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第13話 地球帝国の野望 Aパート

アバンタイトル


ナレーション「捕虜交換式の場でついに発動した『スターダスト作戦』。放たれた熱核融合弾頭の爆発をノゾミの中性子妨害ニュートロン・ジャマーの魔法で抑え、その間にクーのロプロスが弾頭を宇宙空間まで運搬する。高度100キロ以上の高高度で炸裂した熱核融合弾頭は強烈な魔力波パルスを発生させ、世界中の魔道通信機を破壊した。そこで核は囮と通信妨害を狙ったものだという裏を明かすヒカリ。さらに彼女はアーストリア帝国でルードヴィッヒがクーデターを起こして帝政を廃止したことと、世界の残り2大国への奇襲によって『世界大戦』が勃発したことを告げるのであった」


オープニングテーマソング「戦え、ボクらのブレバティ」


この番組は、ご覧のスポンサーの…

「ルードヴィッヒは皇太子で、帝国の事実上の支配者じゃないか! クーデターの()()にはなっても、自分で()()()立場じゃないだろう!?」


 思わず重ねてツッコんでしまった。それほどワケが分からない状況なのだ。だが、ヒカリはいつもの無感情なキャラに戻って冷ややかに答える。


「それは認識不足というものですわ。皇太子は皇帝ではありません。皇帝の承認のもとに権力を振るっていても、皇帝がノーと言えばそれまでです。そして、ルードヴィッヒ様が次期皇帝になれるかどうかは、選帝侯会議の議決次第。そんな不安定な状況では、連邦相手の戦争だけならともかく『世界大戦』は起こせませんもの」


 そこで、一度言葉を切って、少しトーンを変えて続ける。


「それに、帝国に来てみて、なぜおかあさまが帝国を捨てたのか、よく分かりましたわ。貴族としての誇りと義務を重んじるおかあさまが、なぜ祖国ではなくおとうさまと連邦を選んだのか。帝国は腐っています。特に上層部の高位貴族が。世襲によって得た権力と財力を、領民のために使うのではなく己の私利私欲に使おうという大貴族の何と多いことか。その規範となるべき皇族も似たり寄ったり。高貴なる者の義務ノブレス・オブリージュなんて言葉は見る影もありません。よくもまあリーベが()()されなかったものだと感心いたしましたわ」


 その言葉に、隠しようもなくいまいましさが表れている。


「わたしには、兄様とルーがいたから…」


 ぽつりとつぶやくロデム(リーベ)。その言葉にうなずいて言葉を続けるライガー(ヒカリ)


「まともに国民のことを、ひいては世界や人類全体のことを考えているのは、ルードヴィッヒ様やリヒトくらいなものです。ウィルヘルム様は協力的ではありましたが、あの方は調整型の指導者で強い指導力を発揮するタイプではありませんでした。皇帝独裁の建前がある一方で、古くからのしがらみが皇帝の手足を縛って高位貴族の横暴を許していたのです。その一方で伯爵以下の中位貴族や下位貴族には、ガーランド博士をはじめとして貴族としての誇りと義務を果たそうという人も多く、また平民でも有能で(こころざし)ある者は大勢いました。彼らに働いてもらうためにも、ここで一度古いアーストリアを叩き壊す必要があったのですよ」


 そう言われれば納得はいく。この捕虜交換でコンスタンティン大公以下の旧守派を見捨てたことも。


「それに…」


 ん、まだ何かあるのか?


「これであたしたちの皇位継承権などという鬱陶(うっとお)しいシロモノもきれいに無くなりましたわ」


 …そいつはグッドジョブだな、確かに。


「なるほど、よく分かった。それで、これからどうするつもりだ?」


「そちらは、ドラゴンとロプロスはもう魔力切れでしょうが、まだ戦力は残っていますわね。こちらはもう魔力量が心もとないので、ひとつ確認したら撤退しましょうか」


 ほとんど戦闘はしていないが、ライガーは大魔法一発で魔力切れ寸前、他の機体も強化玻璃障壁(グラス・バリア)と各種防壁(シールド)の維持だけで相当に魔力を食っているはず。性能差を考えても、ここで戦闘はしたくないはずだ。だが、「ひとつ確認」したい事って何だ? …ん、この声は?


