第14話 大統領救出作戦 Bパート
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「神鋼魔像、ブレバティ!」
「しまった、謀られたか!?」
父さんのうめき声が通信機から漏れたが、次の瞬間には耳障りな雑音にかき消される。魔力波妨害がかかったな。…にしても、そのセリフは大人気ロボットアニメの小惑星基地指揮官、それも無能なテレビ版の方のやつだぞ。
とはいえ、「紅の男爵」と「核を操る娘」~ここ2日間の新聞や放送を再開できたテレビのニュース番組などでついてしまった我が妹の二つ名だ~という地球帝国屈指の実力者2人が率いる部隊による迎撃か。情報部が有能だったんじゃなくて、誘導されてたんだな。父さんが「謀られた」と言いたくなるのもわかる。
敵は魔道戦艦3隻にAGが27機。あの第一次イモータル市防衛戦と同じ数だが、指揮官が遙かに強力だし、恐らく兵も精鋭だろう。おまけにヒカリが駆るのはブレバティ・ライガー! こちらも数は増えているし魔道戦艦も加わっているが、新参組は実戦経験が少ない。しかも、こっちは大統領たちを救出するのが作戦目的だ。
「オグナはバルバロッサとパンターを狙います。AG部隊は当初予定通りに」
マーサさんの声が旋回中のオグナから聞こえる。敵の側方から奇襲するという目算が外れたので同航砲撃戦に持ち込むつもりなのだろう。それに、救出目標が艦長室なんぞという防御の弱い部分にいるのだから、主砲を撃って艦長室を直撃したら殺しかねない。オグナの主砲がレーヴェを狙うのを避けるのも当然だ。艦長室に大統領たちを置いたのは、それが狙いというワケではないだろうが…
「了解、プランAだ!」
答えてからレーヴェ目がけて突撃する。考えてる暇はない。以前にリーベが艦橋を切り取って敵司令官を捕虜にしたことがあるように、艦長室だけ切り取って脱出しよう。プランAは、クーやリーベたちが敵の護衛を排除して、僕とアニー中尉たちが救出に回るパターンの作戦計画だ。
「兄様、わたしがお相手します!」
「ヒカリぃ、邪魔させないよ!」
ロデムがリヒトの赤いAGに、ロプロスがライガーにマンツーマンで挑む。あの2人相手だと、これでも抑えきれる保証はないが、あいつらをフリーにするワケにはいかない。
と、その時、オグナから音楽が流れ出して、リンの立体映像が空中に投影される。呪歌の支援だ…が、オイ、この曲は!?
「厳しい状況だけど頑張ってね! 特にペガサス乗りのみんなを応援するために、この曲を歌うよぉ~『ペガサス幻…』」
心に小宇宙を感じて戦う鎧格闘アニメの主題歌だ。ロボットアニメですらないじゃん! いや、確かに「ペガサス」を応援するのにはいいかもしれないけどさ…
まあ、いいや。戦うにはノリのいい曲ではある。ドラゴンの魔道エンジンが力強くうなって機体の魔力が高まるのを感じながら、アニー中尉たちの先頭に立ってレーヴェに向けて突進する。
「退けぇっ! ドラゴン・ブレード、魔力弾っ!!」
ドラゴン・ブレードを右手で抜きながら、通常の魔力弾を少しアレンジしてイメージし、発動する。複数を同時に発生させるが左の手元に留め置いて射出はしない。
レーヴェから出撃してきた9機の一眼巨兵が空中で8機が立方体の各頂点になり中心に1機配置する陣形を組んで、槍斧の穂先を揃えて突き出してくる。地上の方陣にあたる防御陣形だ。前衛4機が近接迎撃をして、後衛4機が魔法支援をかける戦法をとるのが一般的だ。中衛の1機は指揮をとりながら必要に応じて近接支援か迎撃を行う。
「「「「魔弾速射」」」」
