第4話・第5話
【Dearest】第4章「Dearest-2」
不幸の始まりは、ある一本の電話からだった。
その日は、彼と映画を見に行く予定だった。
そう、いつものように待ち合わせて、いつものように・・・。
―AM10:00に駅に。―
彼からのメールを確認して家を出た。
いつも待ち合わせをする駅には、とても大きな時計台があった。
その下で彼を待つ。
現在AM9:45。そろそろ彼が駅から出てくる時刻。
『・・・。』
50分。55分。AM10:00・・・。
待ち合わせ時刻になっても、彼は来なかった。
心配になってくる。
連絡をとろうとケータイを開いた。
―着信アリ―の4文字が目に飛び込んできた。
もしかして!!小さな期待に胸を膨らませながら、履歴を見るためにボタンへと指を伸ばした。
―県立総合病院―
妹の病院からだった。一気に心拍数が早くなる。
どうしよう・・・。彼がまだきてないのに・・・。
あせる私に、時間は無邪気に押し寄せてくる。
とりあえず病院に行くとだけ打って、メールを送った。
返事は来なかった。
けれど、私は病院へと急いだ・・・。 第4章 終わり
【Dearest】第5章「Dearest-3」
203号室・・・。深呼吸をして息を整える。
私の妹は、生まれたときから心臓が弱く、数年前からは入院している。
その妹からの電話・・・。
恐る恐る扉を開けた。
『あ、お姉ちゃん!!』
扉の向こうには、元気すぎるほどの妹がいた。
『麻美!!心配したのよ!元気なのにどうして電話なんてしてきたの??』
『だって、お医者さんが呼んでくださいって・・・。』
『それなら、お母さんでも呼びなさいよ!もう、コッチが心臓止まるかと思った。』
麻美の声がだんだんと、泣き声に変わっていく。
『びっくりさせて、ごめんなさい・・・。でも、お姉ちゃん最近来てくれてなかったから・・・。』
『あっ、いやっ、そのぉ・・・。』
昔から妹の泣き顔には弱かった。
しゃくりあげる声と泣き声とが、妹からあふれ出す。
何をしろというのだろう・・・。
なすすべもなく、ただ目の前の光景を眺めていた。
ピピピ・・・ピピピ・・・
ふいにケータイがなった。
慌てて開いてみると、彼からのメールだった。
―今日は行けなくてごめんm(__)m
急に会議があって・・・。
それより、病院ってどこか悪いの?心配・・・。―
それよりっていう単語に、少し腹が立った。
けれど、事故とかじゃないことには、ホッとした。
急いでメールを返す。
―なんでもないよ。ただ、妹のお見舞いにきてるだけ。―
彼とのメールのやりとりが続く。
ふいに麻美が話しかけてきた。
『お姉ちゃん。彼氏さん紹介してよ。ずっと病院だからヒマなの・・・。ねぇ?』
私は妹に言われるがままに彼にメールを送った・・・―
「私どうしてあのときに断らなかったんだろう・・・。もし、断ってさえいればあんな事になんて、ならなかったかもしれないのに・・・。」
彼女の目から、とめどなく涙がこぼれ落ちる。
いてもたってもいられなくなった俺は、彼女の腕を強引に引っ張って彼女を引き寄せた。 第5章 終わり