「ヒッカリィ~!」


 叫びながら高空から舞い降りてくる影がひとつ。クーのロプロスだ。既に追加装備(オプション)は止まっており、飛翔(フライト)の魔法で飛行しているようだ。


「ああ、これで()()も終わりました。こちらも、しばらくは連邦に対しての攻勢をしかける余裕はないでしょうから、しばしのお別れですわね」


 なるほど、クーを心配してたって事か。


「クー! グッジョブ!! …でしたわ。それでは皆様、ご機嫌よう」


 クーに対して一瞬だけ仮面(キャラ)を外して声をかけ、そのまま護衛の8機と共に会場東側の待機場所から浮上を開始した魔道戦艦パンターに向けて飛び去るライガー。慌ててロデムやドラグーンが魔法を撃つが、まだ展開されたままの玻璃障壁(グラス・バリア)に阻まれる。飛行状態のペガサスも追撃にかかろうとするが…


「攻撃中止! 追うな! まずVIPと捕虜の安全確保が最優先だ!」


 父さんの命令が飛ぶと、ペガサスも追撃を中止する。姫様はアーストリアまで飛んでいきたいのだろうが、さすがに正規パイロットになってからは自覚が出てきたのか命令違反をするような事はしなくなっている。


 ライガーほかのAGを収容して瞬間移動(テレポート)で消えるパンター。それを見送って緊張感が切れたのか、どっと疲れを感じる。同時に、今まで気付かなかった会場のざわめきが聞こえてきた。


 さてさて、予想外の展開だったが、この先の「シナリオ」は一体どうなるんだろうね?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ゲオルグの奴に負けた気がするのは久しぶりだ。悔しいが、俺は大爆発ビッグエクスプロージョンの核爆発を目の前で見てたのに魔力波パルスに気付かなかった。放射線や熱線の直撃こそ避けたものの、爆音と間接爆風は感じられる距離だったから、逆に頭に来る魔力波の方は感じていても注意を払ってなかったんだろうな」


 父さんが魔像(ゴーレム)研究所の管理室で業務用の高出力魔道通信機を修理しながら心底悔しそうに話している。珍しいことだ。式典の後始末の方は責任者であるグリーンウェル伯爵が指揮をとっているが、もともと破綻することを前提とした式典だから後始末も織り込み済みだ。通信機が壊れて連絡がつきにくい以外に大した混乱はない。その通信機にしたところで遠話(テレフォーン)の魔法を自前でかければ済む話だ。「世界大戦」の方については、統合参謀本部(ヘキサゴン)や十人委員会が考えることだろう。


 なお、電磁波パルスの場合は、空気が希薄な高高度で起こる核爆発だからガンマ線も広く飛んで広範囲に影響が及ぶので、地上爆発の場合には起きない。しかし、魔力エネルギーが魔素(マナ)を瞬間的に励起させて起こる魔力波パルスの場合は、地上でも起きる。それに、核に限らず超強力な魔法を撃てば起きる可能性はあるのだが、そんな大魔法は今まで聞いたこともない。


「魔道通信機やテレビの故障には気付かなかったのかい?」


 僕の方はテレビ兼用の大型水晶スクリーンの基板を修理しながら尋ねる。魔力の過負荷で基板の魔法陣を構成する極細の魔銀(ミスリル)配線が焼き切れてるから、普通なら基板ごと交換なのだが、僕なら修復(リペア)成形(フォーミング)を使って直せる。


「その頃は一介の冒険者で国の情報なんて手に入らなかったからな。それに、テレビだって、まだ放送が始まったばかりで持っている家庭も少ないし、故障も珍しくなかった。魔道通信機も今みたいに多用されてたワケじゃない」


「わずか15年前なのに?」


「お前も、前世でテレビが普及したスピードは知識として知ってるだろう。パソコンとインターネットと携帯電話が普及したスピードの方は体感してるはずだぞ?」


「確かにね。しかし、これだけ影響がでかいと、一般向け商品まで全部シールド化が終わらないと『核』は使えないな」


 まだこちらの世界にはコンピュータネットワークに相当するものがない。だが、テレビは普及していて、高度情報化社会のとば口に立ってはいるのだ。魔道通信機の方は自前の遠話(テレフォーン)の魔法で何とかできる人間はまだ多いが、今時水晶玉に遠像(テレヴィジョン)の魔法をかけてテレビ放送を受信するなんて方法を知っている人間はそんなに多くはないだろう。総力戦を戦わなければいけない時に、後方の情報通信が混乱するのは避けたいところだ。


