第1話 旅立ちの時
はるか未来……。
人類は地球を飛び出し、宇宙空間で生活をするようになっていた。
宇宙での生活が当たり前となった時代では、人は十二歳で一人前となり、航宙船の操縦免許を取得し、広い宇宙へと飛び出していく。
今ここにも、十二歳となった少年少女たちが、宇宙に飛び出そうとしている。
「育成プログラムの修了記念に宇宙旅行ですか。アーツの考えることは分かりませんね」
「何言ってるんだよ。はるか昔の地球人は、節目に旅行に行ったものなんだぜ」
「いや……。だからといって、何もあたしたちがやる必要ってあるのかしらね」
「トラブルがあっても、ニックがいれば何とかなるだろう。機械いじりが好きなんだからよ」
「まぁ、みんなでいろいろやるのも楽しいからいいじゃない。私もいるんだから、暗い気分にはさせないわよ」
五人の少年少女たちは、航宙船の停泊所へと向かっている。
どうやら、育成課程を修了した記念に、免許取りたての状態で宇宙旅行をするつもりらしい。
停泊所にやってきた五人は、アーツが手に入れたという航宙船のところまでやって来る。
そこで見たのは、五人が乗り込んでしばらく生活できるだけの設備を備えたそこそこ立派な航宙船だった。
「よくこんなのが買えたわね、アーツ」
外側に軽くはねた濃いピンクの髪を持つ少女が、感心した様子で呟く。
「ちょっと親に奮発してもらったからな。なぁに、これくらいの航宙船の代金なら、すぐにでも稼いでやるさ」
アーツと呼ばれた、短くて濃い茶色の髪を持つ浅黒い肌の少年が、ピンク髪の少女の言葉に答えている。
「ちょっと見せてもらいますよ」
「ああ、構わないでニック。ただし、壊すんじゃねえぞ」
「バカにしないで下さい」
ニックと呼ばれた眼鏡をかけた少年が、航宙船をじろじろと見つめている。
「で、こいつを運転するのは誰なんだ?」
「アーツ、操縦できるの?」
腕っぷしの強いツンツン頭の少年と、長い三つ編みを持つ緑髪の少女が心配そうにアーツに確認している。
「免許ならちゃんと持ってるぜ。ただし、実際に運転するのはこれが初めてだ。まっ、どうにかなるさ」
「……」
頭の後ろに手を当てながら話すアーツの言葉に、みんなは黙り込んでしまった。
初めてと話すために、不安を感じてしまったからである。
「なんだよ。せっかくの旅行なんだ、楽しく行こうぜ」
「う、うん。まあ……ね」
不機嫌そうにしながらも無理やり盛り立てようとするアーツの姿に、ニックたちは表情を引きつらせながら頷いた。
結局、アーツに押し切られる形で航宙船に乗り込んでいく。
中の設備を確認すると、寝床はしっかりとしているし、食料もひと月分は備えられていた。
あとは護身用の武器も、閃光剣と閃光銃が人数分備えつけられている。
「必要なものはこれを買った時に付けてもらったからな。おかげ少し値は張っちまったが、多少の問題が起きても大丈夫だ。リペアキットもあるしな」
「事故る気満々かよ。不安しかねえな」
「うるせえ、レンクス」
不安がる筋肉質のレンクスに、アーツは怒鳴っている。
「だってよ、その通りだろうが。なあ、プラン、クロノ」
「え、ええ」
「アーツは思い立ったら一直線ですものね」
レンクスが少女二人に同意を求めると、二人からも同意の反応が返ってきた。
「かーっ! そんなに言うのなら、俺の操縦テクニックを見せてやるよ。もう扉は閉じたから後戻りはできねえぞ!」
「うわっ、本当だ。というか、アーツ、どこまで行くつもりなんですか」
ニックが改めて目的地を確認する。
「知らん。目的は試運転だしな」
「おい、俺たちを巻き込むな!」
「しょうがねえだろ。それに、お前たちも慣れておいた方がいいだろ」
「くそっ、もっともらしいことを言いやがって!」
文句を言ったところで、すでに航宙船の扉は閉められており、降りられる状況になかった。
レンクスたちは仕方なく、アーツの試運転に巻き込まれることになってしまった。
エンジンに点火して、無事に航宙船は宇宙空間へと飛び出していく。
これだけでアーツは得意げにしているが、他の四人は何事もないことを祈るばかりだった。
しばらく無事に宇宙空間を航行していて、ようやく安心し始めた時だった。
ビー、ビー、ビーッ!
突然、航宙船の警報が鳴り始めた。
「おい、一体何が起きるっていうんだ」
『ケイコク、ケイコク。ウチュウアラシ が チカづいています!』
「宇宙嵐?」
航宙船からの警報に、アーツがきょとんとした表情をしている。内容がよく分からないらしい。
「聞いたことがありますね。空気のない宇宙空間で風は起きないとされていますが、その代わりに電磁波が飛んでくることがあると。その強力な電磁波の塊を、宇宙嵐と呼ぶのだそうです」
「冷静に説明してる場合か。警告が出たってことは、この船が巻き込まれる危険性が高いってことだろうがよ!」
「レンクスのいう通りよ。アーツ、さっさと回避していよ」
「ど、どうやってだよ!」
なんということだろうか。アーツは宇宙嵐の回避方法を知らないらしい。
慌てふためいている五人をあざ笑うかのように、突如として激しい揺れが航宙船を襲った。
「うわーっ!」
ガタガタと激しく航宙船が揺れる。
あまりの振動の激しさに、航宙船は完全にコントロールを失ってしまっている。
(やばい。俺たち、まさかこのまま死ぬのか……? くそっ、こんなことなら、旅行に誘うんじゃなかったぜ……)
あまりに激しい揺れに、全員が船内の壁に激しく叩きつけられ気を失ってしまった。
宇宙嵐に巻き込まれて制御不能に入ってしまった五人を乗せた航宙船。
五人の運命はいかに……?!




