第9話 ホムラ出撃 Bパート
アイキャッチ
「神鋼魔像、ブレバティ!」
「久しぶりだなっ、ノゾミ・ヘルム!」
「お久しぶりです、殿下」
頭痛の種、その2がいた。母さん、殿下、姫様、爺やさんと一緒に格納庫の外に出ると、他のパイロット候補が待っていたのだ。真っ先に声をかけてきたのが、こいつ。外見だけなら風格あるハンサムと言ってもいいだろう。カイと互角の身長の上、がっしりと筋肉がついており、とても15歳には見えない迫力がある。紫の髪と金色の目、そして頭の横にあるこれも金色の立派な角。金色の目と角は竜人族の証である。ジャヴァリー・ドラガオン殿下。十カ国連邦構成国の一つ、竜人族国家「神聖ドラガオン帝国」の大公家の嫡男にして現皇帝の甥にふさわしい立派な風貌である…外見だけは。
いや、実力の方も、一応はある。何しろ、3年前に行われた前回の十カ国連邦武闘大会、少年の部準優勝の実力者、なのだ。並の騎士よりは強いことは知っている。なぜなら…
「あの時は不覚を取ったが、あれは所詮お遊びの武闘大会! 余の真の実力は実戦で見せつけてやろう!!」
「味方として、殿下のお力を拝見できること、誠に頼もしく存じます」
まったく誠意のない社交辞令を、儀礼は完璧に守りながら返しつつ、あの時の決勝戦を思い出す。その前の準決勝でカイと全力で戦った後だったからなあ。カイが相手だと、攻撃魔法は使ってこないかわりに、こっちの攻撃魔法も大半は防がれるんで、結局身体強化をかけての格闘戦主体にならざるをえないから、いつも魔力は残るものの体力的にはヘトヘトになるんだ。あの時はカイも本気だったから、かなり魔力を残して勝てたものの、精神的にも肉体的にも疲労困憊していた。それで、決勝戦はもう早く決めようと思って、最初っから魔法勝負にして、こいつの戦法をそのまま真似て力押ししてしまったのだ。
こいつの戦法は、とにかく竜人族ならではの豊富な魔力量に物を言わせての攻撃魔法の力押しをしかけて、相手が防御に回ったところで接近戦に持ち込むというもの。力押しで押し切れればそれでいいし、押し切れなかったとしても魔法防御に力を入れているところに急に接近戦に持ち込まれれば対応できないので、準決勝までは、それこそ圧勝につぐ圧勝で勝ち上がって来ていた。
ただ、魔力量なら僕も相当に多いので、こいつが攻撃魔法をしかけてきた時に、そのまま応戦して撃ち合いに持ち込み、相殺した上でさらに速射して押し切ってしまったのだ。カイとの準決勝の方は「大会史上屈指の名勝負」と言われているのに対して、決勝戦は「派手だが凡戦」という評判である。ちなみに、カイの方は当然のように三位決定戦で勝利して銅メダルだった。トーナメントの組み合わせでこいつとカイが先に当たってたら、決勝は僕とカイの勝負になってたろう。
なお、同大会少女の部の優勝者はヒカリ、準優勝はクーである。リーベは不参加だったのだが、今にして思えば目立ちたくなかったからだと分かる。あの時も大会後少しの間は「天才兄妹」みたいな扱いでテレビや雑誌にもてはやされたからな。もっとも、青年の部は人気があるものの少年の部はそのオマケみたいな扱いだし、何しろまだ子供だったから、すぐに沈静化していたけど。まあ、あの時の経験は今のマスコミ対応に少しは役に立ってるから、いい経験だったと言っていいのかな。
…よく考えたら、いまひとつ自覚してなかったけど、武闘大会優勝、準優勝、3位だった僕たちって、連邦の危険な子供たちのエース格なんだよな。そう考えると、リヒトが僕の名前を知ってたのってのは、縁戚関係や裏を抜きにしても当然だったのかもしれない。
話を戻すと、こいつはつまり非常に単純なのである。魔法も得意なくせに脳筋という印象がぬぐえない。おまけに大公家嫡男ということで周りにチヤホヤされまくっているせいでナチュラルに尊大かつ傲慢。世界は自分を中心に回っていると信じて疑わない性格なのである。まあ、大昔には大陸を統一していたこともあるドラガオン人は、総じて尊大な性格なんだが。
ただし、単純なのでぶらかすのも簡単。あの時も、試合後に文句をつけてきたので、へりくだって「今回はたまたま」「運が良かっただけ」「所詮はお遊びで実戦とは違う」みたいに言ったら、あっさり機嫌を直していた。
とはいえ、前回は決勝戦前後だけ相手にすればよかったのだが、今回はAGの操縦訓練である。ずっとご機嫌取りをしなきゃならないかと思うと頭が痛い。
まあ、他のパイロット候補生はまっとうな人が多そうだし、何とかなるだろうけどね。当然ながら武闘大会で見た顔も多い。4人は僕自身が対戦経験があり、11人はカイやヒカリたちの対戦相手として見たことがある。あと2人も資料によると決勝トーナメント参加者だったらしいので、覚えてないけど観戦はしていたはず。つまり、お立場上武闘大会には参加されていないタケル殿下以外のパイロット候補生は、最後の1人を除いては全員があの武闘大会の決勝トーナメント参加者なのである。
なお、今回のパイロット候補生は、きれいに十カ国から各2人ずつの参加である。それぞれが、ここで訓練を積んでから各国に帰って、今度は指導教官になるわけだ。…いくら僕たちが住んでいるからって、その片方がタケル殿下ってのはどうよ? ヤマト皇国も何考えてるんだか…
しかも、もう片方の人が、そのトーナメント不参加者なのだ。年齢も何と13歳。他のメンバーより1~2歳年下なのである。魔力量的に不利な年下で、どうしてパイロット候補生になれたんだろうか?
