、こちらの世界では天馬に乗るのが貴族のたしなみだったりする。その流れで競馬も天馬を使ったものになっているのだ。素手格闘技興業は…まあ、魔法を使える分だけ技が派手になってるが前世のプロレスと大差ない。
「それにしても詳しいな」
「父さんが好きなんで家で購読してるんだよ!」
貴族が読むような新聞じゃないってのに、これだけはやめないんだから、あの人は!
「…納得した」
「で、こんな風に会っている所を見られた以上、派手に戦って誤魔化すしかない。何も無しで別れたら、それこそどんな記事を書かれるか知れたモンじゃない。だが、派手に戦って見せて写真の一つも撮らせたら、それこそ珍しい本物のスクープ写真になるから、そっちを使うだろう」
「よかろう。これから迎えを呼ぶ。5分くらいあれば来るはずだ。それまで一勝負しようではないか。弟たち相手ならともかく、貴公が相手だとアドリブで演武するのは無理がある。殺しは無しだが本気の勝負でどうだ?」
「いいだろう。殺しはしないが倒す気で行くぞ。あの船は巻き込むなよ」
「もとより承知。ちょうどいい、貴公とは一度本気で戦ってみたかったのだ! 光球」
そう言うと、上空に向けて3連発で光球を放つアイン。攻撃力はないが光量の強い光を放つので、前世の信号弾や照明弾的な使い方をする魔法だ。青、赤、赤の色になっているのは、この色の組み合わせ自体に意味を持たせているのだろう。
「ドラゴン・ブレード! いざ尋常に!」
「勝負! 爆発!」
僕がドラゴン・ブレードを抜いて構え、戦闘開始を告げると同時に、アインは至近距離から爆発を放ってくる。
魔力隠蔽されているから練っている間の魔力量は感知できないが、発動時に放出されてくる魔力量が多くないのを感知して煙幕目的と判断し、そのまま爆炎に突っ込んで予想位置をなぎ払うが、空を切る。
アインは中・遠距離の魔法戦を得意とするタイプで、戦闘スタイルはヒカリに近いから距離を取る気か、と思ったのだが…
「もらった!」
炭素結晶で刃をコーティングした槍斧が真後ろから襲ってくる。
近接戦闘で挑んでくる可能性も20%くらいはあると予想していたので、槍斧による反撃自体はさほど意外ではないのだが、問題はその方位。僕の真後ろからというのは、アインの愛機である一眼巨兵・カスタムの運動性からすると、かなり急角度で無茶な運動をしないと無理なはずなのに、体勢を崩している様子もなく腰の入った相当に鋭い斬撃が襲ってきた。
ガイン!
咄嗟に前方に飛び込んで回避し、前転して立ち上がるが、背嚢から出ている翼の先端を切り取られてしまった。
一瞬、背後に転移してきたのかと思ったのだが、空間魔法の反応はない。なら、これは一体…
「さすがにやるな!」
一瞬考えそうになったが、アインが怒濤の如き連続攻撃をしかけてきたので、それへの防戦に専念する。
上段からの斬り下ろしを避けてカウンターを入れようとするが、すぐに下段からの逆袈裟へ斬り返し、さらに旋回して水平斬りと連続で見舞ってくるので反撃できない。斬り返しのスピードも速いが、それが空振りした後も石突き側でガードするように振っているので有効な反撃ができないのだ。
さらに、斬り返しと見せて突然刺突も交えるという槍斧ならではの戦法も交えてきて、付け入る隙が全然見えない。
こいつ、強い! 中・遠距離タイプかと思ってたら、カイに匹敵するくらい近接戦闘も上手いぞ。下手すると総合戦闘力はリヒトより上だ。
…だが、妙だな。あれだけ魔法の扱いが上手いのに、攻撃魔法を混ぜてこない。魔力隠蔽の影で魔力を練ってる可能性もあるが、まったく撃ってこないのは、とんでもない大魔法でも目論んでいるのか?