後衛4機が前衛の間をぬって魔力弾を連射してくる。精密誘導ではなく弾幕で迎撃しようというのだろう。1発ずつの威力はそれほど高くないが、連続で喰らったらオリハルコリウムもダメージを受けるくらいの魔力は込められている。それでも突進を止めることなく、体に当たりそうになるのをいくつか魔力を通したドラゴン・ブレードで切り払いながら、反撃に出る。
「ドラゴンクロー・ロケット!」
左腕を前に射出する。前にも言ったように初速が遅いのが難点だが、今は既に突進している状態から撃ち出すので、ある程度の上乗せはできる。それに、今回はパンチで打撃を与えるのが狙いじゃない。この左手には既に魔力弾が待機状態でまとわりついているのだ。
前衛の4機が槍斧でドラゴンクロー・ロケットを叩き落とそうとするが、ここで待機していた魔力弾を放ち、その槍斧の穂先や刃を砕き…
「魔力弾、連続発射」
さらに敵陣内に飛び込んだ左手を起点に魔力弾を連射する。至近距離から魔力弾をくらった中衛の指揮官機だったが、咄嗟に左半身を前に出して受け、左肩から左腕を犠牲にしながら本体は守る。さすがに指揮官クラスは勘がいい。
だが、後衛4機は何とか槍斧を犠牲にして本体は守ったものの、既に槍斧が壊されていた前衛4機は胴体中央や頭部に魔力弾の直撃を受けて魔道エンジンやメインカメラを破壊されて戦闘能力を失う。
そして、次の瞬間には僕のドラゴンが前衛の間を突破して中衛の指揮官機にドラゴン・ブレードで突きを見舞う。突撃の運動エネルギーに加え激突の瞬間に魔力撃まで乗せた刺突は迎撃した槍斧の刃を砕き、そのまま指揮官機の胸の中央を貫く。刀どころか、それを持った右手までが相手の胸にめり込む。
「爆発!」
まさにその瞬間に右手を起点に爆発魔法を放つ。敵も魔力防壁や耐火防壁を張っていたのだろうが、今発動したのは敵AGの胸の中。そう、防壁の内側なのだ。攻撃力の60%から95%まで防ぐ防壁だろうと、その内側で発動してしまえば無力。防壁を張ったミスリウムを破壊するのに必要な魔力の4割以下で同じ効果が発揮できるのだ。しかも、それを放つ起点となった手には防壁がかかっている上、素材はミスリウムよりもはるかに強度と耐魔性があるオリハルコリウム。こちらの手は無傷で、相手の胸は内側から粉々になる。
…腹のコクピットは無事だな。生命感知にも相手の命の反応があり、特に弱ったような様子もない。予想よりも威力が強かったので、ちょっと魔力を込めすぎたかと一瞬ビビったけど、問題なかったようだ。
「散開して一撃離脱で遅滞作戦!」
胸より上を粉々にされて戦闘力を失った指揮官機だが、即座に下方に待避しながら戦法変更を命令する。前衛と中衛が突破されて戦闘力を失った以上、立方陣による迎撃を放棄して、残された戦力で捕虜救出を妨害する作戦に切り替えたのだろう。残された戦力のみでの阻止はほぼ不可能だが、少しでも遅滞させてリヒトやヒカリの部隊の来援を待つというのは、適切な判断だ。しかし…
「ドラゴン・ブレード、牙竜風刃乱舞っ!」
その命令が出された時には、既に後衛4機もドラゴン・ブレードによって真っ二つに叩き切られていた。なまじ密集陣形だったのだから、中衛を突破した勢いでその中心を突き抜けざまにドラゴンの機体をキリモミ回転させながら相手をまとめて撫で斬りにしたのだ。技名は前と同じで、その場のノリで適当につけたんだけどね。これでレーヴェ直衛の9機は無力化した。飛ばしていたドラゴンクロー・ロケットは指揮官機を破壊した時点で戻してある。