年下が不利というのは、魔力量は14~5歳くらいまでは急成長するからだ。何もしないでも、3歳くらいまでは前年の3~4倍、それ以降は前年の2倍くらいに保有魔力量が増える。このとき、魔法の訓練をして魔力を使い切るようにしていると、さらに保有魔力量が増える。だから、3歳前に魔法の訓練をしていると、何もしていない場合に比べて最低でも倍以上の保有魔力量を持てるようになるのだ。転生者が反則じみた魔力量を持てるのは、この幼少期のブースト効果が大きい。ヒカリやカイたちの魔力量が多いのも、僕の影響で3歳前から魔法を使い始めていたからだ。リヒトとリーベも同じだろう。
この急成長は、ほぼ14~5歳で止まり、それ以降は訓練による微増しかなくなる。それでもきっちり訓練していれば魔力量は増えていくのだが、使わないと逆に減ることもある。まあ、この生活の隅々まで魔法を使わないといけない世界だと減るなんてことは、ほぼあり得ないけどね。この世界で15歳が成人年齢なのは、つまり魔力が一人前になることが成人の条件になっているということだ。
ただし、3年前の武闘大会の少年・少女の部はその「年下が不利」という常識の例外だった。何しろ、参加条件が10歳以上15歳未満なのである。僕たち危険な子供たちは、生まれた段階で保有魔力量がその前年までの子供の3倍以上あったのだ。11~12歳の時点で、その3年前に生まれた子供よりも魔力量が多いのである。普通の大会なら、大抵は決勝トーナメントに残るのは14歳ばかりで、まれに13歳が入る程度だったのが、その年の決勝トーナメントは全員が11~12歳の危険な子供たちになってしまったのである。体力差よりも魔力量の差の方が影響してしまったのだ。さすがは魔法世界である。
ただし、それ以下になると今度は全員が危険な子供たちなので、年下が不利という条件が変わらなくなる。それにも関わらずパイロット候補ってことは、この13歳の人も転生者か、その縁者の可能性があるな。並んでいるパイロット候補の中でもひときわ背が低く身長155センチくらいと姫様と同じ程度で、小柄なのが逆に目立っている。もっとも、年齢から考えるとまだ伸びるだろう。黒目黒髪はヤマト皇国では珍しくない。
その顔を見てちょっと驚いたのは、性別は男、と資料にあったのを思い出したからだ。名前はリューで、姓が無いってことは平民なのだろう。確かに男の名前ではあるのだが、顔を見るとまるで女の子のようなかわいい顔立ちの上に、首のあたりまで伸ばした髪をきれいに揃えて切っているので、おかっぱ髪の女の子にしか見えないのだ。いや、僕も女顔だからあまり人のことは言えないのかもしれないが、髪はそこそこ短くしているのと身長が高いので女に間違えられることは少ない。
なお、連邦の騎士服は男女で差はないので服での区別もできない。…いや、本当は帝国も差はないはずなのだが、どっかの誰かが勝手に改造してるからなあ。ちなみに、連邦の騎士服は、肩章と襟章がついているものの、基本はボタンが隠れている白ランのようなスタイルである。最初に見たときは何で学ラン? と一瞬思ったのだが、よく考えてみたら、そもそも前世の学生服自体が明治期のフランスやドイツの陸軍の軍服をモデルにしたものだったのだから、騎士服のデザインとして別におかしいわけではない。色が白だから、むしろ旧帝国海軍の二種軍装の方が近いかな。海軍と言えば、女子のセーラー服も、その名の通り本来は水兵の服がモデルなんだよな。だから、セーラー服変身ヒロインというのは、由来を考えると戦闘服としてあながち変でもないのだ。…何か脱線したな。
ところで、この世界の人類の保有魔力量は、種族差も少しはあって、竜人族とエルフ族は多めになり、獣人系各種族とドワーフ族は少なめになる。ただし、その差は最大でも2倍までは行かないので、訓練で種族差を埋めることは可能だ。たぶん、ジャヴァリー殿下とカイだったら、カイの方が魔力量は多いだろう。それに比べると男女差はほとんど無いが、わずかに女性の方が多めになる傾向があるらしい。
ちなみに、身体能力は逆に獣人族とドワーフ族が高くてエルフ族は低い。ところが、竜人族は身体能力も高いのである。この身体能力と魔力量が共に高いという種族特性が、古代においては大陸統一の要因となったのだろう。当然、個人の戦闘能力を競う武闘大会では竜人族の上位入賞が多くなるのだ。これも竜人族のプライドの高さの原因の一つである。その反面、繁殖力は低く、種族人口は一番少ないので、文明が進んで数の勝負になってくると戦争では劣るところも出てくるのだ。
繁殖力と遺伝子強度で言えば、一番強いのはやはり人間だ。この世界の人類は基本的に全種族混血できるのだが、人間と他種族が混血すると、子は例外を除いてほぼ人間になる。唯一の例外がエルフ族で、ハーフエルフになる。エルフの遺伝子は結構強くて、クォーターでも緑髪になることが多い。さらに種族特性として老いにくい。寿命自体は他種族と変わらないのだが、老化が始まるのが遅いのだ。先祖にエルフがいると、外見上は普通の人間でも老化が遅くなる。父さんも母さんも年の割に若い事を考えると、どっちの家の祖先にもきっとエルフがいたんだろうな。
ちなみに、人間≧エルフ>ドワーフ>獣人>竜人の順で優性遺伝になる。混血すると優性の種族の子が生まれるが、外見には出なくても遺伝子はプールされているようで、例えばドワーフとのハーフやクォーターの人間がドワーフと混血すると、例外的に人間ではなくドワーフが生まれることもある。ハーフエルフ同士の混血ではハーフエルフは生まれず、人間かエルフが生まれる。獣人内ではさらに狼族や虎族などの種族があるが、これは両親のどちらかの種族になる。
もし、古代ドラガオン帝国が混血児でも貴族や皇帝になれることを認めていたら、今でもドラガオンがデューラシア大陸を支配していた可能性はある。しかし、誇り高い竜人族は混血児を認めなかったので、他種族の反乱にあい、結局は種族の故地を守るだけの国に縮小してしまったのだ。それでもプライドだけは高いんで連邦加入も最後だった。
…などとつらつら考えながらも、各員の顔を確認して今朝インストールした資料を思い出しながら顔と名前を照合していると、母さんが全員に声をかけた。
「さて、お待たせしましたが、さっそく皆さんにはAGに試乗していただきます。指導はこちらにいるノゾミが行います」
母さんに紹介されたので、皆の前に立って挨拶する。
「ヘルム私領軍所属正騎士、ノゾミです。皆さんは出身国も地位もそれぞれ異なりますが、この訓練期間中は臨時ですが我がヘルム私領軍の所属となります。この期間だけは私の命令に従っていただきます。異存のある方はお帰りください」
ジャヴァリー殿下でさえも異存はないようで、大人しく話を聞いている。これなら何とかなるかな、と思いつつ話を続ける。
「今回量産される機体は、汎用型の『ドラグーン』と航空高機動型の『ペガサス』の2機種です。ペガサスについては飛行形態での使用が前提になりますので、最低でも飛翔を使用できることがパイロットの条件になります。この中で飛翔を使える人は?」
全員の手が上がる。さすがに飛翔なら使えるか。一応ペガサス自体にもコマンドワードだけで飛翔系の魔法が使える魔道具は組み込まれているが、それが破壊されたら墜落してしまうので、パイロットも使えることが望ましいのだ。
「では、音速飛翔を使える人は?」
今度は、13人になる。両殿下と姫様は使えるのか。あと、リュー君も使えるようだ。
「それでは、超音速飛翔は?」
おう、何と4人もいたよ。タケル殿下と姫様も使えるのか。さすがにジャヴァリー殿下は使えないか…というか、むしろ使える方が変だぞ、ヤマト皇国の皇族。あとはエルフィー王国のリーフ・エルフィーさんと、ドラガオンのフィリア・ウィベールさんか。
リーフさんも大公家の長女なので王族であるが、実はリンの従姉妹にあたる人で、3年前の大会では少女の部の準決勝でなかなか良い勝負をしたのが縁でヒカリの友人になり、文通をしていた知人なのだ。エルフ族国家の王族なので当然エルフ族。友達の親戚で、しかも妹の友達だし、何より気さくな人なので、お姫様なのに様付けとかする気にならないんだよな。
