地獄の仮説
タイムマシンに乗ってどこに行こうか。アメリカ?冥王星?それとも君の部屋?
時空を攻略できるのならば、地底の無惨を救いだせるのではないだろうか。
星の過剰防衛において人間なんてちっぽけなものであり、伽藍堂の心はまるで、蜘蛛の糸の如し。地獄の釜で煮詰められるだけの存在。デコードされた影。
僕が堕ちた先は多神教と一神教の戦場。そこには残響だけがうなる湿地であり、星影は見えない。空気は透き通っている。
「一種のヒステリーだよ」と牛頭馬頭は言う。「神なんて、いないのにね」
優しさの火葬。小宇宙の青嵐。カルマの愛情。心理的な空気清浄機。
この青い地球から停学される前に徹底的な嘘を吐くべきだ。
さもないと、君の精神はフランスの前衛映画のように分析されてしまう。
白き月の残光は寂しく天に葬られ、支配する退屈は神の玩具を噛み潰す。
原初の雲が垂れこめて、神話的な雨が降る。これが全ての始まりだ。
それに対する理論も命題もない。ゆえに夢のような帰結もない。僕の壊れていない純粋な心情描写こそ、まだ僕がイデアに所属している証拠だ。
無意識の開闢。抽象的な静物。柔らかい破壊性。流麗な音楽。
今、秩序のない地獄から花が咲く。真っ白で真っ黒な崩れた花弁。萼もびりびり破れて、悲劇的だ。
黙示録の枠組みは幻想的に発表され、それに基づきある批評家が喚いた。
「誰の祝福が雪崩れたのだ!機械化された聖教会はいつ畢るのか!」
彼の発言と同時に、冷水のカランから夥しいほどの血液が流れ込み、
第一層の花叢に住んでいる一匹の鶺鴒がひと声鳴いた。
実証されない破壊兵器の隅に転がっているゴーレムの詩編には、
犯意ある自慰のやり方と、人類エイズの符丁が醜く打点されている。
そして、むごたらしい科学技術の果てに冥府の道が続いていることに、
日本の若い哲学者とロシアの年老いた沖仲士を除いて誰も気づかない。
「一人でたくさん泣いてしまう」と君はスモッグに犯された空を仰ぎながら言った。
鶏の腹を裂いて、殺菌消毒して肉を喰う文化を厭おう。残虐行為の魂を浄化して、不文律を正す。それが君の弔いだ。
閻魔の射幸心。黒猫の妊娠。複雑な冗談。魔女のビタミン剤。
十代の君に千のキスを。これが前提条件だ。これから全ては始まるんだ。
幾つもの罪ともうどこにも届かない歌を引きずりながら君は堕ちていく。
思考の健全性を確保するために、ハーデスの咒いを唱えてみせよう!