僕に続いて3機のペガサスが直線コースでレーヴェへ突撃する。それを阻止せんとレーヴェからは近接防御火器の魔力弾が連射され、バルバロッサとパンターからも火線が伸びる。だが、オグナと主砲を撃ち合っているバルバロッサとパンターはそれぞれ回避運動を行っているので、こちらへの射撃は正確さを欠き、牽制程度にしかなっていない。レーヴェの主砲は旋回が遅くて僕たちを追尾することができない。そして…
「「「「魔力弾」」」」
僕のドラゴンとアニー中尉たち3機のペガサスから放たれた魔力弾がレーヴェの近接防御火器を潰していく。もともと主砲よりも防御力が弱い近接防御火器の砲座はすぐに沈黙する。これも主砲同様に主要防御区画内から遠隔操作しているので人はいないから遠慮なく潰せる。ついでにレーヴェの主砲も破壊すると、僕はそのままの勢いでレーヴェの艦橋に向けて突進しながら…
「魔力刃」
ドラゴン・ブレードに魔力刃をまとわせ、人がいないことを確認しながら第一艦橋と艦長室の間を正確に叩き斬っていく。外装をドラゴン・ブレードで斬ってみたところ、この部分は炭素結晶などで内張補強はされていないようで、反対側まで一気に魔力刃で切断ができた。
そして、その間に後続の3機は一度レーヴェをフライパスする形で行きすぎてから急旋回してレーヴェと進行方向を合わせ、減速しながら相対速度も合わせてから魔像形態に変形し、僕が切り取った艦長室部分を3機で確保すると、内部を確認する。
「大統領、いらっしゃいますね! …目標確保!」
親子なのに、あくまでも一士官という立場を崩さないアニー中尉は他人行儀に確認していたが、偽物や位置の偽装ということもなかったようで、大統領以下の要人を確保できたようだ。あとは撤退できれば作戦は成功だが…
「逃がさんぞ、ノゾミっ!!」
聞き慣れた声と共に斬撃が僕を襲う。パンター部隊9機のうち、ヒカリはクーが近接戦に持ち込んで抑えている。クーの双刀剣術には慣れているヒカリだが、実はそんなに相性はよくないのだ。卓越した攻撃魔法の技量で模擬戦での勝率はヒカリの方が高いが、クーだってヒカリの戦法はよく分かっているのだから、3分くらいの間ならヒカリを抑えきることは可能なのだ。残り8機のうち2機は姫様のペガサスに戦闘不能に追い込まれ、3機がかりで姫様を抑えにかかっている。そして、残った3機が僕たちの逃走を妨害し、大統領たちを奪還すべく襲いかかってきたのだ。そのうち1機は額の中央に角があり、大型化した背嚢を背負っている。元はヒカリの愛機だった機体。今それを操っているのはヒカリの一番の部下にして「親友」。その斬撃をドラゴン・ブレードで受け流し、体勢を崩したところを斬り返す。
「邪魔はさせないよ、フィーア少尉!」
「今は中尉だ!」
言い返しながら、僕の斬撃を背嚢で受けるフィーアの一眼巨兵。この部分は炭素結晶が仕込んであって一番耐久力がある上に、僕の斬撃の方向に合わせるように運動方向を変えてきたので打撃を与えられず、むしろ押し出す形になってしまう。やるようになったな、こいつ。伊達に昇進したのではないようだ。そして残りの2機はフィーアと斬り合う僕を無視して、アニー中尉たちを狙う。阻止したいのだが…
「魔力弾、連続発射、爆発、爆風、高圧水流、岩石弾ぉっ!!」
「くっ、玻璃障壁!」
フィーアが魔力弾の乱射に続けて圧力がかかるタイプの属性魔法を連射してくる。各種防壁を張っているからダメージは少ないし圧力も激減させられるのだが、ゼロにはできない。わずかでも圧力をかけ続けて僕の動きを止める戦法だ。フィーアの魔力弾の威力は無視できないので玻璃障壁を張って防壁の範囲をそこまで拡張して耐える。
ダメージこそ受けないものの、僕は動くことができない。その間に2機の一眼巨兵がアニー中尉たち3機に迫る!