フィリアさんの方も準決勝で、こちらはクーと熱戦を繰り広げてたな。そういえば、あの時の決着はクーが上空から超音速飛翔で急加速して飛び込んで最後の一撃を決めたんだった。上がオープンの闘技場とはいえ、狭い所でよくやったもんだ。アレで覚える気になったのかもしれないな。こちらも当然竜人族だ。確か侯爵家の次女だったな。やはり、武闘大会の少年・少女の部に出るのは幼少の頃から魔法や剣術・格闘術の訓練を積んでいる貴族の子弟が多い…青年の部になると腕に覚えのある平民冒険者もたくさん出てくるけど。そのせいか、ここに参加しているメンバーも平民出身者は少ない。
そういえば少女の部の方はこの2人が戦った3位決定戦も見ごたえがあったな。結局はフィリアさんの勝ちだったが、ヒカリの話だとリーフさんはフィリアさんとも文通友達になったらしい。度量のある人だと思った覚えがある。
さて、飛翔系魔法の確認をしたので、搭乗割り振りについて説明するか。
「一応、両機種とも乗っていただきますが、音速飛翔や超音速飛翔を使える人はペガサスの方を主体に訓練してもらうことになるかと思います」
ここにいるメンバーは、一応パイロット候補生とは言っているものの、実のところはこの訓練でよっぽど不適性を示さない限りは、まず正規パイロット採用は間違いないだろう。さらには、国に帰って教官になることも、ほぼ確定事項だ。各国とも1名ずつ、ドラグーンとペガサスに習熟してもらう必要がある。ドラガオンだったら、フィリアさんがペガサスの指導教官になり、ジャヴァリー殿下がドラグーンの指導教官になるというわけだ…ジャヴァリー殿下が教官って、本当にできるのか非常に心配なんだが。
そして、このメンバーが実戦参加するときは、指揮官クラスになることも確定的と言える。だから、次に告知することも、ほぼ決定事項なのだ。
「今回乗っていただくのは先行量産型になりますので、皆さんの訓練とレポートを見て改良や最終的な修正を行います。また、訓練の状況次第では、より高性能な専用カスタム機をご用意することもありますので、訓練と言えども気合いを入れてご参加いただきたく存じます」
「つまり、お前のドラゴンと同じものを余も貰えるというわけだな!」
自信たっぷりに言い切るジャヴァリー殿下。この反応は予想通りだから気にもならない。すぐにドラゴンよこせとか言われる前にぶらかしとこう。
「私のドラゴンは所詮は試作機ですので、殿下の訓練のご様子を拝見して、お得意の戦法に合わせた、よりカスタマイズされた専用機をご用意することになるでしょう。もちろん竜人族の皇子にふさわしい竜の装飾をほどこした機体になるかと思います。ですが、そのためにもぜひ訓練でお力を拝見したく」
「うむ、任せておけ!」
自信たっぷりに胸を叩く殿下。やはりチョロい。あ、フィリアさんがため息ついてる。きっとお目付役を仰せつかって来ているのだろう。
「それでは、さっそく始めましょう。マニュアルの導入はお済みですか?」
「わたしはマニュアルをもらっていないのだけど?」
そういえば、姫様は飛び込みだったな。服も変えてもらった方がいいか。
「ん、お前は作業員ではないのか?」
ジャヴァリー殿下が姫様に尋ねる。あれ、王族同士だから知り合いかと思ってたんだけど?
「わたしをお忘れですか、ジャヴァリー殿下? この姿は、工場見学のためです」
「うん!? ホムラ姫ではないか! これは失礼した。あなたもAGパイロット候補なのか?」
ああ、顔までよく見てなかっただけね。っと、マズい、勝手に「候補です」とか言われて既成事実化されたら困る。
「ええ、わたしも…」
「姫様はAGの体験搭乗です!」
ご無礼は承知の上で割り込む。ムッとしてこちらをにらむ姫様に、僕の手持ちのドラグーンとペガサスのマニュアルを差し出して言葉を続ける。
「これがマニュアルになりますので、導入してください。それからお召し物も搭乗用の軽装鎧をご用意いたしますので…」
「あ、それなんだけど~、パイロットスーツができたので、皆さんにも着替えていただこうかと思います~」
母さんが割り込んで来たのだが…パイロットスーツですと!?
「これも新装備ですのでテスト対象の一部になります~。着用感や機能性などについて、レポートを提出してくださいね~。工場建物内の更衣室に、皆さんそれぞれに合うサイズのパイロットスーツを用意してあります~」
そんな話は初耳なのだが、まあ魔像研究所ではよくあることだ。しれっと、すべて予定通りみたいな顔で母さんの言葉に続けて指示を出す。
「それでは更衣室にご案内いたしますので、そちらでお着替えください。副司令、姫様の分はご用意できるのでしょうか?」
副司令ってのは、もちろん母さんのこと。候補生の皆さんの前で「母さん」呼ばわりしたらドン引きでしょう。
「いくつか予備があったから大丈夫よ~。女性用Sサイズでご用意いたしますね~」
「それなら、軽装鎧よりもパイロットスーツの方がいいでしょうね。男性は私の方に、女性は副司令についてきてください」
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予想通りというか、パイロットスーツは体にピッタリした全身スーツだった。ただし胸から腹のあたりに保護材が入って少し厚くなっているから、女性用のスーツも胸が強調されることはない…はずなのに、なんで姫様の胸はそんなに大きいのか? あれは胸囲ではない、脅威だ、人類の男性すべてにとって。
あ、もちろん、まじまじと見て視線を悟られたりするような下手はうたないよ。大きな胸だけならクーで見慣れてるし。
着替えを済ませて第二格納庫に整列している全員のスーツ姿をチェックするように見回す。男性用が白、女性用が薄黄色なのは、大人気ロボットアニメのパイロットスーツの真似だろうな。もっとも、濃い赤とかだと大怪我した際に流血が分かりにくいんで、薄い色にしてるんだろうと推測はできるが。ちなみに、僕自身は乗る予定は無いものの、同乗指導をする可能性を考えて着替えている。…初めてだし、着てみたかったのも事実だけどね。
「それでは、4人ずつ搭乗体験をしていただきましょう。ジャヴァリー殿下とリューさんがドラグーンに、ウィベールさんとリーフさんがペガサスに…」
「まず、わたしを乗せなさい!」
搭乗割りを言い渡そうとしたら、いきなり姫様から横槍が入ったよ。困った人だ。
「姫様、あなたはあくまでも臨時の搭乗体験です。正規のパイロット候補生が優先されるのは当然のことで…」
「わたしは次でもかまいませんので、代わりにお乗りいただいてはいかがでしょうか?」
姫様にお説教しようとしたら、リーフさんが割り込んで来た。人の話を邪魔するタイプじゃないと思っていたので、ちょっと意外に思ったのだが、姫様に見えないように目配せしてきた。…なるほど、うるさいのは先に乗せて黙らせておけ、と。まあ、同じ思惑でジャヴァリー殿下にも先に乗ってもらうのだから、姫様も同じ扱いにしていいか。
「よろしいでしょう。ですが、これはリーフさんのご厚意という事をお忘れになりませんように」
「分かっています!」
釘を刺しながら姫様の搭乗を認める。さっそく4人ともいそいそと機体に乗り込んで行く。
「全員、シートベルトはきちんと着用しましたか? 起動方法はお分かりになりますね。それでは、まず起動させてみてください」
「「「「ブレバティ・セットアップ」」」」
4人の声がほぼハモった。今回の機体は個人認証をかけていないから、これだけで完全起動するはずだ。
「うぉっ、何だこの魔力消費は!?」
「魔力が吸われる…」
「…結構、きついですね」
「…」
姫様は無言だが、他の3人は起動に必要な魔力量に驚いている。
「このように、AGは起動だけでもかなりの魔力を消費します。このため、我々危険な子供たちでないと使えません。AGサイズの起動用魔道具は当研究所でも鋭意開発中ですが、実用化の目処は立っていないため、しばらくは我々がAGパイロットの主力として働く必要があります。その先導役として皆様にかかる期待は大きいということをお忘れにならないようお願いします」
乗っている4人はもちろん、待機している残りのメンバーに対しても、この搭乗訓練とパイロット選抜の意義を改めて説明する。裏には「だからワガママ言うなよ」という意味を込めているのだが、殿下とか殿下とか殿下とか姫様は気付いてくれるかな?