僕も傍目からは防戦一方に見えるかもしれないけど、実際は受け流しながら反撃用の魔法のイメージと魔力を練っている。さて、そろそろ行くかな。
「液状化、爆風散弾、飛翔」
地面を液状化する地属性魔法と同時に体勢を崩す風魔法を散弾状に放ち、そこへ飛び込みながらドラゴン・ブレードで魔力撃を放つ。これで腕の一本は貰うぞ!
ガキィン!
「んなっ!?」
うぉ、これを避けるのか!? 僕の突進に合わせて、アインも後ろに飛んだのだ。飛翔の呪文を唱えている様子なんて無かったのだが、もしかしてあらかじめかけてあって、打ち合わせの最中もずっと維持していたのか?
腕を持って行く積もりだったのだが、避けられたせいで槍斧の柄を斬っただけで終わってしまった。
それにしても、アインらしくないリアクションではあるが、それだけ焦らせることはできたということかな。だが、まだこっちのターンだぞ。
「やるなっ! 氷散弾、岩槍」
正面から氷散弾をバラ撒くと同時に、高度を落として地面に手をつき、そこを起点に土を即座に岩化して馬上槍状の三角錐形にして発射する。
速度の遅い氷系魔法や地系魔法を使っているのは、そのデメリットがあるから攻撃にはあまり使われないからで、防壁を張っていないだろうと予想したからだ。これから張るにせよ2系統の呪文を詠唱する余裕は無い。
「クソッ、爆発! もう要らん!」
「なに!?」
アインは防御よりも迎撃と回避を優先したようだ。爆発で氷弾や岩槍の一部を迎撃しつつ、再度それを煙幕代わりにして視界を遮ったところで何と槍斧を投擲してきた。
柄を半分斬ったとはいえ、まだ普通の片手斧程度には使えるのに、なぜ槍斧を捨てる?
一瞬、その事に気をとられてアインから注意が逸れた。その隙にアインは急旋回して谷間の岩陰に飛び込む。
氷弾や岩槍も何発かは当たったようだが、大半は迎撃されるか避けられたようで、致命傷にはなっていないだろう。
僕は躊躇せずにアインの後を追って飛ぶ。得物も捨てさせたことだし、ここで体勢を立て直されて魔法の撃ち合いになるよりは、追撃して近接戦に持ち込む方がいい。
ところが、岩陰に飛び込んだ僕の目の前には、既に体勢を立て直して迎撃姿勢を取っているアインがいた!
「玻璃障壁」
アインの右手に魔力が集中し、大型のガラスの盾が出現する。普段、アインの弟であるドライが愛用している炭素結晶でコーティングされたラージ・シールドと同じくらいの大きさだ。
「雷撃ォオッ! 拡散光線ッ!」
どっちみち攻撃するしかないので回避しにくい高速の雷撃を直撃コースで放ち、回避行動をとった場合の牽制に拡散光線も放ちながら、魔力を乗せた斬撃を見舞う。
ガッ、ガガッ、ザッ!
「ッく、やる!」
「効かぬ…よ」
まさか、魔法から斬撃まで全部を玻璃障壁の盾で完全に防がれるとは思わなかった。多少の傷はついたが、そんなものは一瞬で修復される。かなり魔力を注ぎ込んで強化してる上に、各種属性の防壁も張っているのだろう。
「魔法の実力は知ってたけど、近接戦闘や防御も弟たち並みに上手かったとはね!」
思わず賛辞を送ってしまった。一芸型の三人組だと思ってたんだけど、アイン一人でこれだと弟たちも結構強いんだろうか。リヒト級の実力者の三人組とか、どんだけ戦闘力あるんだか想像もできんぞ…って、アレ?