「トライデント・ミサイル!」
「「シュート・スピア!」」
その2機が、下方から飛んできた三つ叉矛と2本のショートスピアに貫かれる。放ったのは海中から姿を現したカイのポセイドンと、2機の新型量産機~ポセイドンの量産型にあたる水陸両用機「マーマン」~だ。例によって顔がゴーグル状の量産顔になっていて頭部の飾りが省略されているのと、主要材質が変更されていること、それに武器がドラグーンと共用のショートスピアになってるのが主な変更点になる。乗っているのはリュー君と、新人パイロットのうちの1人だ。2人とも普段はドラグーンに乗っているが、今回は洋上の作戦になるので水陸両用機に乗り換えてきたのだ。
そして、ほぼ同時に海中から浮上する巨大な影。シーサーペント号だ。洋上に姿を現すと、司令塔後方にある平坦な甲板の中央に亀裂が入り、そこから左右に分かれて上方に開く。前世なら垂直発射式弾道弾でも積んでいるのかと思う所だが、これはAGの格納庫なのだ。そこに、アニー中尉たちのペガサス3機が降りていく。
「あうっ!」
「すまんな、リーベ。逃がすワケにはいかんのだ!」
そのペガサス3機を狙って紅の影が翔る。リーベではリヒトを抑え切れなかったらしい。吹っ飛ばされたらしいロデムが視界の端をよぎる。他に機影が見えないところを見ると、残り8機は殿下が抑えてるようだ。訓練の時から腕がいいのは分かっていたが、ここまで出来る人だったのか。これは、むしろ殿下にリヒトを抑えてもらうべきだったかもしれない。
だが、相手がリヒトだろうと邪魔させるワケにはいかないのはこっちも同じだ!
「瞬間移動!」
「なにっ!?」
ガイィン!!
転移したドラゴンがリヒトの深紅の機体に激突する。
本来は高機動戦闘中に瞬間移動の魔法は有効じゃない。前にも言ったが、運動エネルギーは転移前のまま維持されるし、それを変えるのには余計に魔力がかかるからだ。今、アニー中尉たちが瞬間移動でシーサーペントの格納庫内に転移せずに、いちいちハッチから逃げ込もうとしているのも同じ理由だ。相対速度を調整し損なったら、艦内で大惨事が起こってしまう。
だが、単純に進路妨害するだけなら敵の運動方向の直前に転移すればいいだけのこと。装甲材が頑丈なのだからそれを有効活用すればいいのだ。もともと互いに全く違う方向を向いていた運動ベクトルが、ぶつかり合うことで明後日の方向に進路を変える。
「ノゾミか、無茶をする!」
「そういう状況だろうに!」
お互いに衝撃は大きかったが致命傷にはなっていない。すぐに体勢を立て直すものの、その時にはペガサス3機はシーサーペントの格納庫に降り立っていた。格納庫ハッチが閉じられ、急速潜航が開始される。
僕が目の前から消えたフィーアがフリーになっていたものの、シーサーペントとの間にはポセイドンとマーマンが立ちふさがっている。
「オレたちはシーサーペントを護衛する」
「頼む」
カイたち3機の水陸両用機は、そのままシーサーペントを追って海中に飛び込む。普通のAGでも水中行動自体は可能だが、運動性は大きく削がれる。その点、最初から水中での運用を考えて作られているポセイドンやマーマンは、機体自体に突起が少なく水の中でも動きやすい設計になっており、さらに機体各部に水魔法を応用したウォータージェット的な魔道具が仕込んであり、水中での機動性は高い。
シーサーペント自体も、空こそ飛べるが本来は潜水艦。海中での運動性能と速力はかなりある。全長150メートル超の巨体で水中速力100ノットとか、最初に聞いたときは何の冗談かと思ったのだが本当だった。さすが魔法世界。しかも、それだけの速力を出しながら水魔法の結界で音が外部に漏れるのを防ぐため静粛性も高い。潜水可能深度も1000メートル近くまであるらしいので、一度海に潜ってしまえば簡単には捕捉できない。