「何だ、実際に動かしてみたら簡単ではないか。おい、ノゾミ、ちょっと外に出てみてもよいか?」
「本当に体と同じように動きますわ。あと、変形も試してみたいですわね」
…殿下も姫様も、まったく気付いてないよ(泣)。今日は全員の搭乗体験だけなんだから、格納庫内でとりあえず全員乗ってみた所で終わりにしようかと思ってたんだが。
「本日は、まず全員が搭乗体験をしてみることが主な目的ですので…」
「でも、広い所で乗った方が、短時間でもいろいろ体験できるのは確かですわね~。外に行ってみてもいいんじゃないの~」
母さんが横槍入れてきてどうするんだよ!? と心の中でツッコみつつ、何事も無かったかのように続ける。
「なるほど。副司令もこのように申しておりますので、市外の演習場に移動しましょう。残りの皆様にもそちらに来ていただいて、現地で乗りかえていただく方が時間も魔力も節約できるでしょうね。私が一眼巨兵で次に搭乗予定の4人を連れて行きますので、残りの方々は車で移動をお願いします。副司令、手配をお願いできますか?」
「りょ~か~い」
母さんが面倒な事を言い出したんだから責任取れよ、という気持ちを込めて車の手配を丸投げする。
流れ上僕自身が一眼巨兵を動かすことになったので、小脇に抱えていたヘルメットをかぶる。フルフェイスではなく目から鼻の前あたりまでをガラスが覆っていて、口元は開いているタイプだ。ヘルメットの材質はオリハルコリウムで、ガラス部分は玻璃障壁と同じ材質と、かなり頑丈そうなヘルメットになっている。ちなみに、スーツの胸部緩衝材あたりにもオリハルコリウムやセラミックファイバーが使われているし、スーツの素材自体がミスリウム繊維だったりして、並の鎖帷子あたりよりはよっぽど強度がある上に、さらに魔法で強化されている。魔法強化がされていないフルプレートアーマーより丈夫だと母さんは言ってたな。
飛翔で一番手前の一眼巨兵のコクピットへ飛ぶと、ハッチを開いてシートに座り、ハッチを閉じてベルトを締め、操縦桿を握りって起動キーワードを唱える。
「コンタクト」
さすがに個人認証機能はついていたのだが、解除してあるので今は誰でも乗れる。起動のための魔力が吸われるが、ドラゴンに比べると1/10程度だ。それでも、父さんや母さんほどの実力者でも一眼巨兵を起動させるにはギリギリで魔力が足りないのだから、AGの必要魔力の大きさと、それに対応できる危険な子供たちの魔力保有量の大きさが分かるというものだ。
今回は訓練のための移動なので基本の魔力感知や拡声以外の魔法をかけておく必要はないだろう。
「それでは、リーフさん、ヤマダさん、スクーレさん、アルミュールさんが、私の一眼巨兵の掌に乗ってください」
かがんで掌を差し出し2人ずつ乗せる。リーフさんと殿下は超音速飛翔を使える残りの2人なのでペガサス乗り換え要員として当然の人選。あとはドラグーン向けの人材を適当に選んだのだが、アルバ・スクーレさんはアニマーレの虎獣人の男性で、大会では2回戦の対戦相手だった人だ。なかなかの実力者で、魔力量だけならジャヴァリー殿下の方が上かもしれないが、攻撃と防御のバランスや細かいテクニックならアルバさんの方が上だろう。ジュディ・アルミュールさんはプランタン共和国の女性で、人間だが母親はドワーフだそうだ。大会ではクーの2回戦の対戦相手で、こちらも魔法も剣術も偏りなく使いこなすバランスタイプだったが、特に守りが堅いという印象があり、例の三兄弟のドライと似たタイプになる。
「ドラグーンとペガサスは歩いてついてきてください。今回は全員に乗っていただくことになりますので、ペガサスはともかくドラグーンは飛翔を使うと魔力を消費しすぎます」
そう伝えて4機を引き連れ、掌が揺れないように水平を保ちながら歩いて、以前にカイとトライデントのテストをした市外北部の演習場に向かう。
こんなAGが5機も連れだって大通りを歩いていると、普通の街なら大騒ぎになるかもしれないが、何しろここは魔像研究所のお膝元。研究所と鉱山の発展に合わせて急成長した街なので、研究所の魔像が道を歩いていることなんか日常茶飯事だから、誰も驚きも騒ぎもしない。いずれAGが普及すれば、他の街でも同じようになるだろう。魔道車だって父さんが生まれた頃は珍しい物だったというが、今ではピュアウォーター村みたいな田舎村にだって何台もある。
鉱山から他の街に向かう輸送トラックにぶつからないよう注意しながら大通りを進み、市の北の工場街を抜けると、すぐに演習場になる。
「あの、ノゾミ様は、どうしてボクを最初のメンバーに選んだのでしょうか?」
歩きながらリュー君が聞いてきた。
「ヤマダさんと、君だけがトーナメント不参加者だからだよ。特に君はまた年齢も低いのにパイロット候補に選ばれた理由を知りたくてね。実際にAGを動かすところを見てみたかったからさ。ところで、様付けしなくてもいいから。今回は指導教官ってことになってるので指揮には従ってもらうけど、そんなに偉いわけじゃないし」
理由を説明しながら、様付けはやめてくれと言う。ジャヴァリー殿下や姫様とかは目上だから呼び捨てが当然だし、他のメンバーはほぼ同格だから「殿」か「君」か「さん」付けだ。確かにリュー君は平民らしいから貴族の僕は目上かもしれないけど、軍では騎士になったら平民出身だろうと貴族出身だろうと同格という建前になっているんだから、様付けはやめてほしい。…正体を隠しているタケル殿下に「さん」付けして呼ばれたり、こっちも「さん」付け呼びしてるのは正直ちょっとストレスなのは僕も同じなんだけどね。
「そうですか…じゃあ『先輩』ってお呼びしてもいいですか? あと、ボクのことも『さん』付けはやめてくださいね」
「…ああ、いいよ」
ちょっと予想外の返答に一瞬反応が遅れたが、年下だしAGパイロットとして先任であることも間違いないので「先輩」ってのは悪くないかな。「さん」付けされて気持ちわるいのも分かるし。…などと話していると、隣にいたジャヴァリー殿下も話しかけてきた。
「このAGというやつは、歩くくらいだと大して魔力を消費しないのだな」
「特に魔力を込めない限りは、普通の身体動作に使用する程度の魔力は、すぐに魔道エンジンから補給されます」
感心したように言う殿下に、軽く説明する。
「身体強化魔法は効かないのだな?」
「マニュアルにも記載してありますが、肉体強化系は効きませんね。感覚強化系は効きます。魔力波を使う、使わないで違いがあるようです。ただ、腕や足に魔力を込めると、一時的なパワーアップが可能です。格闘での魔力撃の使い方に近いですが、ため込む感じで魔力を込めるとパワーの強化になります」