「今回の爆発は、大爆発ビッグエクスプロージョンの核爆発よりも規模がデカいがな。前回はもっと影響範囲も狭かったはずだ。だが、まあ使えないというのには同意せざるを得んな。もともと使いにくいシロモノだし、特に核分裂の方は放射性残留物を考えると地上じゃ使いたくない」


 まあ、そうだよな。会話をしながらも水晶スクリーンの基板修理が終わったので、魔力波探知機のモニターの方の修理にかかる。探知機の発振装置本体の修理はヤマムラさんたちが総出でかかってるはずだ。


「核分裂については、研究の方も防御魔法優先で進めているみたいだからね。特に中性子妨害ニュートロン・ジャマーは早急に誰でも使えるように魔道具化しないと。あれは維持に結構精神集中が要るよ」


 体感から言わせてもらう。中性子妨害ニュートロン・ジャマーは効果永続化は難しいものの、維持に必要な魔力量はそんなに多くない。問題は、発動のためのイメージ化が難しいことと、維持するための精神集中が必要なことで、これらは魔道具化することで自動化できる。魔道具化した上で魔道エンジンと直結すれば結構長時間の連続使用も可能になるだろう。


「アレを直径1キロの範囲で高度100キロまで維持とか、お前の魔法能力は本当にバケモノだな」


 父さんに感心されるが、それを言うならもっとバケモノが身近にいるだろう。


「ヒカリには負けるよ。あいつが何をやったか、父さんには分かってるだろう?」


「ああ、爆発の威力が準備した弾体の想定威力よりもはるかに強かった。あいつ、あの場で『愚者の石』と『二重水素(デューテリウム)』『三重水素(トリチウム)』まで生成してやがったな」


 あの異様な消費魔力量の多さと、魔力の練り込み方は、それをやってたんだろうな。弾体内部に詰められた愚者の石を起爆するだけなら、円環状に並んだ愚者の石を瞬間的に爆縮するだけでいいんだから、制御が少し大変だが魔力量的にはそんなに多くは必要ない。


 だが、こと愚者の石を生成するということになると、その必要魔力量は膨大なものになる。物理法則を無視できるのが魔法というものではあるが、その無視の度合いによって必要な魔力量が増える。質量保存の法則を無視して、無から物質を作り出す~というよりは魔素(マナ)や魔力から物質を作り出すというべきか~場合は原子量が多い物質ほど魔力が必要になる。しかも、その必要魔力量は単純比例ではなく重くなるほど必要量が格段に増えてしまう。だから、水素は一番少なくて済む。例えば原子量1の水素と8の酸素の化合物である水なら少ない魔力量で簡単に出せるし、原子量14のケイ素と酸素が主になるガラスを作り出すのも、そんなに大変ではない。しかし原子量92のウランを生成するなど、相当な量の魔力が必要になる。


 それに比べれば、まだ二重水素(デューテリウム)三重水素(トリチウム)の生成の方が魔力量は少なくて済むだろう。何しろ元は一番軽い物質である水素だ。だが、いずれにせよ放射性物質を作り出すのはイメージ化と魔力操作の方もかなり難しい。僕だって中性子妨害ニュートロン・ジャマーで原子中の中性子の固定とか、頭が痛くなるようなイメージ操作を必死こいて何とかやり遂げたから分かるんだが、原子核に中性子を付加するとか相当に精密なイメージ操作をしないとできないだろう。


 ところが、ヒカリの奴はあの短時間に、しかもぶっつけ本番でウラン235と二重水素(デューテリウム)三重水素(トリチウム)の生成をやらかしたのだ。わが妹ながら、つくづく天才としか言いようがない。


「あいつが核弾頭を盗んだのは、イメージ化する際のモデルが必要だったからに過ぎないんだろう。実際のイメージ化に成功した以上、あいつはライガーに乗ってれば何も無い所から核弾頭を作り出せるはずだ」


 僕の言葉に、父さんも渋い顔をして同意する。


「今までは愚者の石の生成なんて実験室レベルだった。人類の魔力量じゃミリグラム単位の量しか作り出せなかったからな。だからこそ天然の天王石鉱山を持つ我が国だけが核兵器を作れた。だが、あいつはAGの魔力量を使って愚者の石を生成しやがった。『核を操る娘』か。『反物質を操る女』よりはマシだが、とんだ『戦略人間兵器』だな」