今までの戦闘実績からすると、実力を隠していたとしか思えないんだけど、何か引っかかる。近接戦闘能力も、防御能力も、今まで見てきた誰かの上限とほぼ一致している。
これは、まさか…試してみるかな。
「そろそろお迎えも来る頃っぽいから、こっちも切り札を切らせてもらうよ!」
「よかろう、それを耐えきれば、こちらは勝ちに等しい引き分けだ」
軽く挑発すると、向こうも乗ってきた。あっちの言うとおり、機体の性能差を考えれば、時間切れ引き分けだったら実質的にはあっちの勝ちになるだろう。だけど、そうはさせないよ。
ちょうどいい、ピースポの飛行船もこっちが見える位置に来ている。派手に新必殺技を使わせて貰おうか。
「超電磁パンチ」
飛び退って距離をとり、ドラゴン・ブレードを左手に持ち替えると、右手を突き出してキーワードを唱え、超電磁パンチのレールを展開する。
「大嵐防壁、瞬間移動妨害。超電磁直撃拳は効かぬぞ」
…効かぬ、か。そして、これだけ大きな隙を見せているのに反撃するのではなく防御の魔法を使ってくるということは、やはりこいつは…
「この距離だ。転移の必要はないさ。そのまま懐に飛び込んで撃たせて貰う。普通ならこの隙に攻撃されるんだろうが、今のお前さんなら攻撃して来られないだろう?」
「!? お主っ!」
「疾風走破!」
レールを展開したまま前方へ高速移動し、相手の上半身に右腕を突きつけようとするが、それを玻璃障壁の盾が遮る。盾と上半身の距離はそんなに無いが、これだけ間隔があれば盾を貫通しても胴体までの間に腕は逸らされて、魔道エンジンへの直撃は無理だろう…超電磁パンチだけならば。
バリィン! ドォン!!
放たれた腕先が玻璃障壁の盾を粉々に砕く。だが、その軌道は上方に急角度で逸らされ、ほぼ真上に向かって飛んでいき、相手の上半身にはかすりもしない。
しかし、僕はそのまま空になった右腕を突き出した状態で、キーワードと魔法を唱えながら相手への突撃を続ける。
「パージ、引寄」
展開したレールを収納する暇がないので分離するキーワードを唱え、続けて新魔法を唱える。これも、例の無人島でAGだけを地下格納庫に転移した魔法陣から解析された無生物を転移させる魔法。
腕先が無くなっていたドラゴンの右腕に、前回試した色物武器「スクリュードライバー」が装着される。ここまで乗ってきて、谷に入る前に駐めておいたシルバーホイールの荷台に載せてあったのを腕先に転移させたのだ。
「なっ!?」
ガツン!
スクリュードライバーの筒先が相手のAGの上半身、魔道エンジンの直上にぶち当たる。そして…
「スマッシュ! 生命感知、闇弾!」
僕が発動キーワードを唱えた瞬間に、スクリュードライバーはその鋭鋒を解き放ち、回転する先端部が相手の黒いAGの胸を貫通し、魔道エンジンを完膚なきまでに破壊する。
それとほぼ同時に唱えた生命感知。相手AGの腹に感じられる生命に異常はない事を確認しながら、僕は左腕を思い切り後ろに振って、もう一つの生命に当たらないように注意しながら、ドラゴン・ブレードで黒いAGの胸を貫いていた。先に投げ捨てた槍斧の代わりに魔力刃を手にして、僕の背後から奇襲してきていたツヴァイのAGの胸を。
人間なら、こんな無理な姿勢での迎撃はできないが、同調しているとはいえAGは魔像。操作に熟練すれば関節の可動方向や可動範囲を人間と変える事もできるのだ。
「収束光線!」
そして、タイミング的には、ほぼツヴァイが背後から斬りかかるのと同時に放たれていた収束光線の魔法は、僕が自分の胸の前に発動して、発射せずにそのまま浮かべていた闇弾の魔法に相殺されて消える。闇魔法は相手のエネルギーを奪う魔法。相手の魔法攻撃、特に光系の魔法と相打ちにさせることができるのだ。
潜地で隠れていた地面から飛びだし、ドラゴンの胸を狙って収束光線を放ったのは、本物のアインの操る黒いAG。
「相殺されたか!」
「真空」
「なに!?」