「なるほど、面白い」
雑談気味にAGと肉体での魔法や強化法の違いなどを説明しているうちに、演習場に着く。
「もう歩行などは慣れたでしょうから、少し自由に体を動かしてみてください。ペガサスの方は、変形して飛翔を試していただいてもよいですが、あと5回は乗りかえがありますので、飛行は5分程度にしてください」
さっそく自由にしてよいと指示する。せっかく演習場まで来たのだから、ある程度は自由にしてもらう方がよいだろう。
「10分ほどで交代にする予定ですので、それまで皆さんはこちらで見学していてください」
掌に乗せてきた4人を、演習場の端にある観戦席に降ろしていると、一人で格闘の形をなぞっていた殿下が声をかけてきた。
「ノゾミ、せっかくだから少し勝負しないか?」
やっぱり脳筋だよ、こいつ。
「次に乗る人もいますので、魔力消費をするのは困ります。魔法なしの格闘戦限定で、先ほどお伝えしたパワーアップを使わないという条件でしたら、5分1本でお相手してもよろしいですが」
「それで構わん! いくぞ!!」
「ちょっ!?」
いきなりハイキックとか、どういう神経してるんだよ!? いや、反射的にスウェイしつつ軸足払って転ばせたけど。
「やるなっ!」
もっとも、さすがに無様にすっ転ぶようなタマではなく、後ろ受け身からくるりと回転して立ち上がり、突っ込みながら正拳突きのラッシュをしかけてくるので、受けずにかわしながら後退する。あちらの外装はオリハルコリウムで、こちらはミスリウムだから打撃を受けるのは避けたいところ。へこむだけでも修理は必要なのだ。
「ちょこまかとっ!」
当たらないことに焦れた殿下の突きが少し雑になったので、即座にキャッチして体勢を崩しながら脇固めに持ち込む。
「うぉっ!?」
生身なら関節技も効くけど、前にも説明したようにAGには大して効果が無い。しかし、無垢のミスリウムが詰まっている一眼巨兵は、重量だけならドラグーンより重い。魔法やパワーアップなしのルールなら、うまく重心をコントロールしながら体重をかければ動きを封じることもできる。もっとも、これには少し裏がある。
実は、AGのパワーは魔力量と相関関係がある。単純比例ではないので、ドラグーンには一眼巨兵の3倍の魔力量があるからといって、パワーも3倍になるわけではないが、それでも30%以上のパワー差があるはずだ。
とはいえ、完全に関節を極められて押さえ込まれた状態では、そのパワー差を生かして脱出するのは困難である…生身の人間なら。AGの場合、人間とは構造が違うので、人体では力を入れられない状態でもパワーを出すことが可能なのだ。だから、今の状態でも殿下がAGの性能をフルに生かせるなら、脱出は可能である。
しかし、AGの操作に慣れていないと、人体と同じ程度にしか操ることはできない。乗ったばかりの殿下の場合は、生身の体と同程度の扱いしかできないのである。AGを動かすこと自体は簡単でも、操縦訓練が必要なのはこのためなのだ。
「このまま5分経過だと面白くないかと思いますが?」
「…」
問いかけると、殿下は無言で空いている方の手でこちらの体を2回軽く叩いた。いわゆるタップというやつで、降参の合図だ。
「魔法の撃ち合いが得手かと思っていたが、格闘でもなかなかやるではないか」
「いえいえ、殿下はまだAGに不慣れですし、魔法無し、魔力強化無しなどという練習試合のみの条件だからですよ。実戦ではこうはいかないでしょう。あれから殿下もだいぶ修練されたと聞き及んでおりますので、生身ですと今の私ではお相手になるかどうか…」
すごく悔しそうに、しかし一応はこちらの力を認めてくれたようなので、おだて返しておこう。機嫌を直しておいた方がいいだろうし。
「そ、そうか?」
「そうですよ。やはりAGに慣れることが重要ではないかと思われます。先ほどの体勢でも、AGの性能をフルに発揮すれば脱出は可能になります。ただし、それをするには、AGの動かし方に習熟する基礎訓練が必要です。慣れれば、生身ではできないような動きや、力の出し方ができるようになります。実戦形式もよいでしょうが、まずは基礎を固めることが早道なことは、よくお分かりでしょう」
「そうだな、やはり基礎練習からやるか」
やはり、チョロいお方だ。
他の人たちを見ると、フィリアさんと姫様は変形して飛行形態で飛行練習をしているようだ。リュー君は体操とも演武ともつかないような動きをしているが、あれは体の動かし方をひとつひとつ試しているのだろう。ああいう事からやった方がいいですよ、殿下。
「それでは、あと5分で次の方と交代して…」
言いかけたときに、至近距離で以前に感じたのと同じような空間魔法の魔力を探知する。おいおい、昨日戦闘したばかりだろうに!?
「何だ!?」
「これって!?」
驚愕する殿下とリュー君。
「総員、第一種戦闘態勢! 防壁展開、ペガサス組はそのまま工場の方へ待避!」
とりあえず、全員に戦闘態勢を命令する。もっとも、集団戦闘の訓練なんかまったくやってない状態で戦闘態勢と言ったって何もできないが、少なくともこれから戦闘の可能性が高いことだけは分かるはず。とにかく防壁系の魔法を張らせて、飛べるペガサス組はそのまま待避させよう。
「「「「了解。魔力防壁、物理防壁」」」」
AG4機が復唱して防御魔法を唱え、ペガサス組は工場へ進路を変える。
「遠話、母さん、敵襲だ、候補者待避と、カイとリーベに緊急発進を!」
「了…」
母さんの返事を待たずに雑音が入る。魔力波妨害されたか。
視認できる距離にテレポートアウトした魔道戦艦が見える。赤色の艦体!?
「リヒトかっ!」
思わず叫んでしまった。こんな時に…いや、こんな時を狙って来るヤツだよ、あいつは。
「リヒトだと!?」
「リヒト、ホーフェン…紅の、男爵…」
殿下も、リュー君も僕の言葉に動揺を隠せない。当然だろう、帝国の大エースだ。
「瞬間移動が使える人は?」
観戦席の4人に問うと、全員が手を上げた。
「元の格納庫に瞬間移動して報告を!」
「「「「了解!」」」」
格上の人もいるが、この場の指揮権は僕にあるので命令する。即座に4人とも瞬間移動してくれた。
「殿下とリュー君は?」
「余は使えん!」
「ボクは使えます」
「なら、殿下はリュー君につかまってください、それで格納庫に瞬間移動を、っ!?」
空間魔法反応! とっさに飛び退ると、目の前を槍斧の斬撃が通り過ぎる。放ったのは緑色の量産型一眼巨兵。転移してきて即座に斬りつけやがった!
「逃すかっ!」
この声は!?