つまり、この作戦は僕たちの勝ちだ。
「オグナを護衛しながら撤収!」
「「「「了解」」」」
僕の命令に残り全員の答えが返ってくる。姫様は相手していた3機のうち2機を戦闘不能まで追い込んでいたようで、最後の1機から逃れてオグナを目指す。敵も追撃する気は無いようだ。
殿下は、フリーになってオグナを目指して飛んでいるところを見ると、リヒトの部下8機を全機戦闘不能に追い込んだらしい。何て人だ。
リヒトに吹っ飛ばされていたリーベだが、特に損傷はなく、そのままオグナの方へ飛行している。
「くっ、おとなしく逃がすと…」
「隙ありぃ! 変形、超音速飛翔ぉ!」
ヒカリと戦っていたクーは、ヒカリが他に気を取られた隙にライガーを蹴り飛ばすと、その反動を利用して一気に飛び退がりながら変形し、さらに超音速飛翔をかけて急上昇して飛び去る。追撃してきたらファイヤーバード・アタックで反撃する気なんだろう。
バルバロッサ、パンターと撃ち合っていたオグナだが、装甲材質や主砲の口径の優位を生かしてパンターにはダメージを与えているようだ。オグナの方も結構被弾してはいるようだが、致命傷は受けていない。同航戦を挑んでいたのだが、離脱するため進路を変える。敵に背を向ける形になるのだが、先に説明したようにオグナの主砲は背後にのみ全門斉射できるという変な配置なため、撤退戦はむしろ得意なのだ。今まで歌っていたリンの姿も消える。
「ヒカリ中佐、大統領を奪還できなかった時点で追撃は無意味だ。新米パイロットもあらかた戦闘不能の状態なのだから、放っておいて我々が深追いするワケにもいくまい。ここは退くぞ」
「…了解ですわ、リヒト准将閣下」
追撃の気配を見せたヒカリをリヒトが止める。2人ともフィーア同様に昇進したようだ。あと、あの2人が指揮しているから精鋭かと思っていたのだが、今回の敵のパイロットは新人が主体だったらしいな。
…重要な虜囚の護送に新人パイロットばかり、ね。わざと情報を漏らして誘導し、虜囚は奪還しやすい艦長室に配置とくれば決まりだ。リヒトとヒカリという名うての猛者を表に立てて本気の罠と見せているけど、実際には奪還させる作戦だったんだろうな。いささか不満そうなヒカリの様子だと、その真の意図はリヒトしか知らなかった可能性もあるが。
「んなっ!?」
そんな様子を見ながらオグナに飛行コースを向けた僕だったが、突然背後からの殺気を感じて振り向きざまにドラゴン・ブレードを振るう。
ガァン!
ドラゴン・ブレードが槍斧をはじく。そこにいたのはフィーアの一眼巨兵。
「せめて一太刀なりとっ!!」
「あきらめの悪い!」
連続で斬撃を見舞ってくるフィーア。それを受けたりかわしたりしながら待避しようとするのだが、以前よりも攻撃が鋭くなっていて、簡単にあしらって逃げられそうもない。少し押され気味の形で、オグナとは違う方向に進路を曲げられてしまう。このコースだとハロウィン諸島の端の方にある小島の上を通過する形になりそうだ。
さっきからの連戦で魔力残量も3割を切っている。ここは手を抜かないで本気でフィーアの相手をしないとマズそうだ。あの小島の上まで行って、一気にカタをつけよう。あそこなら本気の攻撃でうっかりバラバラにして叩き落としても地面の上。おぼれて死なすような事にはならないだろうからな。
「こっちだ!」
「待てっ!!」
斬り合いながら小島の上に来る。この島にも全高5メートル以上の巨大なジャック・オー・ランタン像があるのが見える。
「フィーア、深追いは…」
僕たちを追ってきたヒカリがフィーアを止めようと声をかけてきた。これで退いてくれるならこっちも楽でいいのだが…これはっ!?