「その『覚悟完了』な呼び方はどうかと思うんだけど」


 呼び方にはクレームをつけつつも、父さんの言う通り某宇宙戦艦の続編のヒロイン~それもテレビシリーズの方~並にヤバい能力であることは確かだ。


「お前も、ヒカリだけに負担をかけさせたくないなら、同じことができるようになっとけ」


「やろうと思えばできるさ。何なら今から再現してやろうか?」


 これは別に豪語じゃない。中性子妨害ニュートロン・ジャマーが使えるんだから、中性子を操作して放射性同位体を作り出すことは、難しくても不可能ではないのだ。


「やめろ。…ったく、お前らは本当に危険な子供たち(テリブルチルドレン)と呼ばれるのにふさわしいな」


「褒め言葉だと思っておくよ」


「褒めてるんだよ」


 そう言われると、ちょっと嬉しい自分がいる。何のかんの言ったところで、僕はこの父親のことを尊敬してるんだから。と、そこに母さんが入ってきた。資料らしき物を持っているから、何か報告でもあるのかな?


「あなた~、市内の病院からの報告がまとまったわよ~。例の魔力波パルスのショックで大人12人が軽いめまいなどの軽症、子供148人が気分の悪さを訴えて26人が念のため入院だそうよ~」


 やっぱり影響はあったみたいだな。子供への影響の方が強いのか?


「赤ん坊への影響は?」


「逆に少ないみたい。子供でも年齢が高くて魔法が使える方が影響が強いみたいね~。ツバサやツバメは一応大丈夫だったけど、年の割に魔法が上手だから結構つらかったみたいよ~」


 なるほど、魔力操作に未熟な方が感知能力は低いから、逆に影響を受けにくいのか。


「ふむ、魔法能力が上がっているが、まだ体力が低いローティーンあたりが一番影響を受けやすいようだな」


 父さんが総括する。


「これだと、やはり核の実戦使用にはいろいろ制限が必要だな。投入魔力量に比べて高い破壊力は魅力なんだが…」


 ぶつくさとつぶやく父さん。確かに、ライガー1機の魔力量を付加しただけで破壊力は格段に上がっているのだ。投入魔力量に対する破壊力という意味でのコストパフォーマンスは属性魔法なんかよりも遙かに高い。だが、一発撃つたびに子供がバタバタ倒れるようじゃあ、兵器としては使えない。


「魔道具へのシールドだけでなく、人体の保護についての研究も必要だな。そのレポートはエリア51と52にも送って…」


 突然、至近距離に空間魔法を感知する。誰かが瞬間移動(テレポート)してきたのだ。クー?


「すぐに外に来て! 空に映像が出てるの!!」


 えらく慌てているようだが、空に映像だと? とにかく行ってみよう。どうせ、この管理室は通信機が直らないかぎり使い物にならないし。


 クーに連れられて両親と一緒に外に瞬間移動(テレポート)し、空を見上げる。確かに映像らしきものが映っている。


幻影(イリュージョン)の大規模な遠距離投影か。どうやら望遠(テレスコープ)を応用した新魔法のようだな。魔道具なのかAGでかけているのか分からんが、面白い魔法だ」


 父さんが分析する。確かに魔力の感じが望遠(テレスコープ)に似ているな。それにしても、随分派手なことをするモンだ。


 映っているのは、どうやら記者会見場のようだ。演壇らしきものがあるが、その後ろには見たことのない旗が映っている。青と緑の複雑な模様の円の後ろに剣が交差している意匠だ。だが、あの青と緑の円の模様は、どう考えても…


 と、そこで演壇の所に人が姿を現した。帝国の騎士服に似ているものの、細部が少し違う黒い軍服を着込んでいる。肩章には星がたくさんついているが、勲章などはつけていない。銀髪碧眼、細面で鋭い目をした、14~5歳くらいの美少年。前から何度も映像や写真で見たことがある顔だ。僕にとっても血のつながった母の従兄弟。


 そのまま演壇に立ち、まっすぐにカメラ目線で、つまり僕たち見上げている人々を見つめて、おもむろに口を開く。


「全世界の人々に告げる。私の名前はルードヴィッヒ」


 そこで一旦言葉を切って、一拍おいてから続ける。


()()は狙われている!」

アイキャッチ


「神鋼魔像、ブレバティ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] ここらで話が大きく動いてますね。 13話といえば1クール終了あたりですか。
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