「フィーア少尉か!」
「!? ノゾミだと!」
あっちも気付いたか。うわあ、面倒なヤツだ。ドラゴンなら、いやドラグーンでも機体性能差があるから押し切れる相手なんだが、同じ一眼巨兵だと簡単に一蹴できるほど弱い相手じゃない。勝てるが、手間取る。そういう相手だ。しかも、こっちは無手であっちには武器がある。
「同じ一眼巨兵ならっ!!」
「魔力刃っ!」
気合いたっぷりに斬りかかってくるフィーア少尉。手先から魔力の刃を出して、槍斧の斬撃を受け止める。クソ、力比べでもドラゴンに比べてパワーが低い。魔力刃は維持に必要な魔力も低いが、それでも普段の1/10の畜魔量だと魔力消費量が気になる。
「フィーア、入れ込みすぎですよ。今日は威力偵察です。もっとも、おにいさまが珍しく一眼巨兵に乗っているのは、チャンスではあるでしょうけど」
「ヒカリっ!」
クスクス笑いと共に、我が妹が登場だ。機体は量産型一眼巨兵。専用機は昨日僕が壊したから、まだ修理が終わっていないのだろう。ただし、得物は専用機の時に持っていた杖だ。
「それにしても、鹵獲した一眼巨兵を使っているのですか。連邦に使われるとは、その姿は見るに忍びませんね」
どっかで聞いたようなセリフだが、誰の言葉だったっけ? …などと考えてる場合じゃない。ヒカリも量産型一眼巨兵だから条件は一緒とはいえ、こいつら2人が相手というのは厳しい。何とか殿下とリュー君を撤退させて、僕も引きたいところなのだが…
「お初お目にかかる、私はリヒト・ホーフェン男爵、帝国軍親衛隊大佐だ」
「初対面ではないぞ、余はジャヴァリー・ドラガオンである!」
「おや、ジャヴァリー殿下でしたか。お久しぶり、と言うべきですかな」
いつの間にか現れていた赤いAGが殿下と言葉をかわしていた。リヒトも元皇族だから、皇室外交とかで知り合ったのだろう。
「武器のない方に得物を振るうような無粋な真似はいたしませんよ。ひとつ、お相手いただけませんか?」
そう言いながら、槍斧を投げ捨てるリヒト。あちゃあ、安い挑発だけど、あの殿下には効果的だ。乗っちゃうよ。
「よかろう! 勝負だ!!」
あああ、あの脳筋め! っとお!?
「魔力弾」
「魔力防壁、物理防壁、玻璃障壁っ!」
斬り合い状態から思い切り後ろに飛んでヒカリの魔力弾をかわしながら、自分ではかける機会を失していた防御魔法を3連発で唱え、さらにかわした弾が急旋回して戻ってきたのを左手の玻璃障壁で受けて相殺し、さらに同時に追撃してきたフィーア少尉の斬撃を再び右手の魔力刃で受ける。クソっ、連携がいい。このままだとジリ貧だ。と、そこに参加してきた人がいる。
「先輩から離れろぉっ! 高圧水流っ!!」
「邪魔をっ!!」
今まで戦闘に参加していなかった、というかできなかったんであろうリュー君が、フィーア少尉を狙って水系の攻撃魔法を放つ。収束率が高くないので破壊力は低いが、名前の通り圧力が強いため相手を吹き飛ばしたり体勢を崩すのには向いている。何より、味方に誤射しても被害が少ない。乱戦状態を崩すのには適当な選択だろう。フィーア少尉もギリギリのところで回避するが、おかげで僕はフリーになる。
「魔力弾、疾風走破」
無理に避けたので体勢を崩したフィーア少尉に向けて魔力弾を放つと、その弾に追いすがるように風魔法の後押しを受けて突撃する。
「当たら、なにっ!?」
魔力弾を避けたフィーア少尉だったが、その行動は予測済み。避けて体勢を崩したところに右手の魔力刃で斬りかかるが、これも囮。とっさに受けた槍斧を横に押しのけ、左の拳をがら空きになった胸元に叩き込み、さらにそこで魔力を流して魔力撃にする。
バガァン!!
僕の一眼巨兵の左腕がフィーア少尉の一眼巨兵の胸をぶち抜いて、魔道エンジンを粉々に破壊する。生身なら利き手でない左腕ではここまでの破壊力は出せないが、AGの場合ならパワーは右も左も差はないのだ。
「が、はっ…だがっ!」
胸元をぶち抜かれた衝撃に呻くフィーア少尉だが、そのまま僕の左腕をつかんで固定しようとする。つかまったらヒカリの魔法の的だ。咄嗟に右足で相手の腹を蹴って、反動で左腕を引き抜く。
「切断光線」
「きゃあっ」
珍しく女の子らしい悲鳴をあげて倒れ込むフィーア少尉。一眼巨兵の腹とは、つまりコクピット前。そこを蹴られたので衝撃が大きかったのだろう。そして、一瞬前まで僕の腕があった空間をヒカリの放った切断光線が切り裂いていく。危なかった…なにっ!?
「うわぁっ!?」
ヒカリの切断光線がリュー君のドラグーンの左腕を斬り飛ばしていた。僕が避けてもリュー君に当たるように撃ったのか。
「この機体では無駄弾は撃ちたくないですもの。ねえ、おにいさま?」
うそぶくヒカリ。本当に抜け目のないヤツだが、今は相手をする余裕がない。
「リュー君、瞬間移動できるなら、今すぐ格納庫に!」
「了、解です…瞬間移動」
リュー君が転移したのを見てヒカリたちの方に向き直る。
「フィーアも引きなさい、無理は禁物です」
「了解しました…覚えていろ!」
あちら側ではフィーア少尉が転移して退却した。これで、ヒカリと同じ条件での対決かよ。だけど、こっちには目配りしなきゃいけない相手が他にもいるわけで…
「ぐわぁっ」
ああ、やっぱり殿下がボコられてた。こっちがヒカリたちとやりあってる間に、両腕はもがれて片足を折られて膝立ちしかできない状態にされてるよ。クソっ、立場的に僕は殿下をお守りしなきゃならないんだ。ここまで殿下をボコられた時点で結構な失態なんだよ。
「おのれっ、火炎散弾ぉっ!!」
殿下が折れた腕の先を起点に魔法を放つが、リヒトは防御もせずに受ける。ああ、やっぱりそうだ。魔力のコントロールができてない。AGの持つ膨大な魔力量を魔法に込められてない。一眼巨兵でも生身の人体の1000倍以上、ドラグーンなら3000倍以上もの魔力量だからコントロールが難しいのは当然なんだが、その魔力量のうちの結構な部分、普段の500倍以上の量を魔法に注ぎ込まない限りAGにダメージを与えることはできないんだ。
「火炎弾、瞬間移動」
「チィっ!」
ドゴオォォン!!
僕の放った火炎弾が赤いAGの左肩を砕く。瞬間移動の直前に唱えて発動しておきながら、発射せずに手元に待機しておいたものを、リヒトの眼前に転移した直後にぶっ放したのだ。普通なら胸元直撃のはずが、転移反応だけで即座に避けて左肩で済ませたんだから、リヒトのヤツはやっぱり規格外だ。
「決闘に割り込むのは無粋じゃないかね?」
「AGに不慣れな素人をいたぶるのは、紅の男爵の名に恥じるのではないですかね?」
互いに拳や蹴りをかわしながら、言葉もかわす。
「あたしが居ることもお忘れなく。雷撃! あら?」
「お前のことは誰より知ってるさ」
ヒカリがジャヴァリー殿下を狙って高速系の魔法を撃ってくることは予想していたので、雷撃を撃つ直前に殿下をかかえて後ろに飛び下がったのだ。その間に、ヒカリは損傷したリヒトをかばうように、彼の左前あたりに移動する。
さて、ジャヴァリー殿下を確保できたし、引き時だろう。実は、さっきの火炎弾で畜魔量の8割方を使ってしまったのだ。ジャヴァリー殿下の魔法に耐えている様子から、耐火防壁がかかっていると見て、かなりの魔力を注ぎ込んで撃ったのだ。耐火防壁があると践んだ上で、あえて火炎系の魔法を使ったのは、それでもAGの魔力量をうまく使えば突破できることを殿下に実地で見せたかったからなのだ。あとは殿下を連れて瞬間移動するのがギリギリの量しか残ってない。さっさと転移し…ゲッ!?