次の瞬間、ドラゴン・ブレードもスクリュードライバーも手放した僕は、すぐ目の前、アインの黒いAGとドラゴンの中間に風魔法で作り出した真空が周囲の空気を取り込むように風を巻き起こすのに合わせて、発動を続けていた疾風走破の加速力を乗せてドラゴンの右膝を突き出す。
「ニーファングぅ!」
僕がキーワードを叫ぶと同時に、ドラゴンの右膝頭が変形し、円錐状の大きなトゲが飛び出してくる。ドラゴンの牙を模したそれを、そのままアインのAGの胸元に突き上げる形で叩き込むと、ニーファングが胸部装甲を貫通して魔道エンジンを破壊する。
「うおっ!」
「必殺、バキューム・ニーリフト! どうだい?」
アインが悲鳴をあげて吹っ飛ぶのを見ながら技名を告げる。いやまあ、某キックの鬼の必殺技にインスパイアされて本当に真空を作ってみたんだけどね。実のところ、1気圧の状況下で真空を作ってみたところで、それで起きる風程度ではAGの質量に影響を与えるほどじゃないから、単なる気分でしかないんだけど。あと、飛び膝蹴りならジャンピング・ニーパットかとも思ったけど、ジャンピングまで付けると長くなりすぎだし、角度的に下から突き上げる形になったので単なるニーリフトにしたのだ。
ドスン、ドスン!
一応、後ろのツヴァイとドライへの警戒も怠ってはいなかったのだが、聞こえてきたのは彼らのAGが倒れる音だった。
「クソッ、バレてたのか!」
「無念…」
悔しそうに言うツヴァイとドライ。そう、僕が戦っていたのはアイン一人ではなくて、ノイエ・シュバルツ・ゲシュペンスト三兄弟。入れ代わりながら戦っていたのだ。お前ら、虎仮面の原作版「三つの奇跡」かよ!
「角の位置、変えられたんだな」
アイン達の黒いAGは、ほぼ同型なのだが角の位置がそれぞれ違っていて、ツヴァイが右、ドライが左だったはず。それがアインのAGと同じ中央に揃っているのだ。
「所詮は小細工に過ぎなかったという事か。機体性能差を考えても、3対1でこの無様を晒しては何も言えぬな」
吹っ飛びながらも空中で体勢を立て直して着地したアインが、自嘲するように言う。
それに何と答えようか、と思ったとき、北西方向約20キロくらいの距離から強力な魔力弾が発射されたのを感知する。彼らを迎えに来た魔道戦艦だろう。
「お迎えが来たようだね」
魔道戦艦の主砲弾の威力は強力だが、通常の魔力弾で遠距離からの砲撃なので、さっきかけてから切ってなかった飛翔の魔法で飛べば余裕をもって回避できる。
「無念だが、ここまでだな。ツヴァイ、ドライ、引き上げるぞ。飛翔」
「チッ、覚えてやがれ!」
「またお会いいたそう。飛翔」
アインたち3人も、既に唱えていたらしいツヴァイ以外の2人が飛翔の魔法を唱えて魔道戦艦の方に飛び去る。魔道エンジンは壊してしまったが、20キロくらいなら3人とも残留魔力で飛べるだろう。
彼らを見送りながら、僕は飛翔の魔法で上空目がけて飛行を続ける。真上に飛ばした右腕を回収しないといけないからね。第一宇宙速度は超えないように初速を制限してはおいたけど、どこまで飛んでいったのやら。いずれは落っこちてくるはずだけど、落下速度も相当なものになるはずだから、何とか途中で回収したいんだけどなあ。
遠目にピースポの飛行船がゆっくりと旋回するのを見下ろしながら、僕は天空目指して加速を続けるのだった。
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「ダメだったか…」
僕はガックリとうなだれながらつぶやいた。翌朝、我が屋敷に宅配されたピースフル・スポーツの一面にはデカデカと『衝撃! 騎士N・Hが敵国の騎士と禁断の恋』という大見出しが踊っていたのだ。もちろん、折り返したところに『か?』と小さく書いてあるのはお約束。
写真自体は、僕のバキューム・ニーリフトがアインの胸を貫いているシーンなのだが、見出しに合ってないよ!