「何だ!?」
「魔力結界!?」
さっき見えていたジャック・オー・ランタン像が光を放っている。同時に、僕とフィーアのAGを中心として空中に見たこともない八芒星の魔法陣が現れている。かなり強力な魔力を感じる。ヒカリが驚いていたが、確かに魔力結界のようだ。
「うぉっ!?」
ひときわ強烈な光が放たれ、何らかの空間魔法らしきものの発動を感じると同時に、僕は意識を失っていた。
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気がつくと、砂浜に横になっていた。状況が分からない。ドラゴンのコクピットにいたはずなのに。起き上がって周りを見回してみるが、ドラゴンの姿はない。暑い空気とまぶしい陽光。ごくありふれた南国の島の砂浜に見える。リゾート地のようなのどかな光景だが、人っ子一人いない。幸い、体には特に異常はないようだ。服は着ていたパイロットスーツのまま。見ると足元にはコクピットに置いておいた愛用の剣がある。ここがどこかは分からないが、武器があるのは助かる。
空間中に魔素があるのは感じるので魔法は使えるだろう。まずポケットからリモコンを取り出して通信を試みよう。
「コール、オグナ」
つながらない。雑音が聞こえないところをみると、魔力波妨害されているワケではなさそうだ。今度は自力でやってみよう。
「遠話」
やはり、つながらない。魔法が発動しているのだが、何らかの障壁のようなものがあって通信を遮っているような感じがある。そういえば、ドラゴンから降りた状態になっているので、基本魔法が切れていたことに気づいた。
「魔力感知、魔力隠蔽、望遠、分析」
基本魔法のほか、遠くを見る魔法と分析の魔法をかけて、遠くの方を見てみる。すると、砂浜の先の海の沖合に、今まで見たこともない空間魔法系の結界が張られているのが分かった。
「物理防壁、魔力防壁、飛翔」
今のところ人も魔物も見かけていないが、何が出てくるか分からないので用心のために防壁を張ってから空を飛んで結界の側まで行ってみる。この魔法結界の構成から、非常に嫌な予感がするのだが、試してみよう。
「瞬間移動」
何も起きない。この結界の向こう側、見えている所への転移を試したのに、できない。これは、やはり瞬間移動を阻害する結界だ。今まで、世界各国の魔法研究家が苦心惨憺しているのに開発に成功していないものが、僕の目の前に存在している。
「魔力弾」
僕の手から放たれた魔力弾は、結界に当たってあっさりと雲散霧消した。やはり、魔法を防ぐ結界も張られている。
「ハッ!」
カァン!
気合いを込めて剣で斬りつけてみたものの、乾いた金属音と共にはじかれてしまった。物理攻撃も防ぐようだ。
砂浜の方を振り返って見ると、僕が倒れていたのは比較的大きな島の入り江にある砂浜のようだ。島の奥の方に、ジャック・オー・ランタン像の頭が見えているので、ハロウィン諸島の島の一つなのだろう。だが、ハロウィン諸島にこんな魔法結界があるという話は聞いていない。
太陽はまだ中天に近い位置に輝いている。作戦開始からまだ1時間とたっていないだろう。腕時計を見ると、12時46分と表示されている。
こうして飛んでいても魔力を消費するだけだ。僕は、一つ頭を振ると、砂浜の方に飛び戻りながら、久しぶりに神様に向かって文句を言うことにした。
「神様、これもお約束の一部かもしれませんけど、この展開の最中に『島編』ってのは、何か違うんじゃないですかね?」
次回予告
常夏の島からの脱出方法を探すノゾミの前に現れたのは、一緒に飛ばされたフィーアだった。一時休戦し、協力して脱出方法を探す2人だが、日が暮れて共に一夜を過ごすことになる。
「やらせはせん、やらせはせんぞぉっ!!」
「…何をやっているのだ?」
断固としてお約束を阻止しようと奮闘するノゾミと、それに呆れるフィーア。
愉快な一夜を明かした2人の前に謎の古代遺跡が姿を現す。魔物が巣くう遺跡の奥でノゾミたちが見たものとは?
「古代の魔像?」
果たして2人は魔の島から脱出できるのか!?
次回、神鋼魔像ブレバティ第15話「トコナツ・ロマンの島」
「これって何か違うんじゃね!?」
エンディングテーマソング「転生者たち」
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来週も、また見てくださいね!