「氷武装! これ以上好き勝手にはさせません!! アイシクルバード・アターック!!」
「雷撃武装! 殿下、ご無事ですかっ!? サンダーバード・アタックっ!!」
工場の方に待避させたはずのペガサス2機が、姫様が氷系、フィリアさんが雷系の武器強化魔法をそれぞれ機体にかけて並んで突っ込んできた。どっちも亜音速級のスピードなので音速飛翔をかけているのだろう…ってか、クーのファイヤーバード・アタックを真似しての突撃攻撃とか、今日初めて乗ったばかりの人たちが何て無茶をしてるんだよ!!
第一次イモータル市防衛戦の映像は、当然のように報道番組とかで流されてるし、特集番組とかも組まれたから、あのファイヤーバード・アタックも当然写ってるんで、姫様たちも見たことあるんだろう。アレは派手だから国民の人気も高いし、パイロットのクーも写真だけなら美少女だから、実はアイドル的人気も結構高いんだよ。僕と一緒でイメージ詐欺だな。
「当たらんよ」
「残念ですね」
とはいえ、リヒトやヒカリに対しての攻撃は背後からの奇襲でも難しいのを、真っ正面から突撃したら当たるはずもなく、あっさりと避けられてしまう。しかも、それまで沈黙していた赤い魔道戦艦の近接防御火器が2機めがけて砲撃を開始する。2機が左右に散開して、かろうじて弾幕を避けるが…
「「拡散光線」」
息合ってるな、お前ら! とツッコみたくなるほどきれいにハモったリヒトとヒカリが、それぞれ1機ずつ拡散光線の魔法で狙い、機体、特に翼にダメージを与えて飛行体勢を崩させる。マズい、クーですら最初はアレでバランスを崩して墜落しかけたんだ。左右に散開して距離が離れている2機ともフォローするのは無理だ。
「瞬間移動、音速飛翔、牽引光線!」
姫様の機体の直上に転移して、牽引光線で捉えて安定させる。ヤマト皇国の騎士としては、やはり姫様の方が優先される。悪いけどフィリアさんには自力で何とかしてもらうしかない。
と、見てみると、フィリアさんの方には別の機体が僕と同じことをしていた。ロデムだ。リーベが来てくれたのか。そして…
「この前の借りは返したぜ!」
転移して現れたポセイドンが、トライデントでヒカリの一眼巨兵の頭を貫いていた。
「くっ、油断しましたわ」
「潮時だな、引こう」
バルバロッサが主砲を使ってポセイドンを狙って支援砲撃を始めたので、カイも回避に専念せざるを得なくなり、その隙にリヒトとヒカリは転移して消える。それと同時にバルバロッサは弾幕を張りながら回頭して、北西方向目がけて高速で飛行を開始する。こちらに追撃の余裕がないと見て転移せずに退却するつもりか、それとも…
「逃がしません!!」
まだ突っ込んで行こうとする姫様。こういう無茶な突撃を誘っているのかね。
「機体が損傷しています。無茶はおやめください」
「まだ大丈夫です! リヒトならルーの真意を知っているはず! わたしは聞かなくてはいけないのよ!! ここで逃がすわけには…」
ああ、恋する乙女は無敵というが、これは無謀モードだ。更に重ねて叱りつける。
「姫様、命令違反を重ねるおつもりですか!? そのような態度なら、いかに姫様といえども軍法会議にかけますよ!」
いやまあ、騎士叙勲前とはいえ僕自身が命令違反を重ねた前科があるんで、ウチのメンバーが聞いたら説得力ゼロなんだろうけど、姫様はそんなこと知らないからね。
「う…でも…」
「ホムラ様、兄は言いませんよ。わたしにも教えてくれなかったのですから」
「…そう」
機体を安定させたフィリアさんと一緒に飛んできたリーベがフォローしてくれたので、ようやく諦めたようだ。それとほぼ同時にバルバロッサも転移して消える。
姫様の機体を安定させるのに使った魔法で、僕の機体の畜魔量はほとんど空だ。距離的には至近だったものの高度を上げての瞬間移動と、消費の激しい音速飛翔を、ジャヴァリー殿下のAGを抱えたまま使ったのだから。
「殿下、大丈夫ですか?」
「…体はな。だが、無念だ。ここまで何もできぬとは…」
地上に降りながらジャヴァリー殿下に話しかけるが、やはりかなりショックだったようだ。これで、慢心と無謀が少しでも影を潜めて、真面目に訓練してくれれば、かなり優秀なAGパイロットになれると思うんだけどね。
「殿下は、まだAG戦闘に慣れていないだけですよ。AGの動かし方、それに魔力の使い方を覚えれば、すぐに私やリヒトのように戦えるようになります」
このくらいはフォローしておこう。明日からの訓練にも身が入るだろう。
殿下のドラグーンの腕を回収しようとして、片腕が無くなっていることに気付く。リヒトに持って行かれたか…今回は負けだな。
「帰投しよう。リーベは一応後方警戒。カイは殿下たちを連れて先に瞬間移動で帰ってくれ」
「了解」
「あいよ」
カイのポセイドンがジャヴァリー殿下のドラグーンを抱えると、魔像形態に変形した姫様とフィリアさんも近づいていく。
「ノゾミ殿、命令違反をして申し訳ございませんでした。途中でリーベ様たちと合流できたので、殿下が心配で戻ってきてしまいました」
フィリアさんが謝罪してくるが、その気持ちは分かる。
「分かりますよ。私もあなたの事は見捨てて姫様の救助を優先しました。十カ国連邦という統一国家の軍人としては褒められた行動でないことは確かですが、主君に剣を捧げた騎士としては、他の行動は取れないでしょう」
「そう言っていただけるとありがたいですわ」
「こんな風に、騎士道で戦える戦は、恐らく今回の戦争が最後なんでしょうね」
僕とフィリアさんがこんな事を話していると、殿下が口を挟んできた。
「だろうな。戦場が変わる。こんなAGみたいな兵器や魔道戦艦が支配する戦場は、きっと、もっと無粋で、無慈悲で、容赦のないものになるのだろう」
「でしょうね」
殿下にしては珍しい、と思ってしまうのは、ちょっと殿下を過小評価しすぎていたからかもしれない。脳筋っぽくても王族なのだから、戦争や戦争指導に対しての考察もあるのだろう。
僕たちの会話を聞いても無言の姫様は、たぶん別のことを考えているのだろう。彼女にとって最も愛しい人が、何を考えてその「無慈悲な戦場」を作ろうとしているのか、というようなことを。
カイや殿下たちが転移するのを見送ってから、ドラグーンの壊された腕を抱え上げ、歩いて工場に向かう。後方警戒していたリーベが、後ろからついてきていた。
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今回の戦闘は、やはり帝国側のポイントになってしまった。帝国の宣伝放送は、「連邦の新型機を武闘大会準優勝のドラガオン帝国公子が操っても紅の男爵には手も足も出なかった。新型機恐るるに足らず」と、ボコボコにされた殿下のドラグーンの写真と奪っていった腕を公開して派手に喧伝した。