僕とアインたちの関係をBL扱いされた記事をヒカリあたりに読まれたりした日には、嬉々として生物系の薄い本とかを書かれそうだな、とか思ってげんなりしながら一応記事に目を通すことにしたのだが、読み進むにつれて僕の頬はだんだんこわばってきた。
BL扱いされたからじゃない、むしろ逆だ。最初の方は、取材中に偶然戦闘に遭遇したことや、公式発表では「山岳地帯でのAG用新装備テスト中に敵偵察部隊と偶発的な遭遇戦を行った」という事になっている、と書いてあったのだが、その公式発表に対して「戦略的価値のない所に敵軍が偵察部隊を派遣するのはおかしい」と疑義を唱えている。
そこでピースポが「独自取材」したところ、騎士N・H(つまり僕)が敵国の女騎士に恋愛感情を持っているのではないか、という「疑惑」が浮上したというのだ。
そもそも初陣で戦った女騎士を捕虜にした時(ここ事実)に「一目惚れ」(ここ捏造)したのだという。
その後に「ハニートラップ」をしかけられ(多少疑義はあるが事実)、その際に「偶然の事故でキス」をしてしまい(まったくの捏造)その隙にリモコンを盗まれた(事実関係として違うが盗まれたのは事実)。
作戦中の偶発事故で一緒に無人島に飛ばされ(事実)、一緒に行動する間に「うっかり彼女の裸を見て」しまって(完全な捏造)更に意識するようになった(微妙ながら事実)。
その女騎士の命が危ないと聞いて、ためらわずに自分の愛機を差し出すと言った(…非常に遺憾ながら完全な事実)。
そして、今回戦った敵部隊というのは、実はその女騎士の兄にあたる三人組で(事実)、ここで戦ったのは「妹が欲しければ我らを倒してみろ!」という兄たちとの勝負だった(完全な捏造)、というのである!
こいつら、一体どこでここまで取材してきたんだ、と不思議に思うくらいに僕とフィーアの間の事実関係を取材した上で誇張して、ありそうな捏造を加えているのである。これじゃあ名誉毀損とかで訴えられないよ。根本の事実が存在してるんだもの。
だけど、キスだの裸見ただの、そんなラッキースケベは一度も経験してないっつーの!! そうならないように厳重に警戒してたっていうのに…
だが、こんなのは記事の最後にさりげなく書いてあった一文に比べれば、まだマシなのだ。何しろ、こんな事が書いてあったのだから。
「だが、消息筋への取材によると、これはそんな浮いた話ではなく、今回の戦争を終わらせるための大規模な謀略の一環として帝国の大幹部を寝返らせるための工作の可能性もあるという。その大幹部とは、この女騎士の父親にあたる艦隊司令長官であり、この工作が成功した暁には、この戦争は一気に終局を迎えるであろう。今後の動向が注目される」
どこでこんな機密情報拾ってきたんだよ!? ピースポ恐るべし!!
僕は手にした新聞をしわくちゃに握りしめながら、思わずつぶやいていた。
「これがイエロージャーナリズムって、何か違うんじゃね?」
次回予告
「父さんが寂しがっているからね。同じ所に行ってもらおうか!」
「父上、あなたがいけないのですよ」
「待て、お主ら何を考えているのじゃ!? うおおぉぉぉぉっ!!」
ノゾミとアインたちの目論んだ陰謀は成功した。だが、そこに予定外の第三者がいたことが状況を複雑化する。
「ヒカリぃ、お前、なんつー事をしてくれたんだ!? 許さん! ボロ雑巾にして捨ててやるッ!!」
「それ、実の妹の方に言うセリフじゃないから!」
そんな兄妹喧嘩を切り裂くように少女の憎悪の叫びが戦場にこだまする。
「なぜ父上を殺した!? 答えろ、ノゾミっ!!」
次回、神鋼魔像ブレバティ第21話「陰謀は憎しみ深く」
「これって何か違うんじゃね!?」
エンディングテーマソング「転生者たち」
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来週も、また見てくださいね!




