第3話
【Dearest】第3章「Dearest」
「私が彼とであったのは・・・。」
―今から、ちょうど一年前―
蒸し暑い日差しの中、つないだ手に汗がにじんでいる。
私の隣には、今の彼氏の陸。
でも、今日でその関係を終わらせるつもり・・・。
陸には、私以外にも何人もの【彼女】がいる。
付き合ったときから知ってった・・・。
そんなこと気にしないつもりだった・・・。
でも、あえない日が多くなって私は貪欲になった・・・。
嫉妬した。【彼女達】に・・・。
『そろそろ、終わりにしない?』
つないでいた手を振り払って、私は言った。
『なんだよいきなり!!』
『私・・・、私以外にも彼女がいるんでしょ?もう、たくさんだよ!』
すると陸は、はき捨てるように言った。
『前々から、ウザイとは思ってたけどな・・・。お前がその気なら・・・じゃあな!!』
一度も振り返ることなく、陸は行ってしまった。
―捨てられたんだ・・・―
不思議と涙はでなかった。
心のどこかでもう吹っ切れていたのかもしれない。
それから私はあてもなく歩き続けた。
何をするわけでもなく、何を思うわけでもなく・・・。
ただ、ひらすら歩き続けた。
2時間ぐらい歩いただろうか・・・。
日がだいぶ傾いてきた。
ふと目をあげると、公園の前にたっていた。
吸い寄せられるように、私は入っていった。
誰もいないベンチに腰掛けてつぶやいた。
『はぁ・・・。いいヤツだったのに』
そう言ったとたん、涙が溢れ出してきた。
必死に止めようとしても、止まるわけが無い。
その時だった。
『大丈夫?』
優しい声がした。
顔を上げてみると、サラリーマン風の男性が目の前に立っていた。
彼はポケットからハンカチを取り出して私に差し出した。
『な、なんなの?私なんかにかまわないでよ!!』
振り上げた手がハンカチにあたり、椅子の上にひらりと落ちた。
『ナンパなら、他をあたってくれない??』
―わたしばっかり・・・―
イライラした。
『ナンパなんかじゃないって。』
彼は慌てて言った。
でも、私の耳には入ってこなかった。
混乱する私。
心の中に色々な思いが交差していく。
『よっぽどつらいことがあったんだね・・・。』
そういうと彼は、自分の両手で私を包み込んだ。
最初は、抵抗した。
けれど、彼から香ってくる甘く切ない香水の香りが私を落ち着かせる。
私は彼の腕の中で泣き続けた。
そのことがきっかけで、私たちは付き合うことになった。
でも、私には男を見る目がまったく無いようだ・・・。
幸せだったのは、ほんの少しの間だけ・・・。 第3章 終わり