連邦の方では「未完成で未調整の新型機のテスト訓練中を襲われたので実力ではない」と反論しながら、僕の一眼巨兵がリヒトの専用AGの肩を吹っ飛ばした写真を公開して「性能の劣る機体でも帝国のエースを圧倒できるのが我が国のエース」と国民の士気高揚につとめている。…ダシにされて身につまされる思いはあるが、殿下がボコられたこと自体が僕の失点なので、少しでも挽回するには恥ずかしい思いくらいは我慢しないといけないのだ。
結局、当初は1か月を予定していた訓練とテストは1週間の短期スケジュールに変更された。敵襲が頻繁に起こる最前線での訓練というのは、実戦経験を得られるという要素はあるにせよ、危険すぎると判断されたのだ。最低限のAGの力を引き出すための操作と、膨大な魔力量を制御する訓練のみを実施し、それ以降は各国で自習してもらうことになったわけだ。
おまけに、殿下のドラグーンは大破判定で修理に2日かかったため、最初の2日間は突貫工事で修理したリュー君のドラグーンしか使えなかった。もっとも、基礎練習の方は一眼巨兵も使ってやったけどね。
とにかく、訓練は終了し、ドラグーンとペガサスは、とりあえず10機ずつ完成して各国に1機ずつ配備された。また鹵獲した一眼巨兵も1機ずつ支給することで、各国におけるAG訓練が開始される。
なお、姫様は父さんの許可を得て最後まで訓練に参加し、AG正規パイロットの資格を得た。タケル殿下やリュー君と一緒に後方で他のパイロットの訓練指導に当たることになるのだろう。
ちなみに、タケル殿下の正体については、面識のあるジャヴァリー殿下やリーフさんにはバレバレだったようだが、最後まで騎士タケシ・ヤマダで押し通していた。ペガサス主体に訓練していただこうと思っていたのだが、ペガサスもドラグーンもまんべんなく乗って、どちらにも習熟してしまった。さすが皇族と言うべきなのか、戦闘能力も魔法制御能力もかなり高く、天才的と言ってもいいくらいだった。なお、姫様もそれに準ずる力を発揮しており、「リーベ並に戦える」という言葉は嘘ではなかったと言えるだろう。
意外だったのはリュー君で、最初はそれほど目立たなかったのだが、わずか1週間の訓練でめきめきと力をつけてきた。わずか13歳で平民出身ながら正騎士に叙勲されてAGパイロットに抜擢されたのは、この成長力の高さを見込まれたのだろう。確かに将来が楽しみな人材だ。「先輩」って慕ってくれるのも、何か嬉しいし。別れるのが少し残念だったが、同じ国の騎士だから、また会えるだろう。
ジャヴァリー殿下やフィリアさんも、わずかであっても実戦を経験したのが大きかったようで、特に優れた成績を残していた。特に殿下は大きな挫折を味わったからか、基礎訓練から真面目に取り組まれて、すぐにAGの使い方をものにしていた。もともと魔法制御能力はある人だから、膨大な魔力の制御もすぐに覚えたので、今ではリヒトやアインほどではないにせよ、かなり戦えるようになっている。彼らをはじめ、今回一緒に訓練したメンバーとも、またいずれ会えるだろう…厳しい戦場で、ということになるだろうが。
たった1週間だが、濃厚な時間を過ごしたので、解散して全員が去ってしまった後には何か虚脱感のようなものが残っている。少し寂しく感じながら、改造が終わったドラゴンの新装備のテストでもしてみようかと第1格納庫に向かう。ドラゴンの改造自体は2日ほどで終わっていたのだが、突貫訓練のため新装備のテストは後回しになっていたのだ。
第1格納庫に入ると、不思議な物があった。いや、それ自体は別に不思議な物ではない。この1週間ですっかり見慣れたドラグーンとペガサスだ。だが、何で第1格納庫にあるんだ? 工場で生産された機体なら第2格納庫に置かれたのちに配備地に送られるはずだ。その機体の前に立っているのは父さんと…ゲッ!?
「タケシ・ヤマダです」
「ホノカ・ヤマダです!」
「リューです!!」
ビシッと敬礼してくる3人組。何でこの人たちが…ってか、「ホノカ・ヤマダ」ってどういう事!? 反射的に答礼しながらも立ちすくんでいる僕に、父さんが声をかけてきた。
「おう、ノゾミ。紹介するまでもないだろうが、本日付をもってウチの私領軍に配属になったAGパイロットだ。結局、ウチが教導部隊を兼任することになったんで、お前の補佐についてもらうことになる。これからも指揮と指導を頼むぞ」
えええええっ!? 教導部隊兼任は、まあいい。他の国では、もう開戦初期のように帝国にしか魔道戦艦とAGが無かったときのような奇襲をしかけても帰還が難しいはずだが、ヤマト皇国は帝国と隣接しているから、国土の結構奥の方まで強襲される可能性がある。後方に訓練部隊を配置しても襲われる可能性があるので、反撃能力があり、実戦経験がある指導者がいて機材をそろえやすいウチでAGパイロット養成を続けるのは合理的な判断だろう。指導のしかたも、この1週間でだいぶ分かってきたし。
問題なのは、そのメンバーだ。リュー君は別にいい。彼がウチの部隊に参加してくれるのは素直に嬉しい。だけど…だけど、残りの2人は頭痛と胃痛の種にしかならないじゃないか!!
内心で絶叫しながらも、僕の口から漏れたのは…
「そ、うですか、今後ともよろしく」
多少つっかえながらも無難な挨拶だけで…
「それでは各自、本日の訓練を…」
と指示する父さんを無理矢理引っ張って格納庫に隅に行き、問い詰める。
「何で殿下と姫様が偽名を使って部隊に来るんだよ!?」
「ご本人がたのご希望なのだからしょうがない。しっかり守れよ。自ら前線に立つのも皇族の高貴なる者の義務だし、それを守るのも皇室の藩屏たる貴族の義務だ」
しれっとした顔で言う父さんに、僕は思わずつぶやいてしまった。
「だったら、偽名を使うのはおかしいだろう。これって何か違うんじゃないかい?」
次回予告
皇太子殿下と姫様が部隊に加わってしまい頭が痛いノゾミだったが、その分休暇の日はたっぷりエンジョイしてリフレッシュしようと、変装してイモータルの街に繰り出す。そこで偶然マーサと出会いデートっぽく昼食をとっているところに、ファンと自称する少女が声をかけてくる。緑のツインテールの少女に既視感を覚えるノゾミ。
「ボーカロイドのコスプレ?」
「何のことでしょうか? 自分、じゃなくて私はあなたの事がだ、だいす、き、な、ファ、ファン、ですよ」
あまりに大根な演技にいろいろと頭痛を覚えながらも、あえて罠にかかることにしたノゾミだったが、敵の狙いは意外なものだった。
次回、神鋼魔像ブレバティ第10話「奪われたリモコン」
「これって何か違うんじゃね!?」
エンディングテーマソング「転生者たち」
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来週も、また見てくださいね!




